系譜
魔族領に向かうことを決めた一行。
魔族との取り引きのあるというビドゥに行ったことがあるか聞く。
「実は魔族領へは行ったことが無いんですよ」
「じゃあ、どうやって取り引きするんだい?」
リタが疑問を口にする。
「それが、アインさんの親戚がいる村に関係がありまして。あたしが知っていると言ったのは、その村が魔族との取り引き場所になってるからなんです」
その村には魔族の商人がいて、そこで商品を卸しているという。
「もし魔族領へ行かれるなら、その人に顔を繋いでおくのがいいと思いますぜ」
カイルが、村の名前を聞いていないことを思い出す。
「そもそも、その村っていうのは何て名なんだ?」
ビドゥはここまでくれば、話しても同じだと感じたのか白状した。
「それは、西大陸の最奥にして、かつて魔族の撤退を最後まで支えたと言われた。。。」
白磁の門
それが、村の名前だった。
かつての魔族軍最後の砦が目的地だという。
カイルはその名を知っていたようだ。
「それなら知ってるぞ、かなり大きな村で毎年武術大会を開いてるところだ」
「あんたが、いつか出たいって言ってたあの?」
リタもその話だけは聞いていたようだ。
割と大きな大会らしく、集まってくるのは大陸でも屈指の強者だという。
「そうかぁ。今から行けばちょうど風の季節に間に合うな。祭りが見れるかもしれない」
「アインの親父さんがそこの村長の息子だとすると、アインが受け継ぐってことになるのか?」
老婆がそれは無いとつけ加える。
「獣族の長を決めるのは血筋ではなく実力だと聞く。今は別のものが長かもしれんよ」
カイルは以前からの考えを口にする。
「それはともかく、アインの子供離れした身体能力は獣族の血のせいなんだろうな」
「でも、血の継承をしなければ普通の人とあまり変わらないんじゃなかったっけ?」
そのはずだが、少年のこれまでの活躍は普通の子供では不可能なことばかりだ。
特殊な生活が血の継承と同じように、古代種の力を目覚めさせたのか。
詳しく調べるためには、獣族の血の継承について聞くことが必要があるだろう。
。。。
馬車の中では各々好きなことをして過ごしている。
カイルとナージャは御者台を交代しながら、普段は寝ていることが多い。
リタは今は投げナイフの補充のために、金属を削っている。
「ああ、そういえばミリー」
「?」
「あの蔓を切った魔法さ。これ混ぜたでしょ」
ミリーが削り出した時に出た金属粉を指さす。
「うん、いいアイディアでしょ。たくさん余ってたから何かに使えないかと前から考えてたんだ」
「婆さんのおかげで、材料費はタダだからね。助かってるよ」
投げナイフを買っていては相当の出費になるが、ナージャの魔法で金属棒をだせば材料費が浮くと以前から利用していた。
形を整えるために削り出す必要があり、その余った金属粉をミリーが集めていた。
「あれなら、同時にいくつも出せるから咄嗟に使うのに便利なんだ」
初歩の魔法は攻撃力は無いが、扱いやすく数も多く出せる。
この組み合わせは効率がよく、十分戦闘に役に立つ。
実は俺が考えて、坊主からそうっとミリーに伝えてもらった。
俺が言ったって知ったら、気味悪がって採用されなかっただろう。クスン。
「じゃあさ、こういうことも出来るんじゃない?」
「?」
リタがミリーに何かを耳元でささやいている。
女の子同士が顔を寄せ合って話してるのって、いいなぁ。
と、ほけぇと見ていたが、その内容は物騒なものだった。
「あたしが投げたナイフを、ミリーの風魔法で加速させて相手にぶち込めばすごい威力にならない?」
「その場合はナイフの形を工夫する必要があるかも。うまく風に乗せないと逆に速度を落としちゃう」
殺傷力を高める会話をしてらっしゃる。。。
。。。
あと少しで、少年の親族に会える。
その喜びは両親を失った少年にとって心の支えになっていた。
命がけで助けてくれる仲間に囲まれて、これ以上ないくらい幸せだった。
それでも、まだ5歳の子供にとって同じ血の通った家族は特別だ。
会えた時になんて言おうか。どういう風に呼ぼうか?
今からいろいろ考えて、くふふと笑う少年。
俺は久しぶりに、坊主の子供らしいしぐさが見れて心が温まった。




