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転生したら、守護霊でした  作者: じ・お。
一章 少年との出会い

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魔族の国

その村の噂は、瞬く間に大陸全土に広がった。


魔物化現象モンストルフォームで姿が変わり、虐げられた者たちが一斉にその地を目指した。

村の人口は急激に増え周辺の森だけでは食料が足りなくなる。

そこで、王は土穴族ドワーフの族長に相談した。

ドワーフの掘った廃鉱山が西の山奥にいくつもあり、そこを自由に使ってよいということだ。

廃鉱山と言っても、ドワーフはただの素穴を掘るだけではない。

そこには生活に必要なインフラがすべてそろった快適な住空間が在る。

鉱石が摂れなくなると不要な鉱山街は廃棄され放置されたままだという。

少し手を入れればすぐに使えるということで、修繕も請け負ってくれた。


王は皆を引き連れて西の鉱山跡に国を作った。

この世界で最初の王国の誕生である。

現在は魔族領と呼ばれ近寄るもののいないその地に、顧みるもののいない見捨てられた人々が集まった。


王は国を作るにあたり、周辺の部族にも協力を求めた。

初めは懐疑的だった里の者も王との話し合いで、国柄というものが見えてきてそれに賛同するようになった。


王国を立ち上げるまでに十数年の時が流れていた。

ウェレランも青年期を迎え立派な若者となった。

森人エルフの幼生期は人と同じ成長を遂げる。

大人になってからその長い人生が始まる。


ウェレランは里の代表として王城に来ていた。

王との目通りの日、緊張しながら謁見室に入る。


「王よ、森人の長の子ウェレランお召しにより参上仕さんじょうつかまつりました。今後、王の目となり耳となりお役に立つことをお約束します。」

口上を述べ目の前の王と目を合わせる。


あの頃と変わらぬ優しい眼差しを向けられ、そして、あの頃と何も変わらぬ口調で褒めてくれる。

「ウェン、久しいなあ。立派に口上を言えるようになったじゃねーか。」

近くまで寄ってきて頭を撫でられると、懐かしさで目が潤んでくる。

「ガキあづかいすんなっぺよぉ……」

恥ずかしさと嬉しさで文句を言うと、王は笑って解放した。


謁見室には他の部族の代表もいて、微笑ましく、そのやり取りを見ている。


王は他の代表にも声をかけ、参集へのねぎらいと礼をする。

そして、床に腰を掛けて全員車座になって座る。


この国のまつりごとはこうやって、皆で座って話し合って決める。

立場の上も下もなく。お互いに言いたいことをぶつけあいながら。


そこにいる代表達は王の為人ひととなりに惹かれて集まった者たちだ。

そのあけすけな、やり方は好感をもって受け入れられていた。


話し合いは、数日にもなることがあり、食事もその場で摂られた。

そして、そこでの最も重要な議題は魔物化に関するものだ。

最初の遭遇から十年以上の歳月が流れ、魔物化への流れは年々増加傾向にある。


王が苦々しげに言う、

普通の人間(ネイティ)の間では姿を変えた者を魔族と呼んでいるそうだ、俺は、その魔族に君臨する魔王だってよ」


自分たちの隣人を切り捨てるその言いように不快感を隠さず毒づく。

もっとも、それは彼らの余裕のなさを表す様で哀れにも思える。


「難民の様子はどうだ?」


最初に廃村で会った石の男がそれに答える。

「はい、今年も数は減ってませんね、微増といったところです。食料にはまだ余裕ありますが、耕作地を増やす必要がありそうです。」


「それで、原因については何か分かったのか?」

「王の力で回復するものの、数年で元のようになることから、何らかの力が関わっていることは間違いありません。仮に瘴気と呼びますが、この瘴気を一定期間浴びることで体が取り込んでしまうのではと仮定します。」


魔物化による体形変化は、魔法を使うことである程度の状態維持ができることが発見された。魔法を使うことのできない乳幼児は、今も王が癒して回っている。

王国の維持に必要なエネルギーは彼らの魔法によって支えられており、ある意味共生関係が成り立っていた。


「罹患者を見ると、魔法に素養のあるものが多いということです。魔法というか精霊と相性がいいといった方がよいでしょうか。」

「ただ、どんなに魔法の素養があっても古代種の皆様にはこの症状が起こらないのは興味深い点です。普通の人間(ネイティ)だけがこうなる理由が必ずあるはずです」


草人の代表が言葉をはさむ。

「それで、この件に協力を申し出たいという魔術師がいまして、王にお目通りを願いたいということで別室に控えさせています」


「魔術師?」

西側大陸にも魔法使いはいるが、魔術師を名乗る者は少ない。


「はい、魔術師ダネフと名乗っております」


王はすぐに指示を出し、

「分った通せ」


「お目通りをお許しいただきありがとうございます。王様」

魔術師と名乗る男は、フードを被った背の高い男だった。

目が細く見開かれておらず、表情の読めない知的な顔立ちをしていた。


「よい、それで貴様はどのような情報を持っているのか聞かせてくれ」

王は早速切り込んで話を進める。


その男が持ってきた情報は、これまで理由がわからなかった魔物化の原因を明らかにした。


魔物化が起こる理由、それは、魔法の過剰使用による精霊の飽和状態オーバーロードによるものだった。


この世界の魔法は、人の思いや願いが精霊をこの世界に引き入れる事によって発現する。

世界に呼び込まれた精霊は、いずれ元の場所に戻るが、しばらくは、この世界に滞在する。

今の乱れた世では人々が魔法に依存し、過剰に使用されている。

そのせいで、精霊が世界に溢れ、人に影響を与えているということだ。


なぜ普通の人間(ネイティ)にしか罹患者が出ないか、それは、古代種と呼ばれる人々は過去の精霊の形質を残しており、そのため精霊の影響を受けないということだ。

普通の人間(ネイティ)の特に精霊と繋がる力が強いものが、その影響による形質変化が強く出る。

それが魔物化=精霊化の正体だ。


どうやって、このことを知ったのか男に尋ねると、

「我々魔術師もこの現象に長年注目しておりました。しかし、個人での研究に行き詰まりましてね。そこで、魔術師同士の組織を作り知識を集約する事に成功したのです。現在、組織の名は「評議会」としていますが、この取り組みによって、人の形質変化の問題の根幹に手が届いたというわけです」


王は次に核心となる情報を求める。

「それで、我らに協力したいということだが、解決の目途は立ったのか?」


「残念ながら、完全な解決方法は現在も模索中です。しかし、一時的にこの流れを止める方法についてはある程度の目算が出来ております」


「一時的とは」


「少なくとも千年。そこから先は人々の治世によります。世が乱れればより早く崩壊するでしょう」


少し考えてから、王が話を促す。

「分かった。その方法とやらを聞かせてもらおう」


その方法は、その場にいる者を驚愕させるものだった。





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