禁域
「ひどいですよ。あたしのことをほったらかしにして」
ビドゥが、牢屋で如何にひどい扱いを受けたか身振り手振りで話しはじめる。
大げさに騒ぎ立て続けて苦言が止まらない。
一行は森人の里を後にして次の目的地に向かっていた。
「自業自得じゃろ、彼らの禁域を犯したんじゃから」
「そうよ、何が古くからの友人よ」
ナージャとリタが呆れて窘める。
カイル「それにしても、その禁域とやらが転送門だったとはな」
この世界に遺された古代遺物の一つが、ここ帰らずの森と呼ばれる場所にあるという。
転送門は世界中のありとあらゆる場所へ瞬時に移動できるといわれるが、ここにあるものは壊れていて移動できるのは一か所のみということだ。
ウェレランが別れ際に教えてくれたのは、この転送門で森と山を越えた先まで移動できるということだ、行程として3か月かかる距離を一気に縮めることが出来る。
しかし、その門は今問題を抱えているという。
門を守護する魔物が居て、通ることが出来ないらしい。
ここを通る場合にはお守りが必要で、それがあれば魔物はおとなしくなるという。
しかし、いつのころからかそのお守りが無くなってしまった。
普段から外との交流を絶っているため問題にはなっていないが、通るためには魔物を倒す必要がある。
アイン「門を守っている魔物を倒してもいいの?」
ウェレランがアインの疑問に答える。
「あの魔物は、討伐されても復活しますからその点はお気になさらず」
森人は森に生きるものを傷つけることを避ける。
必要が無いということもあり、お守りがなくなってから門の使用は禁止されている。
「でもさ、大事なお守りがどうしてなくなるのかしらね」
リタが口にすると、ビドゥの様子が変わった。
冷汗を流し、目を泳がせる。
「さ、さあ、どうしてでやんすかねえ」
「あんた、まさか」
リタが疑いの目を向ける。
「出来心だったんですよぉ。魔族領に行くには転送門が在るっていうんで、そいで、そこを通るにはお守りが必要だって聞いて」
言い訳を言い募るビドゥ。
「それで、盗んだと」
「。。。ええ、まあ」
「。。。あんた、もう一度牢に入ってこい」
「ひぃぃ」
ビドゥが慄く。
「はぁぁ、しょうがないのぉ。それで肝心なお守りはどこにやったんじゃ? 今ももってるのかえ?」
ビドゥは面目なさそうに下を向いて項垂れる。
「いや、それが、魔物に驚いて門に入る前に落としまして。」
「なら、最初の予定通り強行突破しかなさそうだな」
カイルの考えは単純だ。
そして、一行は禁域:帰らずの森入り口に到着した。
そこは、木々が鬱蒼と茂る森の中とは違い、地面がむき出しになった広場となっていた。
そこに、大きな木が鎮座している。
高さ10mに届くかという巨木、葉は深い緑色で枝は周りの木々とは違い上に伸びてはおらず、横に手を伸ばすように広がっている。
一行が馬車から降りて近づくと、枝が揺れ根が足元からうねる様に伸びてきた。
「ミリー頼む!」
「はい!」
カイルが、ミリーに防御魔法を求める。
これまでの闘いの経験から、指示は端的に済ませられるほど意思疎通が出来ている。
「風の壁!」
前面に展開した風の壁が襲い掛かる木の根を阻む。
木の根は攻撃をあきらめて元に戻る。
今度は枝がざわざわと蠢き、周囲に何かを振りまいた。
すると、周辺の土が盛り上がり、人型の木の魔物が現れる。
カイルが闘いの開始を告げる。
「ここからが本番のようだな」
異形の魔物との闘いが始まった。




