喧嘩革命
数日後、アインは体力を回復し、立ち上がることが出来るまでになっていた。
その間、ミリーはカーラに治癒魔術の手ほどきを受け、カイルとリタはそれぞれ村の様子を探るなどして日々を過ごした。
ナージャは夜に村長の所に顔を出し情勢を聞いていた。
「どうも、あまり良い状況ではないようじゃな」
「村の荒くれ共が、わしらを探して報復すると言いふらしているようじゃ」
カイルが血の気の多い事を言い出す。
「あっちから来るっていうなら、受けて立ってやろうぜ」
「ばぁか、そしたら私ら本物の悪人じゃん」
リタがカイルをこずいて窘める。
「相手にせんのが一番じゃが、長居すれば見つかる。そうなれば店主に迷惑をかけることになるな。。。」
カーラはこの街での仕事がやりにくくなるだろう。
それを心配してナージャは申し訳なく思う。
「いえ、気にせずとも良いです。しばらく身を隠せば良いだけですし、この店は偽装ですから」
カーラの本来の仕事は、諜報と連絡役であり、魔族の火守としてここにいる。
「それと、本国から連絡がありました。受け入れる準備が整ったと」
「それは吉報じゃ」
出来れば早くこの地を去るのが良いという結論になった。
希望を求めてここまで旅をしてきたが、今思うとこの街には良い思い出は無かったな。
アインはそれを残念に思い、いずれ誤解が解けてまた訪れることが出来たらいいなと思った。
翌朝
バタンっ!
「おい、外でなんか始まったみたいだぞ!」
偵察に出ていたカイルが飛び込んできた。
皆は顔を隠し、村で買った古着を着て目立たないように、騒ぎの中心になっている広場に足を運んだ。
数人の男と村長が取っ組み合いの喧嘩を行っている最中だった。
加勢しようとカイルが飛び出そうとするが、村長がそれを大声で止める。
「誰も手を出すなよ!」
村長の怒号は続く。
「いいか!お前ら!村が襲われて被害が出たのは誰のせいだ!?俺たちが弱かったからじゃねーのか!?」
「っ?!!!」
「あんなちっさい子供に責任を擦りつけて、お前らそれで誇りある獣人の末裔と胸張って言えるのか!!!」
俯く者。怒りに震える者。他人の顔を伺うもの。
様々な反応が村人の間で起こる。
「挙句の果てに報復させろだと!お前らは恥も忘れたのか!この村の村長として絶対に許さねぇ。文句があるなら、俺を倒して見ろ!!!」
荒くれ者数人を相手にまったく引かない村長に、村人の雰囲気が変わっていった。
一人の村人が口論で参加する。
「大体、てめぇら上役共が、これまで秘密にしてたことが発端じゃねーか!魔王を利用してたのはお前らの方だろうが!」
「おうよ!その通りだ!それがどおした!」
村長は開き直って言う。
「なら、お前ならどうした!どうやったら、村をまとめて人類との仲を取り持った!言ってみろ!!!」
男は口ごもる。
「そ、それは。。。」
村長が男に向かって拳を放つ。
「答えられ無ぇならすっこんでろ!!!!」
村長の拳が男を吹っ飛ばす。
荒くれ共はすでにのされて這いつくばっている。
「まだ何か文句のあるやつがいるなら、俺と戦え!今日、この村は誇りを取り戻す!これは、その為の喧嘩だ!!!」
「何かむしゃくしゃしてきやがった!!!」
「あたしも、あんたら前から気に入らなかったんだ!!」
村長の一言で喧嘩上等の許可を得て、鬱屈した空気を吹き飛ばした。
獣族の血が騒ぎ出し、そこら中で村人同士の喧嘩が始まった。
村長にも数人が挑み言いたいことを言っている。
「前からてめぇの雑な運営には腹が立ってたんだ!」
「んだと、てめぇは細かすぎんだよ!」
「あたしの彼、返して!」「いまさら何言ってるのこのブ〇!」
もう無茶苦茶だこの村。
「これ、どうなってんの?」
リタとミリーがポカンとしている。
「おおぅ、なんか血が騒ぐな!」
カイルが今にも飛び出しそうにうずうずしている。
「。。。なんか皆楽しそう」
アインはこの光景を見て笑っている。
言いたいことを言い合い、気に入らなければ喧嘩する。
文明が進むと、こんな当たり前の事も出来なくなる。
村中で始まった大騒ぎは午後の鐘が鳴るまで続いた。
その後は、けが人も集めて祭りの残り物で大宴会となった。
そこにアイン達一行も混ざっていた。
飲み、食べて、村人全員がすっきりした顔をしている。
そこに、金髪の髪を気にする者は誰もいなくなっていた。




