宝石商人
宝石商人。ビドゥとの出会いのシーンです。
故郷への手がかりを持ってそうですが、癖のある人物のようです。
次の日
旅商人ビドゥの情報集めを行う。
こちらはすぐに居場所が分かり、ちょうど今この町にいるということだった。
定宿にしている安宿の扉を開くと、大きな怒鳴り声が聞こえる。
「いい加減に宿代を払ってくださいよ!」
「いや、だからこの宝石を代わりに置いていくっていってるだろ」
「こんな、普通の店じゃ売れもしない代物置いて行かれたって迷惑なんです!」
面食らって固まっている一同。
横から老婆が声をかける。
「取り込み中のところすまんがのぉ、ビドゥというのはお主か?」
「先にこっちの話が終わってからにしてもらえませんかね?」
宿の親父は取り付く島もない。
「話によってはわしらが宿代を肩代わりしてもよいぞ。どうじゃな?」
親父は相好を崩して、
「そういうことなら、どうぞお話になってくださいな」
態度を急変させて奥へ引っ込む。
「おいらに話だって?なら外にいこう、さあさあ」
ビドゥは足早に外に出る。
落ち着いて話をするために、湖に併設された東屋に向かう。
「いやぁちょうどいいタイミングでしたわ。あんたら命の恩人だ」
調子よく軽口をたたく。
歩きがてら、カイルが聞く。
「あんた、獣族と取引してるんだって?」
ばつが悪そうに振り向くビドゥ。
「あんたら、宝石商会の関係者かい?」
「いや、そういうんじゃないが」
ホッとしたような表情で、
「ふぅ、脅かすなよぉ。まあそんな感じはしなかったがな」
何か後ろめたい事がありそうだ。
東屋についたので先ほど思った疑問を口にする。
「宝石商関係だと何かまずいのか?」
「あー、まあ関係者じゃないっていうなら。。ここだけの話、獣族の持つ宝石は禁制品なんだよ」
「おーっと、そんな目で見ないでくれよ」
皆の空気を読んで慌てて説明する。
「犯罪ってわけじゃあ無いんだ。ただ購入先が特殊というか普通じゃないというか」
「どういうことだ?」
「。。。いや、その買い手ってのが魔族なんだよ」
「っ!」
「あんた、それ本当か?」
カイルが驚いて聞くのも無理はない。
魔族は大昔の大戦争から人類との交流を完全に絶っていた。
それどころか、その後の人類史に現れたのはごくわずかで、その存在は伝説と化していた。
「。。。」
ナージャが難しい顔をしている。
「まあ、それが事実だとしても、今のわしらには関係ない話じゃな」
その言葉を聞き、話を進める。
カイルは、嘘を交えながら獣族の村についての情報を聞き出そうとする。
「まあ、そういうわけなら、教えなくもないがね」
ちらっと、老婆の顔をみる。
「はあ、抜け目のない奴じゃな」
懐から金貨を一枚渡す。
「話が分かるねえ。宿代は別でいいんだよな?」
「ちゃっかりしてるわねえ」
リタは呆れた。
「商人は情報も商品なもんでな」
うそぶいて言う。
カイルの話を思い出し、金貨を指で確かめながら、
「そういう話で聞いたのは、昔ある村の長の息子が駆け落ちしたって話は聞いたことあるな」
「ただ、その話だと、息子の方がべたぼれだったって話だが」
「まあ、話ってのは尾ひれがつくもんだからな」
カイルがごまかす。
詳しく話を聞くと、その村は、大陸の西側にある村で、ここから馬車で半年はかかる距離にある。
しかも、その村は魔族領に最も近い位置にあるという。
西側大陸は広大な山脈が連なる人の住むことができない魔境であり、魔族領と言われてきた。
他に手がかりが無い以上話を信じるしかないが、かなりの長旅を覚悟することになる。
当てが外れた時の事を考えると躊躇するところだが、ビドゥが同行を申し出てくれた。
「ちょうど、魔族領へ商品を運ぶ用事があったんだ。仕入れもあるので、直接向かえるわけじゃないが、それでも良ければ道案内するが、どうだい?」
「。。。でいくらだい?」
リタがジト目で聞く。
あわてて、取り繕いながらビドゥは言う。
「いやいや、命の恩人から金はとらねーよぉ。ただ、道中の護衛をお願いしたいな、と」
「物騒な道なんで、そこは持ちつ持たれつってことで、な?」
「つまり、護衛費を浮かせたいと」
あくまでリタの口調は辛辣だ。
「まあ、その辺でいいじゃろ。他に選択は無さそうじゃしな」
ナージャの仲裁による一言で決まった。
行程を確かめると、この時期、直接向かうのは乾燥地の砂嵐に出くわす恐れがあり危険だという。
北側の草原地帯を経由して、その先の森林を抜けるルートが安全だということだ。
途中に獣族や森人族などの古代種の村々を経由するため、旅に必要な物資の補給ができるのも良い理由と説明された。
翌朝
最初の目的地に向かうために、馬車を借りる。
馬車といってもこの世界の荷車を引くのは馬ではなく魔術による道具だ。
全長は馬と同じくらい。
4本足で、馬の胴体を持つが首はなく、その部分はゆらゆらと、ろうそくのような魔法の炎が揺れている。
その炎を絶やさないように、時々人の手で魔法の火を追加すると永久に動き続けることが出来る。
操り方は馬と同じように手綱をつかうようだ。
炎が消えると動きが止まるため、普段は動物の頭を模した風防をつけている。
2体の馬もどきが引く、一行全員が乗れるだけの大きさの馬車を購入する。
ビドゥは自前の馬車を持っているため別だ。
ちょうど同じ方向に向かう商隊があり同行を申し出た。
ビドゥが交渉役となり護衛依頼を取り付けたので、すこしは実入りが期待できる。
当然、上前を撥ねようとするビドゥに詰め寄るリタとのひと悶着があったが、一行の旅の準備は順調に進んでいいった。
一日がかりで準備を終えた翌朝。
最初の目的地、草原の村へ向けて一行は旅立つ。
ビドゥに同行することになった一行。
これから長い旅の始まりになります。
次回は、強敵との遭遇の回です。




