懐かしい面影
村はずれの小さな家。
軒下のウッドデッキに、揺り椅子に腰かけた老人がいる。
顔立ちが父親のダンに似ている。
しわが目立つその顔には、強くて優しい父の面影があった。
懐かしい気持ちが溢れる。
アインは駆けだして、老人に挨拶する。
「こ、こんにちは」
「こんにちは、。。。はて、どこの子だったかのお?」
フードを取り顔を見せる。
それを見た老人の目が驚きに見開かれ、怒りで体が震える。
老人は、自分の孫には使わないような激しい言葉で問いかける。
「お、お前はっ! あの魔女の子供か!?」
「悪魔の子め!」
老人の大きな声を聞きつけ夫人が駆けつける。
「あなた! どうしたの。。。っ!?」
夫人もアインの金髪の髪に気づき、言葉が詰まる。
「あなたは。。。」
老婦人はアインを見ると悲しい目をして、庭の外で待つように誘った。
夫を落ち着かせてから、一行の前に現れると、アインに話しかけた。
「あなたは、ダンの。。。あの子の子ね」
「。。。はい」
「ごめんなさい、あなたを私たちの孫とは呼んであげることはできないの」
「。。。」
「ご婦人、訳をお聞かせ願えないか。わしらも詳しい事情を知らんのでな。いきなり話も聞かずに帰れといわれても。。。」
そう、ナージャが取り持とうとしたが、話の途中で夫人が激昂してさえぎった。
「あなたたち魔術師が私たち家族を壊したんでしょう! 他人事みたいな顔して何をいってるの!?」
「っ!?」
穏やかだった夫人の急な変わり様に、驚く一行。
激情のまま泣き出す夫人を、リタがそっと手を取り輪から遠ざける。
「わしらは、離れていた方がよさそうじゃな」
「ええ。。。」
カイルに村長の家にいると伝え、魔術師の2人は気まずそうに、歩き出した。
残った3人は夫人が落ち着くまでその場に留まった。
「。。。興奮してごめんなさい。ありがとう。。。落ち着いたわ」
リタに礼を言う夫人は元に戻ったようだ。
カイルが話を聞く。
「あぁ、それでな、どうも込み入った事情があるようなので、話ができるようになったら、またこの子に会ってくれるか? 俺たちは、ここまでこの子を保護してきたが、事情を聞いていいかも判らない。話せるようなら聞かせてほしいが、あんたの判断に任せるよ」
「。。。そうね。。。夫とも話してみるわ、明日の午後の鐘が鳴ったら来てもらえるかしら。。。あの魔法使い抜きに」
また話が進まなくなることを考え、アインと3人で来ることを約束した。
3人は一度村長の家に戻ることにした。
その途中で、カイルが首をかしげる。
「いったい、魔術師に何のうらみがあるっていうんだ? アインのお袋さんが魔術師だったからかね。それにしては普通じゃなかったな」
愛息子を奪った女が魔術師だったからと言って、魔術師すべてを恨むとは常軌を逸している。
何が彼女の恨みを買ったのか。
リタがアインを心配そうに見つめる。
「大丈夫?アイン」
「。。。うん、心配してくれてありがとう。リタ姉ぇ」
賢い子なだけにこんな時に無理に感情を押さえる。
俺は坊主が祖父母に会えることに、どれだけ嬉しそうにしていたかを知っている。
小さな心の傷に、寄り添ってやることも出来ない自分を歯痒く思った。




