保護者として
新技の会得についてナージャに報告すると。
「だめじゃ」
にべもなく断られた。
ナージャはじろりと睨み、
「ゴンザ殿」
「お、おう」
ゴンザは冷や汗をかきながら応じる。
「お主がついておきながら、なんじゃこれは」
「いや、御老、坊の話を聞いてやってくれ。この子は真剣に。。」
「子供のわがままを叱ってやらんでどうする!」
完全に保護者となり取り付く島もない。
アインは口を結び涙をこらえて、
「僕はこの技をもっと練習したい」
「だめじゃ」
皆のために頑張ろうと頑張ってるのに何がダメなのか、少年は老婆の言うことに納得できず、頬を膨らませる。
ミリーとリタもやってきて、状況を聞いた。
「ダメに決まってるでしょう!」
「カイル、あんた何やってんのさ!」
保護者が増えた。
大人たちが、わぁわぁと言い争いを始める。
「ぼくは!」
アインが大きな声で喧騒を止める。
「誰に何をいわれても練習するから!絶対にやめない!」
涙をたたえた瞳で皆をにらみつける。
いつもおとなしいアインの、こんな激しい物言いを初めて聞いた一同は一様に黙りこむ。
老婆は顔を赤くして怒鳴ろうとするのを我慢している。
そのうちに、落ち着きを取り戻して。
「どうしても、やるというのじゃな」
「はい」
少年の真剣な眼差しに怯むナージャ。
「あぁあ!しょうがないのぉ。カイル!ゴンザ!」
『はい!』
いつの間にか呼び捨てにされたことに気付かず、男二人が返事をする。
「これまで分かったことを、わしに聞かせよ。それと、アイン」
「はい」
「どうしても覚えたいんじゃな?」
「はい!」
「わかった、もう何も言わん。ただし! 一人で修行を続けるのは禁止じゃ。必ず、誰かに付いてもらえ」
「わかりました。せんせい!」
アインが思わず口にした言葉に、頬が緩むのを噛みしめて厳しい顔をするナージャ。
「無茶は絶対に許さん。わしの目が届かん場所では使う事を禁じる。よいな」
「はい!」
アインはまっすぐな目を向け返事をした。
。。。
ナージャ、ゴンザ、カイルの3人は、この技の問題点を洗い出すための会議を開く。
一番の問題は肉体の自壊だ。
カイルが当然の疑問を口にする。
「なんであんな状態になるのか。ゴンザは見たことあるって言ってたな」
ゴンザは記憶をたどりながら答える。
「ああ、あれは内部にたまった熱で血管が膨張した状態だ。見ただろう坊の足から出ていた蒸気を。冬とはいえ、あれだけの蒸気が見えるということは、内部は相当の熱が溜まってるってことだ」
そこに至るまでの経緯をナージャに話して聞かせる。
いつものように、髪が輝く前はあれほどの威力がないことや、最初と2回目では少年が受けたダメージが変わっている点など、目に見える範囲とアインから聞いた事を洗いざらい吐いた。
黙って聞いていたナージャが少年を呼ぶ。
「アインや」
離れていたアインが近づく
「はい」
どうしても聞いておく必要があると、前置きしてナージャが質問をする。
「いつも、髪が光るときに魔法のような現象が起こるが、お前さんが意識してやってることなのか?」
「ううん、僕じゃない」
「?」
「いつも、白い人が助けてくれてるんだ」
「白い人?それは誰じゃ?」
「ずっと小さなときには姿が見えていたと思う。今はその印象しか残っていないけど、僕が困った時に必ず現れて助けてくれる」
それは白い大きな背中を向ける男の姿。
「声は聞こえないけど、その人の思いや気持ちは感じられるんだ」
僕のもう一人のお父さんと少年は言う。
俺はそれを聞いた瞬間、だばぁーっと涙があふれた。
もちろん、本当に涙が出ることはない。
それでも、俺は号泣していた。
見てるだけだった。
支えてやりたかった。
抱きしめてあげたかった。
手を触れることも声をかけることも出来ない体。
それでも、思いだけは伝えたかった。
ちゃんと伝わっていた。
俺という存在を知ってくれていた。
ナージャは信頼しきった少年の顔を見て、
「そうか、何者かは知らぬが、坊主にとって悪いモノではないようじゃな」
と自分を納得させていた。
その夜。アイン一人が深い眠りの中、一行全員が集まっていた。
俺もこっそり話を聞く。
ナージャが口火を切る。
「皆、昼間の話は聞いたな」
一同は頷く。
「どうやら、坊主には何者かが取り付いているようじゃ」
ん?何か様子が。。。
「今のところ、害はない。むしろ助けになっているようだが。得体がしれん事に変わりはない」
全員が頷く。
ミリーが薄気味悪いと言わんばかりに、
「もしかすると今も聞かれてるかもしれませんね」
とつぶやく。
「あたしそういうの苦手なんだよ」
リタが青ざめた顔でいう。
「あーお前昔からそうだったな」
カイルがからかい口調で言い、リタに肘鉄を食らう。
「呪いの類か、怨霊か不明だが体の自由を奪うという類のものではないようじゃ」
ごめんなさい、寝てるときは体使っちゃってます。
「今も会話を聞いているなら好都合じゃ。もし坊主に不幸をもたらすなら、わしら全員で調伏してくれよう」
悪霊も逃げ出す凶悪な顔で言う老婆にビビりまくった。
ひぃぃぃ
俺って、不審者? 悪霊扱いなの?
えぇぇぇぇ(泣




