思わぬ歓待
一行はその日、森人からの歓待を受ける。
ナージャの言葉を受けて大広間で盛大に開く宴会ではなく、仲間だけで食事を振舞われた。
食事はどれも趣向を凝らしており、木の実や果物がふんだんに使われていた。
動物の肉や魚などもあるが全体としては少数だった。
森人も肉は食べられるが、好んで食べるものは多くないそうだ。
森で育ったものは、皆森に還るのが習わしで、生命はすべからず循環するものという考えかららしい。
人が食物連鎖の頂点である事実は変わらないが、そこに居座ることはいずれ循環を壊すという思いを持っていた。
森からの恵みは等しくすべての命に分け与えられる、摂りすぎず、与えられた恵みのみをいただくのが当たり前になっている。
長命種であり、森から恩恵をあずかる身ならではの考え方に頷ける部分もあるが、世界はそこまで優しくないと俺は思う。
食事の後は風呂に案内された。
代謝の低い森人は普段は沐浴のみで十分なため、風呂に入る習慣がない。
しかし、一行のためにわざわざ浴場となる木の洞を準備し、露天風呂とした。
森を渡る風が心地よく、湯で温まった体のほてりを冷ます。
一行に用意された部屋はどれも広く、ベッドは5人くらい寝れそうで、キングサイズの倍以上の大きさがあった。
部屋には過度な装飾はなく、掃除も手が行き届いておりシンプルで木の性質を熟知したデザインは日本人の俺には郷愁を誘うものだった。
もっとも、前世の俺はこんな部屋に住んだことはなく、住んでいたのも、シングルのワンルームでしかないのだが。
広すぎる部屋に落ち着かないのか、アインは皆が集まってるラウンジに移動する。
各自の部屋は、ツリーハウスのようになっており、各階層とは階段でつながっている。
全員の部屋から1階層下がるとラウンジになっており、サッカーコートが書けそうな大きさの広大なウッドデッキが広がる。
壁のない吹き抜け構造だが、その場所自体が巨木の傘の中にあり雨風は入ってこない。
中央には常に水がこんこんと湧く水瓶があり、そこに湧く水は樹液が混じり甘く味がついていた。
中央付近に木製の大きなローテーブルとソファーが置いてあり、皆はそこに集まっていた。
リタと、ミリーが部屋着に着替えてはしゃいでいる。
「リタ姉ぇ、この服すごく軽い。何も着てないみたい」
「そうね。それに肌触りもいいわ」
シルクを思わせる光沢のある布を、ゆるく仕立てたドレスのような部屋着に満足げだ。
一方いつもの格好のカイルとアインを見て、リタが言う。
「あんた達も、着替えればよかったのに」
「あんなヒラヒラした服落ち着かねぇよ」
「僕のはちょっと派手かなあ」
男性陣には不評のようだ。
「それより、ばぁさん」
ナージャは布製の湯あみ着のような服に、ショールを肩に引っかけた姿でくつろいでいる。
カイルは甘露の入った杯を傾ける老婆に詰め寄る。
「昼間のあれはなんなんだ? アインの事どこまで知ってるんだ?」
俺もそれを知りたい。
「まあ、もう少し待て。来てから話そう。」
「来るって、誰が?」
ちょうどその時に、ウェレランが従者一人を引き連れてやってきた。
「アイン様、皆さん。お寛ぎいただいてますか?」
老婆が杯を挙げて、応える。
「ウェレラン殿、ゆっくりさせてもらっておるよ。」
「それはよかった」
カイルが、食い気味に急かそうとする。
「それで、さっきの話だが」
「まあ、焦るな。話なら生き証人から直接聞いた方が良かろう」
ウェレラン「?」
老婆が森人の長に話を振る。
「ウェレラン殿、悪いがこの子等に話してやってくれまいか、人魔戦争のことを」
一同「っ!」
「事情を知っているのはわしだけなんじゃ。ここにいる者には正しい歴史は伝わっておらん、このアインも含めての」
ウェレランは納得した顔で承諾した。
「。。。そうでしたか、わかりました」
老婆は加えて、
「そうそう、その話し方ももっと砕けてもええぞ、わしらもそうさせてもらうのでな」
「。。。んだば、そうすっかぁ」
砕けすぎだろ。。。




