休息と療養
。。。うぅ
目が覚めると、暗闇の中だった。
薄暗闇の中、周りの輪郭が見えてくる。
どこかの部屋のようだ。
力を使いすぎたせいか、戦いの後の記憶が無い。
坊主の気配がある。
ベッドで寝ている。
少し周りの様子を見るため、周囲を探索する。
どうやら、地下のようだ。
壁を抜けると、どこかで見た部屋がある。
ああ、あの店か。
アインはカーラの店に匿われたということか。
ん?人が来たようだ。
急いで坊主の元に戻る。
カーラが様子を見に来た。
「う、うぅ」
その気配にアインは目を覚ます。
「坊ちゃん、大丈夫ですか?」
カーラが心配そうに声をかける。
「み、水。。。」
アインが水を求め、カーラが近くの水差しから水の入ったコップを渡す。
「失礼します」
カーラが少年の背中をささえて、身を起こさせる。
口にコップを当てて、少しずつ喉を湿らせるように水を流す。
「んくぅ」
「ゆっくり、お飲みください」
ひとしきり水を飲み、落ち着いたアインはまた横になる。
「ここは。。。みんなは。。。どこ?」
弱弱しい声で少年が尋ねる。
「ご安心ください。ここは私の店です。皆さんは別室でお休み中ですよ」
カーラが優しい声で安心させる。
「。。。ん」
そのまま、吐息が流れ再び眠りにつく。
カーラは静かに部屋を出る。
皆は近くにいるのか。
俺は皆の無事を確かめるために、ふわふわと移動する。
別室に老婆を除く3人の姿があった。
皆疲れ切っていた。
「それにしてもひどいです。。。私たちのせいではないのに。。。」
ミリーが悔しそうに話す。
「まあ。。。ね」
「村人からしたら、俺たちも魔王の一味ってことになるんだろうさ」
リタとカイルが疲れた声で応える。
「だとしても、野盗に襲われたのは関係ないじゃないですか」
「人ってのは誰かに罪を負わせたいもんなんだよ。それがたまたま俺たちだと都合がよかったってだけだ」
「。。。」
その後の彼らの話を聞いて状況を知る。
どうやら、あの後、野盗共は鎮圧され村は無事のようだ。
だが、被害は甚大で何十名もの死傷者がでたらしい。
捕まえた野盗を尋問したが、誰に雇われたか、なぜここを襲ったか記憶があいまいらしい。
俺は、顔を半分隠し麻痺香を使っていた女を思い出す。
あの女が何か薬を使ったんじゃないか。
ゴウライとの戦闘後、カイルたちはナージャと協力して野盗を捕えた。
すぐに治療が必要な状況だったアインは、ミリーとリタに連れてこられた。
アインの状態はひどいものだった。
ミリーの回復魔法では手に負えず、このままでは回復が間に合わない所だった。
特に右腕の欠損が激しく、このままでは切断するしかなかった。
しかし、カーラが治癒魔術の専門家だったことが功を奏した。
カーラは店で取引して手に入れた、あらゆる精霊の宝珠を持ち出してきた。
大小さまざまな宝珠を並べ、術を施す。
「再生の光」
並べられた宝珠が光を宿し、光の糸が紡がれてゆく。
細い光の糸に包まれて、アインは光でできた繭に覆われた。
それから1日が経過し、光の繭が消えるとそこには怪我をする前の少年が横たわっていた。
そこから1日が経過しているが少年は目を覚ましていない。
カーラが3人の部屋に現れ、アインが一度目を覚ましたこと、再び意識を失った事を知らせた。
「よ、よかったぁぁぁぁあああああん!」
ミリーが、安心した拍子に泣き出した。
リタの胸を借りて泣いている。
「そうか、目を覚ましたか」
カイルも緊張が解けた顔をしている。
「もう大丈夫だと思うが、安静にしてやってほしい」
「静かにな」と言ってカーラは部屋を出ようとした。
「カーラさん」
ミリーが涙を拭きながら、カーラに懇願する。
「私に、治癒魔術を教えてください」
「。。。」
「これからまたこんな事があった時に、今の私じゃダメなんです。お願いします!」
「。。。坊ちゃんのためになるなら。。。」
カーラは複雑な表情をしていたが、少女の切実な思いを感じ了承した。
しばらくたって、ナージャが部屋に来た。
「まったく、この村の連中は恩知らずばかりじゃ。。。」
野盗の残党が暴れまわるのを、ゴーレム兵で鎮圧していたナージャ。
助けられた村人は感謝するものの、魔王の仲間と知るや、そそくさと離れていったそうだ。
村長の所にも、今すぐ奴らを捕らえて処刑しろという過激なものも現れ、収拾をつけるのに苦労している。
家族や仲間を失ったり、怪我を負わされたものも多く、数日たっても村人の怒りは収まっていない。
ナージャがいなければ被害はもっと酷いものになっていたと説明しても、この襲撃が魔王のせいだと主張するものも多くいて、実際に救われた者の小さな声はかき消された。
怒りに任せて、正しい判断をする目と心を失うと、人は途端に愚かになる。
「しばらくは、ここから出ないほうが良いな」
そう言って、カーラにこのまま逗留することを願うのだった。




