表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/26

惨劇の痕

時は少し戻り、あの惨劇の数日後のシーンです。

魔術師評議会の特殊部隊が登場します。

そして黒幕の姿も。

時は戻り、惨劇から数日後。

山間の小さな村だった場所に、幾人かの人影があった。


「こりゃ、ひでえな」

「いくら特級任務だからって、ここまでするのか。。。」


炭化した木片を片足で潰しながら一人が言う。


かつて、ヒャクガ村と呼ばれたその場所は、焼け残った家屋の跡と動物の焼けた匂いが残る地獄だった。

当時の凄惨さを物語るように死体は放置され、獣によってバラバラにされていた。

原形を留めるものは生きたまま火をかけられたもの、手足を縛り車裂きにし、その後燃やされたもの、およそ人の所業とは思えないものだった。

ある親子は木につるされ、的にされたのか矢が刺さったまま鳥についばめられていた。


その親子の死体を下ろしながら、背の低い男が、苦虫を噛むように言う。

「俺がこの任に就いてから、ここまで凄惨な光景は見たことが無いな」


「野盗に任せるといつもこうだ」

女性の声で嘆息が聞こえる。


「あくまでも噂なんだがな。評議会のお偉いさんといい仲だった女が裏切ったせいだと」

「それで、村一つ焼くとは、それが本当ならいかれてるわね」


見ると、全員が同じ装束を身にまとっている。

口を覆いフードのついたローブ姿に、体の線が見える動きやすいスウェット状の衣服を着ている。

そのローブには魔術師評議会の紋章が描かれており、正規の部隊であることを示していた。


荒事を得意とする黒梟の中でも、特に戦闘に秀でた人員を集めた特殊部隊:疾爪しっそう

構成員は4人と少ないが、4人合わせた戦闘能力は世に名高い数多の英傑をも凌ぐとさえいわれる。


「アル、お前も指揮についていたんだよな?」

「。。。」


アルと呼ばれた、中肉中背のその男は言葉を発さずうなずいた。


「本当にこの状況からガキ一人逃げ延びたってのか?」


統制を失った暴力の吹き荒れる中、一人の少年の行方を知ることは困難と思えた。

目的の人物を見失い、その足跡を追うためにこの班が派遣された。


村の状態を一通り調査し、対象の死体が無いことを確認した。


「ねえ、みんなこっち来て」

女性が村の奥に続く一本道を見つけた。


「この奥、森の近くまで続いている」


道をたどると、蹄の跡が残っている。

野盗がこちらにも向かった証拠だ。


しばらく歩いていくと、2階建てのこじんまりとした家が見えた。

木材の加工場に隣接した、その家の近くで男女の死体が横たわっている。


女性の死体には凌辱の跡があり、野盗が行った獣以下の行為に吐き気がこみ上げる。


女の顔には見覚えがあった。

「手配書にあった女に間違いなさそうだ」


同じ女性とあって、女性隊員は辱めを受けたその身を隠すようにローブを掛けた。


「向こうにも何かあるぞ」


穀物蔵への道を見つけ向かう。


野盗と思われる、数人の男の死体を発見する。


「なんだこの死に方は」


班長:ジンライが言う。


小屋の残骸と思われる木枠が見える。

そこからそう離れていない場所に死体が残っていた。


一人は炎に焼かれ、一人は衝撃で飛ばされて、後は農機具に貫かれ絶命していた。


「これを、子供がやったとは信じられんな」


どうやったかは、まるで見当がつかないが普通の子供では無いことが分かる。


ここを中心に探索範囲を広げる。

班長はそう宣言し、

「ザジ、お前は下にいる連中を指揮して痕跡を消せ。証拠を残すな」

「了解」

待機している別部隊と合流するため、背の低い男、ザジが走り出す。


「アルフレッドとサーニャは俺と探索を続行、何か見つけたら念話で知らせろ」


「。。。」

「わかったわ」


アルフレッドとサーニャが扇状に探索を始めて数刻後、


「こちらには何もない」

「同じく何も見つからないわね」

「。。。ない」


3人とも成果がなく元の場所に戻る。


「この山の奥深さでは子供が生き延びることは出来ないと思うが、万が一のため周囲に警戒するように通達しておく」

「あの家に手配書の女が暮らしていたなら、何らかの情報が残っているかもしれんな。取り壊さずにに残すよう言いつけておくか」


ジンライの判断で調査は一旦打ち切りとなった。


その場を立ち去る際に、アルフレッドはもう一度山の方を一瞥し、踵を返して皆の後に続いた。


ーーー


書庫と見まごうような大量の本が整然と並ぶ部屋。

本の痛みを考えてのことか明かり窓の無い薄暗い部屋に、魔法のランプだけが灯っている。

その部屋の奥、豪奢な執務机に座る男が、報告を受けていた。


豪華なローブをまとい、野心的な目を持つ髪を後ろに流した壮年の男。


大魔術師クラーク


こけた頬とくぼんだ眼孔がんこう

人を寄せ付けない雰囲気を持つこの男が、評議会で最も発言力を持つ有力者となっていた。


「そうか、女は死んだか」

配下の者の報告を受ける。

この男には珍しく寂寥の表情を浮かべたことに驚く。


「引き続き、監視を怠るな」

「行け」


報告者は陰に溶け込むようにその場を去る。


男は普段の表情に戻りながら、椅子から立ち上がり、壁際に近づく。

装飾が施された観音開きの小窓を開くと、そこに大きさ1メートルほどの水晶が現れた。

男は水晶に手をかざす。

それは魔術的に共有思念体に繋いだ端末になっており、情報を引き出すために操作する。

すると、若き日のアリーシャの姿が映りだされ、言葉を発した。


「計画は順調でございます。。。。ザー。あなた様と私の未来。。。ザー。。。お慕い申します。。。。ザー」

劣化した映像と音声が擦り切れたような音を流す。

過去の記憶を振り払うように映像を消し、振りむいた時には冷徹ないつもの顔に戻っていた。




母アリーシャと大魔術師クラークは何やら関係があるようです。

今後、どのような間柄だったのか明らかになるのでしょうか。

次回はアイン一行の道程を追います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ