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転生したら、守護霊でした  作者: じ・お。
一章 少年との出会い

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優しき魔王

「そんなことが出来るか!」

王は激怒して、床を殴った。


魔術師が提案した内容は驚くべきものだった。


それは、世界の壁ともいうべき障壁を作り、これ以上精霊の流入を抑えるというものだ。

壁の形成に飽和した精霊を利用することで、世界中の精霊の密度を減らすことが可能で魔物化現象を止められるという。

そのための大魔法、世界魔法:事象の地平(イベント・ホライズン)が「評議会」と呼ばれる魔術師組織の知識を総動員して開発中ということだ。

だが、それが発動したとしても、完全には魔法の使用による精霊の流入は避けられない。

そのために、人類を監督するための統一国家が必要とされた。


しかし、問題はそこではない。

王が激怒した理由は、世界魔法:事象の地平(イベント・ホライズン)を発動させる条件があまりにも悲惨なことだ。


世界の壁を作るためには、飽和している精霊では足りず、さらに多くの精霊を必要とし、そのためには巨大な魔法力をぶつけ合う必要がある。


王は声を怒りに震わせながら、つぶやいた。

「俺たちに戦争を行えって言うのか。。。」


「。。。」

魔術師は黙り込む、そして、王に声をかけた。

「王様、お人払いを」


「っ!」


今まで何でも皆で話し合ってきたが、この魔術師は王にだけ話をしたいと言う。


「皆、すまん、退室してくれ」


皆それぞれ思うところはあったが、王に従う。


「王様。。。」

ウェレランは王を心配そうに見つめ部屋を出た。


。。。


次に見た王様の顔は決意を固めて苦痛に耐えていた。

「そん時、魔術師が王様になぁて言ったんだがは、わがんね。ただ、王様のすんげぇ苦しそうな顔をいまでも思いだすんだぁ 」


。。。


それから、世界魔法の実現と、王国による人類統一のため、戦争の準備が始まる。

元々自警団として組織していた部隊を拡大し、自警組織と軍隊に分けた。


各部族の長へは王が直接出向き説得した。

当時の長たちが、なぜ王に従う選択をしたのか理由は伝わっていない。

それは決して語り継がれることなく、歴史の闇へと消えていった。


そこから、3年の時間をかけ軍隊としての体裁を整えた。

ほとんどが民兵の寄せ集めで、軍事力と呼ぶにはお粗末なものだが士気だけは高かった。

自分たちを裏切り、難民へと貶めた恨み。これからの未来を切り開くための布石。様々な思惑がまじりあい、戦争への熱気へと変わっていった。


そして、人類と魔族の戦いが始まった。

統一国家の樹立という大義のため、魔族軍は破竹の勢いで進行した。

しかし、人類側が劣勢とみるや、魔術師が介入してきた。


これは当初から予定された事で、世界魔法発動に必要な精霊を確保するために戦争を長期化させる目的があった。


こうして始まった、人魔戦争は五十年に及ぶ長きに渡って続けられた。

人々は戦いに疲れ、当初の理想や目的に対する熱意も失いつつあった。

多くの部族で世代交代が起こり、戦争継続よりも和平を求める声が多くなりつつある。


そして、ついに戦争の最終局面で魔術師側に、とある兵器が完成する。

エクス・ゼノマキナと呼ばれる魔道機械兵。


それは、世界魔法発動の最後の引き金となるピースだった。


王は側近の顔ぶれを眺めて寂しく思う。

戦争当初から戦った顔ぶれも少なくなった。

あるものは戦いに散り、あるものは世代が変わって逝った。

森人エルフであるウェレランの他は、数名を残すのみとなった。


王は巨大な機械兵を遠望し、その時が来たことに安堵した。

「やっと、あれが出てきたか。。。」


魔術師評議会との約定通りだとすると、世界魔法の準備が整ったことになる。

しかし、世界統一は間に合わなかった。


この計画は時間が限られていた。

そのため、世界統一が成されなくとも発動条件を満たす必要があった。


王は全軍に撤退命令を出し、後のことは予め示し合わせた通りの行動をとるように指示した。

ひとつだけ、真実を皆に伝えずに。


世界魔法の発動には2つのピースが必要だった。

その一つが王自身であることは、王の側近は誰も知らない。

そして、王は、一人で最後の責任を果たすために単騎で戦場を駆け抜けた。


機械兵の足元にたどり着いた王は、そこにいる懐かしい顔を思い出す。


「久しいな、魔術師」


魔術師ダネフは年老いた体で深々と礼をして王を迎えた。


「王よ、準備は整っております」


ダネフは迷いを口にする。

「王よ、本当に後悔はございませんか? あなたは、後世、その功績を語られることなく、魔王として恐れられる。あなたほど慈悲深き統治者はいないというのに」


王はそれには答えず、

「ダネフよ、大義であった」

老魔術師の辛苦に対し最後の言葉をかけた。


王は機械兵エクス・ゼノマキナから発せられた光に吸い寄せられるように同化する。


黒き鎧は光り輝き、黄金色に変わる。

王は両軍の撤退を、今は機械兵と同化したその目で確認した。

そして、両のかいなで空を抱え込むようにして、魔術師の呪文詠唱を待つ。


周囲に配置されていた魔術師の呪文が唱和され一つに重なる。

すると、様々な光の文字で構成された巨大な球型の魔法陣が上空に現れる。

それを、巨大な機械兵エクス・ゼノマキナが支える。

世界中から精霊の存在が失われ、無数の光の帯になり魔法陣に吸い込まれる。

光が集まり魔法陣が輝きだすと、王は最後の呪文を詠唱した。


事象の地平(イベント・ホライズン)


光り輝く球体と化した魔法陣と機械兵エクス・ゼノマキナが光の粒子になる。

その粒子が、幾何学的なブロックに姿を変え空を覆ってゆく。

すべての空を金色のブロックが覆い隠すと、色を失い青空が現れた。


その時、多くの人々がその奇蹟を目撃した。

そして、それが長く続いた戦争の終焉となった。


後世、魔術師ダネフはウェレランに王の最期を語った。

王は最後の時まで笑っていた。。。と。



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