開門
アインと一行は閑静な墓地に居た。
少年は二つの墓石を前に静かに祈りをささげている。
あの襲撃の時、祖父と祖母が野盗の犠牲になった。
祭りには出ずに自宅にいた二人は、金品目的に侵入した野盗に命を奪われたらしい。
「僕が会いに来なければ、二人は犠牲にならずに済んだのかな。。。」
祖父と祖母に会えば優しい日常に戻れる。
そんな甘い思いを抱いていた。
現実は優しくなんてなく、心が切り裂かれるような言葉の刃を浴びせられた。
決して良い関係性ではないはずなのに、なぜか憎むことができない。
こうして、祈ると彼らがもうこの世にいないことに涙が溢れる。
「僕が生きていていいのか、結局答えてもらえなかった。。。」
「アイン。。。」
ミリーがそっと抱きしめる。
「あの人たちにとっては、僕の存在が許せなかったんだね」
「。。。坊主、叔父さんからの事付けだ。。。遺言になっちまったが」
一緒に来た村長が祖父から聞いた言葉を伝える。
「愛してやれずに、すまなかった。。。と」
その言葉を聞いたときにアインは、あきらめていた思いに気付き涙を流した。
「僕はあの人たちを愛してもいいんだ。。。」
涙は止めどもなく流れ、少年の心を暖かいもので満たしていった。
。。。
出発は深夜を選んだ。
今夜は満月。門出としてはちょうどいい。
迷惑をかけた村の人には気付かれないように、そっと発つことにした。
皆の蟠りも解けて謝罪もされたが、災厄を招いたのが自分たちであることに負い目を感じていた。
門の前での見送りには、村長家族とカーラがいた。
「カーラさん、今までありがとう」
「坊ちゃん、これからの旅路に幸運が訪れることを祈っています」
ナージャは村長と別れのあいさつを交わす。
「村長、世話になった。あの女は評議会に連れて行ってもらえば悪いことにはならんよ」
イリナの処遇は評議会預かりとなった。
彼女に、これからどのような未来が待っているのか誰も知らない。
「アイン」
村長の息子とアインが別れの挨拶を交わす。
照れくさそうに拳を合わせ。
「またな」「うん」
子供同士の友情を感じさせた。
カイルがちゃかすように、「いつの間に仲良くなったんだ?」と聞くが、アインは「内緒だよ」と笑う。
「カーラさん!」
ミリーがカーラに別れの挨拶と治癒魔術の伝授のお礼を言う。
「。。。礼はいらない。その代り、坊ちゃんを守ってやってくれ。これを持っていきなさい」
皮袋に詰めた宝珠をミリーに渡す。
「はい。。。必ず」
その真剣な眼差しに、カーラはこの娘ならと手を差し出し握手を交わした。
「よう、若いの、これを持っていきな」
村長が、鞘に納まった剣をカイルに渡す。
鞘から出すと、見事な造りのショートソードだ。
斬ることを重視した片刃の剣で、ナイフを大きくしたメッサーに似ている。
「いいのか?」
「以前、ドワーフの鍛冶屋から優勝祝いに貰った物だ。丸腰じゃきつかろう?もってけ」
カイルの剣は、アインがゴウライを撃退した時に使った勇気の剣の影響で粉々に砕けてしまった。
「助かる。ありがとうな」
カイルは受け取った剣を鞘から抜いて、重量とバランスを確かめるように振る。
手になじむいい剣だ。バランスもいい。
「うん、いい剣だ。気に入った」
ぴぃぃぃいいぃぃぃ
鳥の鳴き声が聞こえた。
カーラが時を告げる。
「時間のようだ」
その鳴き声を聞きつけたのか、村の人が集まってきた。
「みんな、どうして。。。」
全員跪いて祈りをささげる。
誰も声を発しない。
王とその仲間の旅の無事を祈る。
門が輝きだした。
初めは白く全体が、そして門扉が虹色に変化し荘厳に輝きだす。
千年の間開かなかった門が、今この時、王を迎えるために開いた。
村人達が初めて目にする開門にどよめく。
どこからか狼の遠吠えが聞こえてくる。
それは、これから旅立つ者を鼓舞するように雄々しく響いていた。
村人達の祈りと想いを受け、旅人は壮途につく。
彼らの旅は、次の舞台へと続く。
。。。
その夜。大陸の西の方で、光の柱が立つ現象を大勢の人が目撃した。
荒野を走る商隊が。
一人旅する宝石商が。
草地で懸命に闘う者が。
森と共に生きる者が。
その光に祈りを捧げたと言う。
今回で、一章終了になります。
ここまで彼らと一緒に旅をしてくれた皆様に感謝を!
一旦彼らの旅は小休止となります。
次はこれまで本編で語られなかったエピソードの予定です。
今後、主人公とアイン達は、魔族領へ舞台を移します。
次章で主人公とアインは魔王の魂に触れ、この世界の本当の危機とは何かを知ります。
彼らの旅がどう関わってくるのか、もう一人の運命の子には出番があるのか。
作者はノープランで描き続けることが出来るのか。
お楽しみに\(^o^)/




