闘技大会
収穫祭が始まった。
闘技大会は祭りの最終日、3日後に開催される。
その間、一行は観光客として祭りを楽しんだ。
闘技大会に参加する者、見物する者が大陸中から集まるこの祭りは、村長の号令で始まった。
「今年も収穫は上々だ。大地の恵みに感謝しよう。闘技大会は今年も強者が集まってくれた。大いに盛り上がってくれ」
祭りの始まりを告げるとパレードが村中を練り歩き、今年の実りの喜びを分かち合う。
少年はここ最近ふさぎ込むことが多くなった。何もせずにボーっとしてる。
祭りの朝、ミリーがアインを連れ出した。
「アイン行こう!」
「。。。うん」
初めは乗り気ではない様子だったアインも、大きな祭りは初めてらしく、興奮してあちこちを見て回った。
アインにあまり考え事をさせないように、引っ張りまわしている。
他の3人は振舞いの料理に舌鼓を打ち、うまい酒と肴にご満悦のようだ。
そうして、皆が思い思いに祭りを楽しみ、闘技大会当日となった。
闘技大会はトーナメント形式で行われる。
第一試合は四組で行われ、飛び入りの途中参加も可能ということだ。
参加人数が少ないと言っていた村長の言う通り、今回は9人の参加でその内ペアチームが1組となっていた。
アインの場合、年齢や正体を隠しての参加になるため、名前を変えて草人の戦士ということにした。
村長に事前に髪を隠すよう言われ、リタの兜を借りて顔も見えないようにマスクをした。
そうして、大会の開始を待つ一行を見る複数の目があった。
ようやく追いついた疾爪の面々がそこにいた。
いつもの、ローブは着ておらず、目立たないように普通の冒険者の恰好をしている。
「闘技大会たぁ、ずいぶん余裕があるじゃねーか」
ザジが面白くなさそうに言う。
正体を衆目に晒してまで手は出さない。この戦闘狂にもその程度の常識はあった。
「お手並み拝見というところだな。目立つから手を出すなよ」
ジンライがメンバー(特にザジ)に言う。
「全員で監視する必要は無いだろ。俺はその辺ぶらついてくるわ」
と、勝手にどこかに消えるザジ。
「ほんとに、相変わらず勝手なんだから」
サーニャがイラついて苦言をこぼす。
「実際、4人も必要ないしな。俺とサーニャ、アルとで交代に監視しよう。
アル、ここは任せていいか?」
「。。。」
アルフレッドは無言でうなずき了承する。
「じゃあ、あたしもその辺を見てきます」
「ああ、思念糸は繋げとけよ」
「分かってまーす」
そう言ってサーニャも人ごみに消えた。
「後は任せた」
ジンライも歩き出した。
残されたアルフレッドは、人垣から気配を殺して一行の監視を続けた。
。。。
闘技大会のエントリーが発表された。
第一試合
草人の戦士アフィン (アイン)vs 巨人族の戦士ドド
第二試合
土穴族の戦士 vs 森人の剣士
第三試合
カイル vs 東方の刀剣使い
第四試合
リタ&ミリー vs 女戦士イリナ
防衛王者だった村長が一昨年に引退してから、今年も獣族の参加は無かった。
村長は寂しさを覚えながらも、少年のことを思い浮かべる。
あの動き、反応速度、明らかに普通の子供じゃない。
いくら、獣族の血が流れていても血の継承前で、ましてや子供にあれだけの力が出せるものだろうか。
獣族では稀に先祖返りのような隔世遺伝の子が産まれる。
古き血が濃く継承された子はいずれも狂気に囚われ、成長するにつれて狂戦士のようになるという。
言葉が理解できず、周りのすべてに対して破壊衝動が止まらなくなり、いずれ死に至る。
対してアインのその精神は穏やかで暴走する気配がない。
しかし、その力は狂戦士と化した子供のそれであり、継承を終えた大人でも敵わないほどである。
最初あきらめさせるために力試しを行ったが、本気を出さなければ、こちらがやられていた。
「王の器か。。。」
誰ともなく呟く村長は、口に出したその言葉の意味を考えていた。
闘技場に参加者の姿が現れた。
村長からルールの説明が始まる。
「この大会のルールは簡単だ。一つは相手を殺さない事。もう一つは相手を戦闘不能にすること。これだけだ。」
非常にあっけなく説明が終わり、試合の合図を待つばかりとなった。
殺すな、倒せ。
俺は単純ゆえに奥深い、この試合の開始を興奮を抑えきれずに待っていた。




