決着
徐々に土埃が晴れると少年と男が満身創痍で立っていた。
俺とゴウライはそれぞれ片腕を破壊された。
魔力による修復が間に合わない。
お互いに右手が動かない。
魔力の充填も脚に行うのがやっとだ。
ゴウライも気を練ることが出来ず、オーラが消えている。
立っているのもやっとの状態。
だが、俺は攻撃を止めず、空高く跳躍した。
目の端に仲間の姿を捕え、叫ぶ。
「カイル!!!」
左手を向けると、カイルはショートソードを俺に向かって投げる。
カイルがいつの間にか体の自由を取り戻し、剣を手にしていた事に気づいた俺は最後の賭けに出た。
「そんなナマクラは俺に通用せんと言ったぞ!」
ゴウライは右手をだらんと下げ、左腕のみで拳打の構えを取る。
斬撃に対する備えを無視し、あえて斬られるタイミングで打ち込むつもりだ。
斬撃無効
ナージャがこの男の特質を以前言い当てていた。
特殊な体質と修行により、精霊強化が極端に偏った体になったのだろうと。
他の攻撃は自らのフィジカルで防ぎ、斬撃に関しては無敵の体となる。
この男の体の弱点は魔法による障壁の突破が可能な点だ。
しかし、並の魔法剣では歯が立たない。
伝説級の業物で、何とか傷がつく程度ではないかと老魔術師は言っていた。
俺は、カイルが投げた剣を空中で左手に受け取り、壊れた右手を添えて切っ先を天に向ける。
「坊主!! 起きろぉぉぉ!!!!」
その声に、アインが反応した。
アインが目覚める瞬間、俺は体のすべてをカイルの剣に遷す。
「纏い」は剥がれ、髪は光を失う。
代わりにショートソードが白い光で輝きだし、白き炎を纏う。
少年は体中に広がる激痛に耐え、一気に振り下ろした。
「「うぉぉぉぉおおおおおお!!!」」
俺と坊主の咆哮が重なる。
すべての防御と加護を失い、一度の攻撃にすべてを賭ける。
勇気の剣
ゴウライは斬撃に対する絶対の自信を持っていた。
しかし、思考とは別に戦士の勘が体を半身ずらす。
アインの振り下ろした剣は、ゴウライの体を撫でるように切り裂いた。
その瞬間、巨漢の体に一筋の傷が浮かび血が吹き出す。
「んがぁぁぁぁ!!!」
斬撃を受けるという初めての経験に男は悶絶する。
だが、すぐに、痛みによる衝撃から立ち直り落ち着きを取り戻す。
傷は筋肉まで到達しており、血が止まらない。
このまま戦闘を続行することが出来ないことは、誰の目から見ても明らかだった。
しかし、ゴウライは引くことをしない。
戦士の意地がこの場を離れることを拒絶した。
「潮時だな」
いつのまにか、ジンライがそばにいる。
「引くぞ、兄貴」
「。。。っ!ま、だだ!」
どん!
「がっ!」
聞き分けのない兄の傷を殴打して気絶させる。
「引くぞ!」
巨漢を抱え、風のように去っていく。
黒梟はまだ暴れている野盗を残し、撤退していた。
どさ
少年の体が崩れ落ち、そのまま気を失う。
「アイン!」
遠くで仲間の呼ぶ声がしたが、それを遠くに聞きつつ意識が闇に落ちていった。




