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転生したら、守護霊でした  作者: じ・お。
一章 少年との出会い

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イグナ

火精霊(イグナ)が目の前にいる。


こんな状況を誰が想像しただろうか。

観衆はあり得ないものを見て静まり返っている。


「おい、あれ本当に大丈夫なのか?」


一人の観客が口にした言葉はここにいる全員が思っていたことだ。


すでに人同士の戦いではなくなっている。

しかし、この場からいなくなるものは一人としていない。


異常な状況による異常な戦い。

理性では逃げようとしているが、この興味による興奮に抗えない。

人とは理性的でいてどこか可笑しな生物だと分かる。


イグナは弱き人を空中から見下す。


2人に向かって手を横なぎに振ると、火の魔力弾(ファイヤー・ブリッツ)がその軌跡に大量に現れ発射された。

人間が一回の詠唱で一つの弾を出すことがやっとのこの魔法を、いとも容易くばら撒いてくる。

風の盾で逸らしてはいるものの、すべてを防ぎきることは出来ず鎧やローブに被弾する。

魔法使いのローブは魔法に関しては絶大な防御力があるが、普通の皮鎧しか着ていないリタは火の魔力弾(ファイヤー・ブリッツ)の熱でダメージを受ける。


ミリーが風の結界を張る。

風の結界(ウィンドシェル)

これでしばらくは持つはずだ。


「あいつ、ルール分かってんのかね」

すでに思考することすら相手は出来ないようだ。


癒しの翆風ヒールホーリィウィンドゥ

ミリーがリタに継続回復の魔法をかける。


「ありがとう。ミリー」

火傷の痛みが引いていく。


「あの体は、火蜥蜴と一緒で実体化しているのは半分です。ダメージはその分入りにくいですが、本気でやっても命に別状無いはずです」


「つまり殺す気でやっても大丈夫ってことだ」

「向こうもそのつもりですし、こちらも手加減してる余裕はありませんよ」


すぐに打合せして有効な戦法を話し合う。


イグナは火の魔力弾(ファイヤー・ブリッツ)を畳みかけていたが、効果が無いとみると次の魔法の使用準備を始めた。


「あれはまずいです!すぐ離れて!」

ミリーが必死になって結界を解除する。


二人がその場から飛びのく一瞬前に地面に魔法陣が現れ、炎の柱が出現した。


炎柱の爆発プロミネンス・バースト


風の結界ごと焼き尽くそうと、業火の柱が地面から伸びる。


間一髪で危機から免れた二人は距離を取るべく、二手に分かれた。

強化魔法バフが効いているため、高速移動で的を絞らせない。

走りながら、ミリーが魔法を詠唱し力ある言葉を発する。


疾風加速陣ゲイル・アクセラレータ


最近完成したミリーのオリジナルスペル。

つむじ風が二つ並んでその場にとどまる。

ミリーは同じ魔法を繰り返し、風の渦を戦場にいくつも配置した。

「準備出来たよ! リタ姉ぇ!」


「おっけぇえーい!」


リタがニードルスパイク型のナイフを取り出す。

表面にゴルフボールのような凹みがある奇妙な形をしている。


振りかぶり全力で投げる。

野球のピッチャーが投げるような全身を使った投げ方で、二つの風の渦の間を通しイグナを狙う。


「キィィィィィン」


その渦の間を通るとき、金属を削るような音と、爆発的な加速が加わりイグナの体を貫いた。

リタとミリーが以前話していた戦闘術が実践された。


砂を含んだ逆回転する2つの渦の間を通ったナイフは、ピッチングマシンで打ち出された様に加速を加えられる。

そのための、特別な形状のナイフを試行錯誤の末作り上げた。


戦場に複数置かれた風の射出機は、投擲ナイフをスナイパーライフルのような威力に持ち上げる。


肉体の部分に思わぬダメージを食らい悶絶するイグナ。

痛みを知らぬはずの精霊が、肉体を持つことで初めて経験するその感覚に怒り狂う。


イグナは大魔法を使う準備を始めた。


リタは上空に魔法陣を見た。

この城全てを飲み込むほどの大きさの魔法陣を。

観客がそれに気付き、悲鳴を上げだした。


魔法陣がゆっくり完成に向かう。

リタが投げるナイフで貫かれる度、魔法陣の完成が遅れる。

「まずい。まずい。気を散らして完成を遅らせる!」


後一筆で魔法陣が完成する、その時。

ミリーの魔法が発動した。


旋風竜の咆哮(ウォルティキ・ブレス)!!!」


リタが時間稼ぎをしている間に、ミリーが上位魔法を完成させた。

力の発動に精神が吸い取られる感覚がして意識が遠くなる。


ミリーは自らの相棒に願う。

翠風の杖(ウィンダリア)、お願い!)


翠色の宝玉に光が宿る。

発動の瞬間、旋風竜の幻が現れ巨大な竜巻がイグナを襲う。

ミリーは右手に杖を持ち、左手を使い記述魔法で空中に力ある言葉を刻む。


砕氷の牙(クリスタル・ファング)


竜巻に加え、細かな砕けた氷が鋭利な牙となってイグナに襲い掛かる。


竜巻が白くなる。

美しい白い塔が現れる。

その中で行われているのは、砕氷による低温化と切り裂き。

美しさに反して、凍傷と裂傷を引き起こす風が荒れ狂う地獄だ。


風が上空に登り消えてゆくにつれ、囚われたものの姿が現れる。


そこにイグナの姿はなく、力を使い果たしズタズタになった女戦士が倒れていた。


「グ、グゥア」


イリナは小さな苦悶の声を上げて気を失った。

空に浮かんでいた魔法陣もいつの間にか消えていた。


リタは力尽きて倒れているミリーに駆け寄り抱きかかえる。

「本当にあんた、大した魔術師だよ」


妹分の活躍による奇跡的な勝利を誇りに思うのだった。




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