風の祠
素材集めも順調に進みます。
風の精霊との邂逅シーンです。
目的の素材を手に入れたふたりは、山を降りる。
もう一泊宿で宿泊し、次の朝出発した。
「素材集めはこれで終わり?」
リタが依頼内容の確認をする。
「はい、必要なものは揃いました」
「ただ、もう一か所寄るところがあるんです」
風の精霊核に、持ち主を認めさせるために、風の祠に行く必要があるという。
そこで、精霊の試練を受けることで持ち主と認められるらしい。
「試練って何をするんだい?危険なことじゃないだろうね」
リタが妹分を心配して尋ねる。
「危険ってわけじゃないと思いますけど、相性を確かめるみたいな、そんなことをお師匠様が言ってました」
元の所有者である旋風竜を倒したのがアインだったため(とどめを刺したのはカイルだが)、精霊核の今の持ち主はアインになっているということだ。
主を変更するためには精霊核と対話し認めてもらう必要がある。
そうやって繋がることで、魔術の触媒として使えるようになるということだ。
「ただ、お師匠様の話だと自分を保っていないと精霊に同化させられるとか」
「それって、やっぱり危ないことなんじゃ。。。」
ミリーの不穏な話にリタが引く。
「大丈夫ですよぉ。お師匠様が心配ないって言ってましたから」
ミリーの師匠への信頼は揺るがない。
草原には4精霊の内、風の精霊を祀った祠がある。
1日馬車を走らせると、祠が見えてきた。
精霊の祠は、世界中のあちこちにあり、だれがいつ作ったのかは伝わっていない。
大昔の戦争の時からあり、戦争時に作られた拠点だったとか、精霊を祀る神殿だったなど様々な説がある。
分かっているのは、そこが、精霊の力が集まる力の収束点だということだけだ。
それは、白い大きな石灰岩の岩柱が3本で支えあい、不揃いな建造物のように見えた。
中心に台座があり、そこだけ人の手が入ったように見事な彫刻が掘りこまれている。
馬車を降りたミリーは台座の場所まで下りていく。
リタも後ろから付いてくるが、祠の入り口で待つように言われた。
試練は当事者だけで行うということだ。
台座の中心にある窪みに、それまで大事に持っていた精霊核を置く。
すると精霊核から緑色の光が溢れだした。
辺りを閃光で満たすとその場からミリーの姿は消えていた。
驚いたリタはミリーの名を叫んで彼女の行方を捜す。
「ミリー、どこいったの!返事をして!」
リタの言葉はむなしく草原の風となって消えていった。
。。。
その時、少女は不思議な感覚で目を覚ます。
自分が何者でもなくなったような、存在を認識できない不思議な感じ。
体が世界に溶け合っている感覚。
ミリーの体は白い粒子になり、人の形をかろうじて留めている状態になっていた。
ナージャの言葉を思い出す。
「精霊の試練では自分をしっかり保つんじゃ。自己の存在を認識して、自分にとって一番大切な事を思い出すんじゃぞ」
一番大事な。。。お師匠様と出会って。。。弟子にしてもらって。。。それから
。。。アイン
弟のような男の子
いつも心配になって気にしてしまう
あんなに小さいのに、過酷な運命にも立ち向かえる強い子
時々両親を思い出して泣いてしまう普通の男の子
私はアインの力になりたい
アインを助けたい
その為に貴方と繋がりたい!
目の前に女性の姿が見える。
緑の風をまとい、微笑みながら手を差し伸べる。
その姿をミリーは美しいと思った。
。。。
花の香りがする。
「。。。ミリー。ミリー起きて。返事をして」
リ、タ姉ぇ?
リタの声に反応する。
ああ、戻ってきたんだ。
目の前に真剣な顔をしたリタがいる。
手でその頬にそっと触れる。
リタはその手を握り返してくれた。
そこで、自分が自分であることを思い出すことができた。
しばらくそのまま、ぼーっとしてから立ち上がる。
「びっくりしたよ、急に姿が消えるんだもの」
リタは姿が消えたミリーを探して、一刻ほど周辺を探し回ったようだ。
元の場所に戻ると、ミリーが横たわっており、目を覚ますまで声をかけていた。
「ありがとう、リタ姉ぇ」
「それより、どうなっちゃってたんだい?急に姿が消えるし。今までどこにいたんだい?」
「よく覚えてない」
ミリーの記憶はあいまいだ。
「なんか、すごくきれいな人に会ってた気がする。それと花の匂いがして。。。あれってリタ姉ぇの匂いだったのかな?」
「あたしはそんな匂いじゃないと思うけど」
自分の匂いを嗅ぎながらリタが言う。
「試練は成功したのかい?」
「うーん、たぶん」
精霊核から確かな魔力を感じる。
「じゃあ、急いで戻ろう。このままじっとしてたら良くないことが起こりそうだ」
リタは自分のカンを信じて先を急ぐことを提案する。
「そうだね、わかった」
ミリーはおぼつかない足で立ち上がり、リタに肩を借りながら歩き出す。
こうして、二人きりの冒険は終わり、馬車は草原の村へ向けて帰路についた。
ミリーはアインへの思いにより、無事風の精霊に認められました。
次は、新たな杖を得るための儀式を行います。




