追記:ミリーの修行(その1)
翠風の杖を手に入れた後の修行シーンです。
新たな力を手に入れたミリーは、ナージャと修行の日々が続いた。
杖の力をいつでも引き出せるように、魔力制御の修行を行う。
この世界の魔法はゲームのようなMPが無い代わりに、精神力をすり減らす。
精霊から大きな魔力を引き出すためには、より精度の高い魔力操作を求められる。
例えるなら中空に張った一本のロープを渡るようなもので、大きな魔法を使うためには、より高くより細いロープを渡る精神力が必要になる。
修行は、新たな杖で発動できる最大の魔力を継続することから始まった。
「ではいくぞ」
ナージャが張った魔力結界で周囲へ魔力が溢れないように遮断する。
「はい!」
ミリーは返事と共に、翠風の杖を構え魔力を引き出す。
この場合は呪文は不要で、力を放出するイメージで念じる。
呪文は魔力の指向性を指示するもので、単純な魔力放出は生活魔法と同じ要領で発動する。
数分も経たずにミリーの額には玉の汗が流れ出す。
「集中せい!」
ナージャの叱咤が飛ぶ。
「はい!」
そうして、気を失う寸前まで魔力を放出し続ける。
何度も繰り返すうちに、継続できる時間が延長する。
数日後
数刻まで放出が出来るようになると次の修行に移る。
「まあ、この辺で良いじゃろ。引き続き延長できるように続けなさい」
「は。。。は、い。。。」
返事をすることもやっとの状態でミリーが倒れこむ。
魔法使いは戦闘の要で、いざというときの防衛の時に、気絶していてはパーティが全滅しかねない。
気絶ギリギリまで追い込むこの修行は、単純にして過酷で最も重要と言える。
次に簡単な魔法を使い、これまでとの感覚の違いを実感する。
単純な初級魔法でも安定感が違うことを感じる。
「では、つむじ風を同時発動」
ナージャの指示でミリーが魔法を発動する。
複数のつむじ風が同時に発生した。20までは数えたがそれ以上は数えるのをやめた。
これまでは数個が限界だった事からも杖の力は相当なものだと言える。
なるほど、これが魔力の出力が上がるということかと、ミリーは嬉しくなった。
「そろそろ、魔法構築も覚えたほうがよさそうじゃの」
「魔法構築ですか?」
初めて聞く言葉に問い返すミリー。
「要するに専修魔法を編み出すことじゃよ」
「わたしが、新しい魔法を?」
「難しく考えんでもいい。魔術は精霊に、指向性のある言葉で、発動結果を指示するものじゃと教えたろ」
「はい」
「呪文はそのための命令で、力ある言葉に定着させることで魔法が発現する。つまり何をどうしてほしいかを正確に伝えさえすれば、新しい魔法として発現できるということじゃ」
ナージャの使うゴーレム兵も専修魔法ということだ。
ミリーは純粋な好奇心を露わにして、
「魔法って、おもしろいですね!」
と言った。
「師匠、質問をしてもよろしいですか?」
ミリーが思ったことをいう。
「なんじゃ?」
「この杖は、風属性のせいか風魔法は使いやすいのですが、対の魔法を使う時に抵抗感のようなものがあります。逆性魔法の場合にうまく使うコツはあるんでしょうか?」
ナージャは「ほう、よう気付いたの」と弟子の感性に感心する。
「知っての通り、魔法には対となる性質がある。
水は火に強く、火は風に強い、風は土に強く、土は水に強い。
その杖は、風の精霊アネモネの宝珠を抱いておるでな、火の魔法は逆性となって扱いずらいと感じるかもしれん」
「じゃあ、どうすれば。。。?」
「答えは簡単じゃよ。魔力のみを引き出す増幅器とすればよい」
「?」
「どれ、やってみせよう」
ナージャは自分の杖を取り出して、念じる。
手で虚空に古代文字を描き魔法を発動させた。
炎柱の爆発
地面に魔法陣が現れ、炎の柱が立ち、やがて消えていった。
火の上級魔法が発動された。
純粋な魔力だけを杖により引き出し、それによって記述魔法で指向性を持たせた魔法を発動させる。
「これをうまく使うと、複数の上級魔法を同時に発動させることも出来るようになる。まだ早いと思っておったが覚えてみるか?」
「はい、ぜひお願いします!」
ミリーはさらなる魔術の高みへと進む事に興奮していた。




