表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/23

潜伏

間一髪で逃げ出した一行は港湾都市に逃げ込みます。

少年たちは追跡者から逃れることができるのか。

土熊ゴーレムとゴウライがその力をぶつけ合っている隙を見て、カイルとリタが動く。

カイルはナージャを、リタはアインを抱えて港湾都市に走り出す。


距離にして300メートル。

その意図を察して、ナージャの魔術が発動する。

身体強化系の魔法の効果により、数十キロの人を抱えた状態でも難なく走ることが出来た。

また、効果にアレンジが加えられており、走るスピードが人のそれをはるかに凌駕した。

ミリーにもその強化バフが付与されているらしく、先行する二人にもついてきている。

港湾都市の正門を目の前にして走りを止める。


馬車の行き交う巨大な門を前に通行許可を得るための人の列が出来ていた。

突然、走りこんできた一行に皆が驚く。


何事かと血相を変えて走り寄る門番に、適当な嘘をつく。


「向こうで戦士と魔物が戦いを始めたので急いで逃げてきたんだ!」


カイルは、未だ轟音鳴りやまぬ戦場を指さした。


門番がそちらに注意を向けた所で、通行証を差出す。

「さっさと中に入れてくれ、こっちには子供や老人がいるんだ」

と、さも避難してきた風を装い門を通る。


「お、おう、早く入りな」

ちょうど通行人が多い時間だった事もあり、緊急事態を察した門番は簡素なチェックだけで入れてくれた。


港湾都市:ヴェッセル


門を抜けると、港町特有の雑多な風景が目に入る。

大きな荷物を担いで橋桁を渡る人足が巨大なフラットボートに次々と荷を運び込む。

商人とその日の日当を交渉する人足頭の声。

活気に溢れ荒々しく騒々しいその雰囲気に、アインは興味深げにきょろきょろする。


門を通り抜けた一行は、ゴウライの仲間が近くにいないか周りを気にしながら足を進めた。

不審な人物を見ることもなく、予定していた宿屋に向かうが、カイルの提案で二手に分かれて行動することになった。


「このまま宿に向かうと、まとめて襲われる可能性もある。二手に分かれて別々の宿に隠れよう」

脇道に入り周囲からの死角を利用して、アインとミリーに言う。

「二人ともフードをかぶれ。アインは俺、ミリーはリタが背負って分かれて潜伏場所に向かおう」

「婆さんは、用事を済ます振りをして後から怪しい連中がつけていないか見てくれ」


アインが目的なら、この方法で追跡者の有無を確認できるはず。


「老人をこき使ってからに」

と不平をこぼすも作戦には同意した。


別々に分かれて進み、普段通りの姿を装いながら周囲を警戒する。

怪しい人物や視線を感じることなく、アイン一行は宿に到着した。

到着早々、裏口から出てリタと合流すべく彼女らの潜伏場所へ向かう。


ナージャは何食わぬ顔で、後れて宿に到着し予定通り部屋でくつろいでいた。

「そちらの様子はどうじゃ?」

念話魔法を使い、ミリーと会話する。

「先ほど、カイルさんとアインが合流しました」


潜伏先の安宿でミリーが応答する。

「こちらは1人つけてましたが、リタ姉が旨く巻いてくれて、この場所は見つかっていません」

「こっちは、見たところ2人怪しいのを見かけたが宿を変えたことまではばれていないな」

「今も見張られておるわ」

外をちらっと見てつぶやくように言う。


え?いたの?全然気づかなかった。。。



潜伏先はカイルとリタが古くから知る場所で、緊急時の潜伏先として良く使われていた。


「なら手筈通り」


それから、しばらく時が経ち。

夜を迎える。


夜陰に紛れて人影が動く。


黒ずくめの男たちが小声で話している。

「まったく、英傑様の尻ぬぐいをすることになるとはな」

「まさかあの男から逃げおおせるとはな、信じられるか?」

女のほうを追っていた男に文句を言う。

「簡単にまかれやがって、向こうが本命ならどうするんだ」


夕刻まで数人で食事をしていたと思われる窓の明かりが、今は消えている。


「さっき、男が出て行ったきり戻っていない」

「残っているのは婆さんとガキだけだ」


だいぶ夜が深まった時間になっても、部屋の明かりが灯ることはなく好機と捉えた男たちが動いた。


宿部屋の窓を監視するもの。

裏口を見張るもの。

侵入するもの


3手に分かれて襲撃する構えだ。


「ヒュッ」


指笛が闇夜に響く


2人の黒ずくめの男が、部屋に突入した。

部屋の中は静かで、老婆と子供が寝ている。

頭からかぶったシーツが上下している。


足を忍ばせて近づき、シーツの上から持っていた短剣で突き刺す。

その瞬間。


ざばぁ


シーツの下から水が襲い掛かる。

「ぐ。ごぼぉ」


その水は不幸な暗殺者の口から入り込み喉にそのまま留まる。

水の中で溺れる苦しさに黒ずくめの男は死を覚悟した。


そこに老婆の声がかかる。


「このまま死ぬか、質問に答えるかどちらかを選べ」


必死に頷く男たちを拘束し、魔術を解く。


「そっちも終わったかの?」


同じタイミングで入ってきたカイルに声をかけた。


カイルはにやりとしながら言った。

「ああ、見張りはどちらもぶん殴って縛り上げておいた」


「なら、質問の時間じゃ」

ナージャは酷薄そうに笑う。


ベッドの上で溺死という、最悪に近い死に方を免れた男たちは項垂れていた。


「さて、答えてもらおうか」

バケツの水を近くにおいて、嬉しそうに問う老婆に震えながら男たちは弁明した。


「俺たちは雇われただけで何も知らねえ」


「ならば誰に雇われたかを言え」

「だ、だめだ、それを口にしたら、俺たちの命はねえ」

口封じを警戒してか、口を割らない暗殺者を、脅す。


「吐かないなら今この場で失うかもしれんぞ」


「そうじゃねーんだ、話すことが出来ないように呪いをかけられてるんだ!」


「。。。ほう」

そう聞いたナージャが男の首筋を確認する。

小さな黒いほくろのように魔方陣が刻まれている。

「なるほどな、これで誰を相手にしているかおおよそ見当ができた」

ナージャの顔がいつになく真剣になる。


男たちを魔法で眠らせて、外の見張り役ともども憲兵に引き渡した。


アインの潜む安宿に向かう途中にカイルが聞く。

「婆さん、いったい何が分かったんだ?アインを狙う連中の正体を知ってるのか?」


苦々しそうに、ナージャは答える。

「ああ、わしの古巣じゃ」


そう言う老婆の杖を持つ右手は怒りに震えていた。


「おそらく、排除派の連中が評議会に内密に強行したんじゃろう」

伝説いいつたえの子の処遇は魔術師評議会では未だ決まっておらんはずじゃ」

「もし趨勢がどちらかに決まったなら、わしらにも声がかかるはずじゃからな」

ナージャは冷静に分析した内容を語る。


「。。。もし、連絡が来たら、婆さんはどうするつもりなんだ?」

怒りを目にたたえカイルが問う。

「。。。」


「いくら雇い主でも、あんな小さな子供に手をかけるなら俺たちは黙っちゃいないぜ」

一瞬、二人の間の空気がひりつく。


ナージャはふんと鼻を鳴らして、

「。。。前にも言うたであろう。わしの考えは、放っておくのが一番じゃと」

「評議会の決定が排除に決まっても、それに従うかどうかはわしの意思次第じゃ」

「それにの。。。孫を手にかける訳にもいかんでな」


ふうと緊張を解くカイル。

「悪かった」

と謝罪する。


そうこうしているうちに、潜伏先に到着した。


ナージャは追跡者の依頼人に心当たりがあるようです。

少年の身を案じる二人は潜伏場所に急ぎます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ