魂の在りか
ウェレランが語り終えると、一行は黙り込んだ。
カイル「それが本当なら、今俺たちが普通でいられるのは、魔王のおかげって事か。。。」
ウェレランが哀しい表情で訂正する。
「魔王だなんて呼ぶのはやめでくろ。あの方は、そったなおっかねー呼ばれかだされっ人じゃねーんだっぺよ」
「すまねぇ」
リタが沈んだ空気を変えようとして疑問を投げかける。
「でも、どうして、アインを見てその王様が帰ってきたって言ったの?」
「魔術師の予言があっだんだっぺよ。」
ウェレランが魔術師から言われた言葉を伝える。
「魔術師ダネフがよ、千年の後に、世界の魔法がほころびる時が来るっつったんだ。そんでよ、その頃にまた王様が現れるんだっぺよ。」
「それが俺の知ってる王様なのがは、わがんね。だげどもよ、もしそうならど思って、こんなげー時間過ごして来たんだっぺ。思ってみりゃよ、アイン様どあの方では別だど分がってたのによ、気持ちが抑えらんねがったんだっぺよ。」
彼の千年にも及ぶ寂寥の思いは、定命の身ではどれだけ想像してもきっと届かないだろう。
「ウェレラン殿」
ナージャがウェレランに突然奇妙なことを聞く。
「王の魂の欠片がどこにあるか教えてはくださらんか」
ウェレランはその意図が読めずに聞き返す。
「なして、そったなもんがあんのが知ってんだんけ?」
「学舎で古い文献を調べた時にたまたま見つけましての。大魔術師ダネフの覚書の紙片にあります。そこには、王の魂は今も同化した魔法と共にあり、その欠片はいずこかへと持ち去られたと」
「。。。ダネフ殿らしい」
追及を免れるために、誰かに持ち去られた事にしたのだろうとウェレランは考えた。
「その魂の欠片ど同じもんなのがは、わがんねんだげどよ。王様が消えでがら、しばらく後にダネフ殿が訪ねでぎだごどがあったんだっぺ。そのどぎに、おらに託されだもんが、王様が身にづげでいだ愛剣だっぺよ……。」
その剣は、王があちこち冒険をしていた時、あの浮遊城で手に入れた物らしい。
「今はどこに?」
「魔族の信頼でぎっ方に預げでよ、今は魔族領のどこがに保管されてっはずだっぺ……。」
「なあ、婆さんはそんな話を聞いてどうしようってんだ?」
話を聞いていたカイルが腑に落ちない顔で聞く。
「以前話したが、黄金の髪の子の伝承にはさまざまな解釈がされておる。
魔王の生まれ変わりというのもその一つじゃ。正直、わしはそのようなものとは考えておらなんだ。前に、噂で坊主の村が魔王復活に関わっていた話をしていたな。あの時も、評議会が先走ったんじゃろうと高をくくっておった。じゃがな。。。」
煙管を取り出し、煙草に火をつける。
紫煙を揺らめかせ老婆が言う。
「アインとかつての王とどのような関係があるかはわしにも分からん。
じゃが、アインは得体の知れん者に取り付かれておるのは皆も知っておろう。
昔たまたま見つけた紙片の事を思い出して、それが何なのか、かつての王ならば何か知っているかもしれんと。」
「ウェレラン殿も気付かれていたのではないか? 王が普通と違う行動をしていたことを」
王のかつての盟友に話を振る。
ウェレランは懐かしそうに王のこと思い出して、話してくれた。
「んだっぺなあ。あの方が不思議な人だったのは、間違ーねーんだっぺ。俺だぢの知らねー知識を持っててよ、全ぐ新しー考ーかだすっ人だったっぺ。ガキの時によ、王がどこがら来たんだが聞いでみだんだげど、聞いだごどもねー場所だったっぺ……。たしか……『ニッポン』っつってたど思うっぺ……」
ここでも、俺の故郷の名がでた。
やはり、俺は魔王と関係があるんだろうか。。。
「もし、王に今のアインのような別人格が宿っていたとしたら、故郷を「ニッポン」とは言わんじゃろう。わしらでも分かる土地名を言うはずじゃ。これが、どういうことかわかるか?」
リタが恐ろしいことを口にする。
「つまり、体を乗っ取られた?」
「っ!?」
ナージャは煙草の煙を吐きながら言う。
「そうとも限らん、交じり合って一つの人格になったのか、時々入れ替わっていたのかもしれん。いずれにしろ、元の人格がどうなったのかは知る必要がある」
「そうか、そのための手がかりが王の魂というわけか」
カイルは納得したようだ。
ウェレランも、王の遺品をどのような目的で求めるのか不安だったようだ。
お郷言葉をやめて恭しく言葉をかける。
「そういう話であれば、魔族領へ向かうのがよろしいでしょう。私が紹介状を書きましょう。魔族領は西の連峰の先にあります。道行は険しく厳しいものになりますので十分な準備をして向かわれるがよいかと」
「あの剣は主を失うと、剣の形を失い眠りにつくそうです。私が見た時には形を失いつつある状態でした」
最後に見た時の状況を教えてくれる。
「アイン様が、真に王の系譜に連なられる方であれば必ず応えてくれるはずです。」
ウェレランは深くお辞儀をして退出していった。




