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荒野を越えて

渡河を果たした一行はオアシスの街へ向かいます。

旅の中、カイルとリタの昔話が聞けます。

渡河を果たした一行は、そこから一番近い街を目指す。

冬の荒野の気温は低く、防寒対策が重要とは現代人の感覚だが、ここは異世界。

魔法による住環境操作は一般的な技術として広まっている。


こういう簡単な魔法による住環境の維持はミリーの仕事だ。

周りの温度変化に合わせて空間を制御するのは、簡単なようでコツがいる良い修行になるそうだ。

アインにとってもミリーの魔法は勉強になるようで、見様見真似で覚えた。

発動することはないが、呪文や陣の描き方、スタッフのふりかたなどを真剣に見ている。


一枚の布の周囲をペグで固定し、天井に風魔法で作った空気の球体を留めることで半球の屋根が出来上がる。

隙間から外気が入らないように土魔法で壁を作るとパオのような居住空間になった。

火魔法で部屋の中の温度を調整してから、それぞれ皆がくつろぐ。


一仕事終えたミリーに、リタが声をかける。

「おつかれさま、ミリーもだいぶ上達してきたわねえ」

リタの賞賛に照れながら、「へへっ」と笑う。


基本はしっかりしているが、細かいところが抜けている性格なのかよくナージャに小言を言われていた。

その度に、繰り返し何度もやり直してきた成果は確実に身についているといえた。


弟子を誉められ、ナージャは、

「まあ、これくらいの魔法制御はできて当たり前じゃがな」

と憎まれ口をたたく。


年寄りは素直じゃない。


夜、皆が寝静まったところで、坊主の体を借りてテントを抜ける。


いつものように素振りをしていると、また声が聞こえてきた。


こんにちは。こんばんは。またあったね。はじめまして。


ああ、いつもこうだ。最近は慣れてきたけど、本当に意味が分からない。


きみら、ほんとになんなの? なんのようなの?


話しかけても会話にならず、勝手に話し出す。


妹さんは元気。弟だったかな。息子?娘さん?だから安心して


くすくす笑いながら意味のない言葉をつなげる。


もう向こうに行ってくれ。


かのじょにきをつけて


その言葉を最後に声が掻き消えた。

最後の言葉はいったい何だったんだろう。


翌朝、一行はオアシスに向けて再び歩き始める。


整備されていない、道なき荒野は乾燥地帯特有の岩盤地質で歩きにくいことはなかったが、どこまで進んでも変わらない景色には辟易とする。


「どうしてこの先に町があるってわかるの?」


アインが、思った疑問を口にする。


「あそこの空を見てごらん。」

リタが指さす先をじっと見ると、そこに何かが浮かんでいる。


「空中城と言って今では誰もいない城が浮かんでるんだ」

皆あれを目印にして方向が分かるということらしい。

それに加えて、太陽の沈む方向や星の位置によって判断するのは俺のいた世界と変わらない。

ただ、あれだけ目立つ目印があると、そちらの方がよく使われるのは道理だ。


荒野を進む。


退屈しのぎに、カイルとリタが昔話を聞かせてくれた。


同じ村で生まれた二人は幼馴染で、いつも一緒にいたそうだ。

その村の子供の大半は、大人になれば親元で家業を手伝うのが習わしだった。


カイルは幼いころに両親を亡くし、リタの両親に引き取られた。

昔からの悪童わんぱくで大人を困らせていたが、不思議と村人には好かれていた。


ある時、村の作物を荒らす小鬼ゴブリンが現れ、子供の蛮勇から退治するため戦いを挑んだ。

同じくらいの背格好にもかかわらず、集団戦を得意とした小鬼は子供では歯が立たなかった。

その時逗留していた冒険者が鮮やかに退治するところを見て、カイルは冒険者になることを決めた。


リタの両親は、共に暮らすことを望んだがカイルの決意は固かった。

リタ本人は冒険者に興味はなかったが、いつも危なっかしい弟のようなカイルが心配で自分も冒険者になると言い出した。


これには、両親は当然反対したが、二人は駆け落ちするように村から出て行った。

3年以上前の話だが、それ以来村には帰っていない。


「父さんや、母さんに悪いことしたなあ」

「落ち着いたら一度帰って怒られようか」

「二人は仲がいいんだね」

アインの素直な感想に、二人ともそっぽを向いて黙り込んだ。







次はオアシスの街でのエピソードです。

アインの父ダンの故郷に関する手掛かりを探します。

そこで、ヒャクガ村に関する奇妙な噂があることを知ります。

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