絡み合う恋切ない恋楽しい恋
プロローグ
人は
変わっていく
人間関係の中で
…何を
求めるんだろう?
あたしには
分からなかった
そぅ…
キミも―
知らなかったよね…。
けど……
キミとの時間が
あたしに
ゆっくり
その意味を
教えてくれたね。
もしも
あたしが……
キミと
出会ってなかったら
その答えも
意味も
知るはずなんて
なかったんだ。
そう考えると
運命なんだな…
って
心から思うよ…。
けど…
そう考えてると
きりがないね…
あたし…いつも
考えてるよ。
ぉもってるよ。
キミが
あたしの―…
運命の人。
…だったのかな?
って……
その答えは
キミと
あたしだけが
知っているんだ。
だから
あたしは
信じてるよ。
あたしとキミの
可能性…。
第1話
桜
あたし
櫻井めいは
中1になった
クラス表を
親友の咲と
沙織と
グループの人と
見ていた。
―!!!?
(°□°;)
さっきまで
笑顔だった
あたしの顔が
一瞬にして曇る。
「…どぉしたの?」
「大丈夫?」
沙織と咲が
心配そうに
あたしを見て言う。
「え―……うん」
それを聞いた
咲と沙織が
ゆっくり
後ろを振りかえって
あたしが見ていた
クラス表を見る。
そして同じように
叫んだ。
「…ぇー…!!!!」
あたしは
その声に反応する。
「ちょっと。―めい…!!大丈夫なの???」
「―分かんない…」
「どぉすんの…木村とクラス一緒じゃん………」
木村は
あたしが
好きだった人で
あたしの
男友達だった
しかも
木村は
あたしの相談相手。
相談したり
ふざけていたら
いつの間にか
好きに……
なってたんだ。
告白したら
絶対……
上手くいくって
思ってた。
けど……
木村には
好きな人が
いたんだ。
―でもね
あたしじゃ
なかったんだ。
あたしの親友の
ゆきなだった。
卒業式…
あたしは
ダメ元で
告白しようとしてた
けど…
木村は居なかった
先に
帰っちゃったんだ。
だから
言えなかった。
でも
春休みに
木村がゆきなに
告白したことを
親友のヒロから
聞いた。
そして
好きじゃないのに
付き合っている
ゆきなの事も……
あたしはゆきなを
避けた。
木村の思いを
踏みにじる
ゆきなが
イヤだった。
木村のキモチを
知らないゆきなが
うざかった。
それから
今日の入学式まで
二人とは
距離を置いていた。
「―めい。つらかったら言って…??」
そんな優しい
咲と沙織の言葉に
あたしは
助けられたよ。
そして
生徒が
クラス順に
並んでいく。
………木村の事は
もう
なんとも
思ってないから…
堂々としてたら
いいよね?
何回も
自分に言い聞かせる。
そうしていると
あたしの前を
すらっと背の高い
カッコいい
男の子が通り過ぎた
「……っ」
目が離せない。
その子はあたしの
斜め前に並んだ。
キレイな瞳に
優しい表情…
少し焼けた肌。
――名前…
何ていうのかな?
ドキン
ドキン
あたしの胸が
リズムよく
鳴りだす。
―カッコいい
いつのまにか
あたしの中は
その男の子で
いっぱいに
なって
いたんだ。
桜が咲く
この季節。
あたしは
名前も
知らない人に
恋をした。
桜が
風にふかれて
ハラハラと
散っていく中で……
そう
最悪の恋をしたんだ。
しばらく
ボーっとしていると
誰かに
声をかけられた。
「ねぇ…」
「―ぇっ?」
声の聞こえた方を
見ると
そこには
カッコいい
女の子が
いたんだ。
でも
瞳が大きくて
すらっと
背が高くて
笑ったら
可愛くて……
さっぱりしていて
どこか
優しそうだった
これが
美咲との
出会いだった。
「―名前…何て言うん?」
「―え…と櫻井めい…」
「めいか……」
「えっと…名前は?」
「あ…ウチ!!?ごめん。忘れてたウチは木下美咲。めいって呼んでいい?…あ。ウチは美咲でいいよ」
「うん…いいよよろしく美咲。
」
「美咲は部活どぉするん?」
「ウチはバスケかなミニバスやってたからめいは?」
「あたしは吹奏楽かな……」
あたしと美咲は
ずっと
しゃべっていた。
―でも
楽しいことは
長くは
続かなかったんだ。
あたしが……
美咲の夢を
壊しちゃったんだ。
ごめんね……
美咲。
あたしのこと
―恨んでいいよ…?
あたしが
全部受け止めるから。
写真撮影……
写真を
取っているとき
あたしの足元に
茶色く枯れた
桜の花びらが
落ちていた…
あたしは
そんな花びらを
見ているのが
イヤで
横に蹴った。
花びらは
ゆっくりと
宙に浮いて
すぐに
落ちていった。
まるで
これからの
あたしのように―
写真撮影が
終わって
先生に
案内されて
教室に向かう。
教室の
プレートが
見えてくる…
1年3組―
ここが
あたしの新しい
スタート地点
…ょぉし
頑張ろう
みんなが
紙に書いている
席順を見て
席に座っていく。
あたしの席は
窓側の一番後ろ
隣はいない。
…だから
窓から
優しい風がふく。
斜め前は
あの男の子だ…
その隣は
美咲…
うらやましいな…
ちょっとだけど
美咲に
ヤキモチを
焼いていた。
先生が
出席を取っていく。
―次だ
次に
あの男の子が
呼ばれるんだ…
あたしは
緊張しながら
聞いていた…。
「…岡本峻一」
「はい。」
峻一って言うんだ?
意外だったなぁ
声も聞けたんだ…。
―嬉しいっ
声と名前…
少しだけど
俊一くんを
知れたことが…
峻一くんの
声を聞けたことが…
それだけで
あたしは
幸せでした
あたしの事も
知っていてくれたら
いいのに……
知ってる…
はずないよね…。
学校も
一緒じゃなかったし…
今日
初めて会ったんだから。
知ってたら
…逆に怖いよ?
あたしは
一番後ろの
風が優しくふく。
席で
風にふかれながら
眠った。
―どれだけ
時間がたっただろう?
まだ眠たい瞳を
開けると
あたしの目の前には
美咲がいたんだ。
「―っ?!!」
「お―めいおはよー」
「…あ。おはよ。」
美咲と
話しながら
空を見上げる。
窓から
空を見ると
もぅ…
陽が落ち掛けていた。
…峻一。
帰っちゃったんだ。
話してみたかったなぁ…。
あたしは
しょんぼりして
美咲と帰る。
美咲と
別れてから
あたしは
小さな丘に
向かった。
そこからは
ちょうど
夕日が見えて
すごく…
キレイだった。
―こぅいぅトコに
彼氏ができたら
一緒に行きたいな…
あたしは
ずっと
空を見上げていた。
そして
家に帰って
ベッドに横たわる。
「…俊一と今日…会えて良かった。」
俊一の事を
考えていると
あたしは
いつのまにか
すやすやと
眠っていた
……あたしは
ドコにいる?
真っ暗な世界に
あたしが一人
立っている。
そして
あたしの
目の前には
俊一がいたんだ。
あたしは
俊一に
話しかけてみる。
「…ねぇ?」
「……何?」
俊一が
振りかえって
あたしを見る。
俊一に
見つめられると
あたしの
鼓動が
早くなっていく。
「―っ。ぇっと…」
「何?」
俊一に
急かされて
あたしは混乱する。
―どぉしよぅ…
―何を…
話したらいいの…?
p(´⌒`q)
「あたしの…」
「―ん?」
「あたしの名前…知ってる…?」
………っ!!!
―バカバカっ。
知ってるはず…
ないじゃん―
…はぁ。
聞かなきゃよかった…
「―知ってるけど?」
「ぇっ?」
…うそっ。
「…櫻井めいだろ?」
「うん!!…あたしの名前…知っててくれて…ありがとう。」
うれしすぎたのか
あたしは
ボロボロと
涙を流して
泣いていた。
そして…
そんなあたしを
俊一が
抱きしめていた。
しばらく
そんな状況が続いて
俊一が唇を開いた。
「…ごめん。俺…やっぱ―お前の事好きだから…。」
うそ………?
「えっ?………あたしも…好きだよ?」
「…本当に?」
―ガラッ
扉が開く。
その音で
あたしたちの会話が
引き裂かれる。
―ドサッ…
何かが
落ちる音がした。
あたしと俊一は
音のした方を見る。
そこには……
何故か
美咲がいたんだ。
「……美咲?」
あたしは
涙を拭いて
俊一から離れた。
「―何で?何でめいも………岡本の事が好きなの…??」
「…え?」
「あたしの方が…ずっと好きだったのに…!!」
―がばっ!!!!!
あたしは
目が覚めた。
…なに?
すごく…
リアルだった。
リアル過ぎて
怖かった。
けど…
『お前の事が好きだった』
あれって…?
―何だったの??
『何で…?めいも岡本の事が好きなの?』
『あたしの方がずっと前から好きだったのに…!!』
美咲………
あたしは
どぅしたら…
いいんだろう?
朝から
あんな夢を
見てしまったからか
学校に行く、
足取りが
重かった。
―ガラッ。
「―おはよ。」
昨日、
友達になったばかりの
春とナナと
ひよりとあゆが
話しかけてきた。
「めいおはよ。」
「うんおはよ」
あたしは
みんなで
バカばっかやって
遊んだ。
キーンコーン……
「あ。やば!!チャイムなった。」
「んじゃまた後で」
席に着くと
美咲が視界に入る。
「…っ。」
美咲と目が合う。
「おはよ。めい。」
思わず、
美咲を見ると
あの夢を
思い出してしまう。
「………」
「…?あれ?めい…どぉしたん?」
「………えっ?別に。」
だけど…
もう一度、
美咲を見ると
あたしの不安は
消えていった。
「そっか…。」
―よかった…
やっぱり夢じゃん!?
あの夢が
本当になるはず…
ないじゃん………
―ばかだなぁ。
あたし…。
だけど。
あたしの考えは
甘かったんだ。
「今日は班の係決めるからね~?」
道徳の
ざわざわとした、
空気のなか
先生が
みんなに話す。
「先生が帰って来るまでに決めてね?」
「え―っ!?」
「だるい―!!」
「それじゃ行ってくるからっ。ちゃんと決めてね?」
そう言うと
先生は、
生徒の文句も聞かずに
走って
どこかに行ってしまった。
残された
あたしたちは
仕方なく…
係を決めた。
「めい―?係さぁ‥これでいい?」
「うん…。」
「なぁなぁ櫻井」
「ん?」
プ二っ。
「―っ?!」
「あははっ引っかかったっ」
あたしは
この目を疑った。
あたしの
目の前には
笑顔で笑う…
俊一がいたから…。
「岡本…?何で?」
「なんかやってみた。」
「はぁ―?!なにソレ……」
「てか…めっちゃプ二プ二やん」
俊一に
ベタベタと触られる
あたしのほっぺた。
体温が
少しずつ……
上がって行く。
「…ほめてないっ」
あたしは
ふてくされた
フリをして
俊一から離れた。
そんなあたしを
美咲が見ていた。
けど
あたしは
美咲が
見ていたことには
全く
気付いていなかったんだ。
……早く。
気付いていれば
よかったね…。
早く、
気付いていれば…
あたしも
美咲も
こんなに
傷つくことなんて…
なかったのに。
「…ねぇ?めい。」
「何?美咲…」
「あのさ…あたし。岡本の事好きなんだ。」
「…えっ?」
「…めいも―好きなんやろ…?」
「…えっ?何で……」
「好きなんやろ?」
「…うん。」
「そっか…。」
「美咲…ごめん。」
「いいよ…あたし。明日、コクるから。」
―えっ?
明日…!!?
どういう意味…。
何で…
あたしは
何も
考えられなくなった。
明日…?
何でいきなり……
しかも。
さっきの美咲の顔…
真剣だった。
あたしが
見た夢は
間違いなく
現実になった。
あたしは怖くて
仕方なかった。
…美咲。いつから
知っていたの…?
入学してから
1ヶ月…
初めから美咲は
わかっていたの?
こうなる事を
わかっていて
あたしと
友達になったの?
もぅ…
わかんないよ…
あたしは
授業中
前を見れなかった。
楽しそうに話す、
美咲と
俊一がいたから。
つらかった。
見たくなかった。
「櫻井も話そ?」
俊一の前の席の
タッキーが
あたしを
誘ってくれた。
タッキー…。
タッキーのおかげで
会話に
入ったあたし。
でもね…
気まずかったよ。
明日…
俊一が美咲に
コクられるって
知ってるから
分かってるから…
辛くて……
俊一の返事が
気になって―…
どうしていいのかわかんないよ…
…もし。
あたしも俊一に
思いを
伝えていたら
俊一は
どうしていたの?
そぅしたら
未来は変わってた?
けど…
この時のあたしは
弱くて
何にも
できなかったんだ。
帰り…
あたしは
俊一に
呼び止められた。
「櫻井っ!!!」
「…何?」
「何で今日…そんなに元気ないんだよ…。」
俊一が
心配そうな表情で
言う。
「別に…普通だよ?」
「なんか悩んでんの?」
「…何にもないよ!!」
「―嘘つくなよっ!?」
俊一の前を
通り過ぎようとすると
俊一に
腕をつかまれた。
俊一は
あたしの顔を
自分に向けた。
「―っ……。」
「―えっ?」
あたしの表情を
見て
俊一は驚いていた。
俊一が
見つめているのは
あたし―…。
俊一の前には
涙を流す
あたしがいた。
「…………」
俊一は
何も言わない。
あたしは
ただ…………
瞳から
暖かい涙を
流していた…。
「…俺が原因なの?」
「……………違…うよ?」
「…じゃぁ―理由…言って。」
「それは……」
「……………」
また
二人の間に
重い空気が流れる。
「…俺と……木下の事……?」
あたしの
胸が騒ぎ出す。
あたしの瞳に
また
涙が勢いよく
流れる…。
「…そぉじゃないっ!!!!!」
あたしは
俊一の腕を
振り払い……
走っていった。
「…櫻井っ!」
「…………。」
あたしは
黙って走った。
けど……
20メートルぐらい
走って
あたしは
立ち止まった。
「…岡本に……」
「…………」
「岡本にはあたしの気持ちなんて………」
「……」
「わかんないよっ…」
「…え」
そぉ言うと
あたしは
その場を去った。
家に着いてから
あたしは
泣き続けた。
俊一に……
伝えればよかった…
何度も
後悔したよ…
そして
とうとう……
運命の日は来た…
あたしは
わざと
咲と沙織と
遅刻していった。
美咲に
会いたくなかったから……
俊一にも
会いづらかったから。
あたしは
3時間目に
学校に来た。
…ガラッ
「…………」
みんなの目が
あたしに
向けられる。
「……見んなよ。」
あたしは
小声で言った。
美咲と
目が合う。
美咲はあたしに
微笑んでくれている。
だけど
あたしは
美咲に苛立ちを
覚えた。
―何で…
笑ってられんの?
―何で
そんなに…
余裕なの……?
意味
わかんない…
あたしは
美咲の事を
無視して
席に着いた。
席に着くと
美咲に
小声で
話し掛けられた。
「…なぁ?さっきの気付かんかった?」
「………別に。」
「どぉしたん?」
「…大丈夫。」
「本間に?」
「うん。」
「……めい。」
「何?」
「ごめんね…。」
―ブチっ。
あたしの頭の中の
何かが切れた。
そして、
ガマンしていた
何かが
勢いよく
音を立てて、
崩れ落ちた。
「…は?美咲。何が言いたいの?どんだけ、あたしを苦しめんの……!!??あたしの気持ち…わかってんの!!?―…何も知らない癖に…!!!アイツの事も知らない癖にっ!!!!」
「…えっ?」
教室に静かで
重い空気が流れる。
視線を感じる。
視線を感じた方を
見てみると
俊一がいた。
俊一とあたしは
目が合った。
俊一は
目をそらさないで
あたしを見る。
「………っ。」
静かで重い空気…
あたしに
集まっている
クラスの視線…
美咲の
驚いている表情…
俊一の視線…
あたしは
そんな状況に
耐えられなくなって
教室を走り去った。
授業中で
静かな廊下に
あたしの足音だけが
響く。
その足音に
誰かの足音が加わる。
「めいっ!!!」
あたしの後ろから
懐かしい声が
聞こえる。
ゆっくり
振り返ると
小学校が一緒だった
鹿野慎太郎が
いたんだ。
「鹿野……?」
あたしの
瞳にたまっていた
涙が溢れ出す。
「めい…あのさ。どぉしたの……?」
「―っ…何にも……ないよ??」
あたしは
涙を拭いて
鹿野に
小さく笑った。
あたしが
また
走って
行こうとした時…
鹿野に
呼び止められた。
「…俊一の事?」
あたしは
ゆっくり
鹿野の方に
振り向いた。
「何で……」
「―分かるから…」
鹿野は
困ったような
表情をしながら
あたしに言った。
「…えっ。」
「めいの事ちゃんと…見てたから―」
鹿野が
真剣な
表情になって
あたしを見る。
あたしの体は
金縛りに
あったかのように
動けなくなっていた。
まさか…
鹿野の
この言葉の中に
あたしの
運命を
変えるような
意味があったなんて
あたしは
これっぽっちも
気付いてなかったんだ。
意味の
よくわかってない
あたしの様子を見た
鹿野は
あたしの頭を
ゆっくり
優しく撫でた。
そして言った。
「とにかくなんか……あったら言えよ?相談してもいいから……いつでも相談していいし…」
「…うん。ありがと」
あたしの
返事を聞くと
鹿野は
笑顔になった。
小学校も
一緒だったのに……
鹿野のこんな笑顔
見たことない…
あたしは
心からそぅ思った。
鹿野は
とびっきりの笑顔で
あたしに
手を降って
どこかに
歩いて行った。
あたしは
しばらく
鹿野の背中を
見ていた。
鹿野は
強い……。
人を励ます力が
あるから……。
あたしは
鹿野の言葉に
すごく
勇気をもらったよ。
…ありがとう。
…誰もいない
授業中の
静かな廊下で
あたしは
窓を見る。
「…あ。」
窓から
一階を見下ろすと
桜の花びらが
もぅ…
茶色くなって
枯れかけていた…。
そんな
景色を見て
あたしは
胸が痛くなった。
いつになったら…
また
キレイな花を
咲かせてくれるの?
もしかしたら…
もう―
第2話
思いをぶつけられた日
あれから
何日が
過ぎたんだろう…?
あたしは
いつの間にか…
自分の事が
よく分からなくなっていたんだ。
俊一と
美咲とは
あの日以来…
しゃべっていない。
ううん。
違う。
しゃべってないんじゃない…。
しゃべれないんだ。
美咲の
告白の返事を
聞いちゃったから…
俊一は
美咲と………
付き合ってるんだ。
そんな
事実だけが
あたしの心を
埋め尽す…。
勝手に
溢れ出す涙を
必死にこらえて
あたしは
毎日を過ごしていた。
「…めい。」
あたしの前の席から
あたしの
よく知っている声が
あたしを呼ぶ。
美咲だ。
「………」
当然のように
あたしは答えない。
「後でさぁ…話したいことあるから。屋上に来て?」
「…わかった。」
あたしの
返事を聞くと
美咲はすぐに
前を向き直した。
―話って何……?
俊一の事?
そうだよね……
もしかして…
別れたとか!!!???
あたしの頭の中に
いろんな考えが
駆け巡る。
そんな事を
しているうちに
時間きた。
あたしは
英語の授業を
抜け出して
屋上に向かった。
階段を
一段一段と
上がって行く。
―ギィ。
屋上のドアを
開けると
もう
美咲は来ていた。
「あ。」
2人の声が重なる。
「…待った?」
「ううん…全然。」
「美咲…話って何…?」
「……………」
2人の間に
重い空気が流れる。
「…知ってる?俊一から聞いたんだけどさぁ…めいの事好きなんだって…」
「えっ?」
「―あははっ…笑っちゃうよね!?」
「…美咲。」
「…あたしさぁ。俊一と付き合ってるけど。…俊一があたしと付き合ってる理由は同情だよ?」
「………」
「―あははっ……………ホントむかつくんだよっ!!!!!!」
「……………」
美咲があたしの
胸ぐらを掴む。
「…なんか言えよ!!!!」
「…美咲。」
あたしは美咲を
見る事が
できなかった。
「―何?あんたさぁ……ふざけてんの?」
「…ちがっ」
―パシッ
あたしの頬に
鈍い痛みがはしる。
「…めいが悪いんだよ?……めいが俊一を好きだから…俊一がめいを好きだから……!!」
あたしは
美咲の言葉で
完全に壊れた。
美咲の言葉は
正しかったから…
……あたしが
俊一を
好きにならなかったら……
美咲はこんなに
傷つく事はなかった。
「美咲。…気がすむまであたしを殴って……」
あたしの
言葉を聞くと
美咲は
何回も…
何回も
あたしの頬を
ひたすら……
泣きながら
殴っていた。
そして…
あたしも
泣いていた。
あたしには
美咲の気持ちが
いたいくらいに
分かるから
美咲を想って
流れる涙は
止まらなかった。
「…はぁ。はぁ。」
「これで……気がすんだ……?」
「…あははっ。まさか!」
もう一回
美咲が
あたしを
殴ろうとしたとき…
勢いよく
屋上のドアが開いた。
「……鹿野?」
ドアの前には
あたしと美咲を
見つめている
鹿野がいた。
「……なにしてんの?」
「―別に?鹿野…何でここにいんの?」
「特に意味はないけど?」
「だったら……帰ってよ。邪魔だから!」
「お前のが邪魔だからっ。…今からめいに大事な事言おうと思ってたのに……」
「は…?」
美咲は鋭い表情で
鹿野を睨んだ。
その瞬間……
鹿野は
美咲を
あたしから離して
床に押さえつけた。
美咲は
バタバタと抵抗する
「離せよっ!」
「誰が離すかよ。………ばーか」
「……鹿野。」
―ドスっ
鹿野は
美咲を気絶させると
あたしの方へ
駆け寄って来た。
「めい…大丈夫か?」
鹿野は
少し腫れた
あたしの頬を
優しく撫でる。
「……っ」
鹿野の優しさと
自分の弱さに
また涙が出てきた。
鹿野はただ優しく
あたしを
抱きしめていた。
「……鹿野。あたし…どうしたらよかったんだろ?……俊一の事…あたし。正しかったかな……?」
「わかんねえ……」
「……だよね。あたしもだよ…」
「…でもなぁ。これだけは覚えとけよ?自分がどの道を選んで、どうなるかなんてなぁ………誰にもわかんねぇんだよ。……自分が選んだ道で…誰かを傷つけるかも…しんねぇ……そういう事もある。だから―めいは自分を信じて進めばいい。」
「鹿野……」
しばらくしてから
屋上のドアが
また
勢いよく開いた。
「―櫻井っ!!!」
「俊一……?」
「……鹿野。何でお前………ここにいんの?」
「……は?お前こそ…何で―」
あたしは
ゆっくりと
鹿野の胸から
顔を出す。
「岡本……?」
「櫻井っ。」
「何しに来たの……?」
「何って……」
「何…?」
「俺は…お前らが心配で―」
「嘘。」
「えっ?」
「…違うでしょ。あたし達が心配じゃない。―美咲でしょ…?わかってるから………」
「―櫻井…違っ…俺は…」
「だから……早く美咲を連れて帰ってっ」
「……でも…」
「…早くっ」
「………………」
俊一は
悲しそうな
表情をして
あたしを見た。
「―帰ってょっ!!!!」
あたしは
そんな俊一を
見たくなくて
強く言ってしまう。
「…ごめん。じゃ……」
俊一は美咲を
抱えると
すぐに屋上を出た。
―パタン。
静かで優しい
風があたしを
通り抜けていく。
その
風にあたしの
涙が乾かされる…。
「…大丈夫か?」
「……全然。」
涙が乾いても…
イヤな人が
居なくなっても…
悲しさは
全然減らないんだね。
涙が乾いても…
イヤな人が
居なくなっても…
悲しさは
全然減らないんだね。
バカみたいに
笑っていた
昔のあたしも
いまは……………
笑ってなんかない。
ただ
ひとつ…
満足してるのは
鹿野の温かさ。
ただ……
それだけだよっ。
この手の
温かさだけは
いつまでも……
いつまでも
あたしのそばで
見守っていてほしいよ…。
「…ごめんね。」
「えっ?」
「鹿野に迷惑かけて……」
「…そんな事。気にすんなよ………」
「でもっ………」
「いいからっ!―俺がいいっていってんのっ………!!!!」
「…あたしっ。鹿野には………迷惑とか…かけたくないよ―」
「櫻井……?」
あたし………
何いってんの……?
「櫻井………明日さぁ………この時間にまた来てくんない…?―話したい事あるからさ。」
「…うん。わかった。」
あたしは
ゆっくりと鹿野から
離れて頷いた。
「…絶対来いよ?」
「―わかってるよ。」
あたしの
返事を聞くと
鹿野は
優しく笑ってから
ドアを開けた。
「じゃなっ」
「うん…ばいばいっ」
―パタン
鹿野は
屋上を去った。
あたしは
鹿野が
去った後の
屋上のフェンスに
もたれて
空を見上げた。
透き通った青空。
ゆっくりと
流れていく白い雲。
今更になって…
さっき
美咲に殴られた所が
痛くなる。
さっき
痛くなかったのは
鹿野のおかげかな?
しばらくすると
足まで
震えだす………
何で………?
今更…
あたしは
震える足を
引きずりながら
階段を降りていった
ゆっくり階段を
降りていくと
下には咲がいた。
「あれ…?咲?」
「めい~。やっぱここだったの?」
「何で?」
「だってめいが授業中どっかいくの見えたからぁ…」
「あはは…そっか…。てか、今も授業中だしっ…」
あたしは
咲と
お互いの教室に
向かう。
………美咲―
居るんだろうな…。
俊一も…
「はいんないの?」
「…あ」
「あたしは自分の教室もどるよ?」
「うん…ありがとう」
…ガラ
「さっき……何しに出て行ったんだ?」
数学の先生が
あたしを
鋭い表情で見る。
「…別に。」
あたしは
先生をかわして
席についた。
そんな
あたしを見て
先生は
あきれた表情を
していた。
そんな先生を
ムシして
髪の毛を
いじっている
あたしの机に
小さな紙がのった。
「…は?」
唖然とするあたし。
前を見ると
俊一があたしを
見ていた。
…俊一からなの?
状況が
よく分からない中。
あたしは
ゆっくりと
手紙を開いていく。
あたしは
手紙に書いてあった
内容を疑った。
……明日。鹿野に告白されるで………
嘘…
でしょ???
何で……………
俊一は
真剣な顔で
あたしを見て
頷いた。
―ホント?…
って聞いたら
何かが壊れそうで…
ホントって
言われたら
怖くて。
聞けなかったんだ。
って…
なんで……
俊一が
そんな事言うの…?
あたしは
紙を
ぐちゃぐちゃにして
窓に向かって
思いっきり投げた。
そのあとの事は
あんまり
覚えてない。
「めいちゃぁんっ」
「…はいっ!」
あたしは
気がつくと
部室にいた。
「どぅしたの?」
鹿野先輩が
あたしの顔を
心配そうに見つめる。
「…あ。鹿野先輩……大丈夫ですっ。」
「―そうかな?……あんまりムリしたらダメだよっ?」
「…はいっ」
鹿野先輩は
実は
鹿野の姉ちゃんなんだ。
あたしの部活は
吹奏楽で
鹿野先輩は
同じ楽器の
先輩なんだ。
あたしは
鹿野先輩が
アルトサックスを
吹いている姿に
一目惚れして
入部したんだ。
鹿野先輩は
あたしの憧れで
…すごく優しくて
可愛くて
おもしろくて。
かっこいいんだ。
それに……
鹿野によく似てる。
やっぱ…
兄弟なんだな…
けど……
今日1日で
いろいろありすぎて
よくわかんないよ。
「め―いちゃぁん今日さぁ…みか休みなんだよねっ」
「そうなんですか?みか先輩…休みなんですか…」
「だからさっ一緒に帰ろっ」
「…あ。はいっ!」
「めいちゃぁんはさ?」
「何ですか?」
「………彼氏とかはいないの?」
「…いませんよ?」
「あははっ。そっか」
「鹿野先輩はいるんですか?」
「いないよ~。」
「……あれ?姉ちゃん?…めいもいんじゃん。」
「…鹿野?」
振り向くと
あたしの後ろには
鹿野がいた。
「あっ!!慎っ。陸部早く終わったの?」
「うん。先生の用事で…。」
鹿野は
部活のカバンを
重そうに
持ち上げた。
そんな姿に
少し心が揺れる。
まだ
あの手紙を
信じている。
あたしがいたから…
「そぅいえばさぁ。めいちゃんと慎って同い年だよね?」
「……はいっ。」
鹿野先輩は
ゆっくりと
あたしを見る。
「鹿野先輩……?」
「つき合ったりとかは…ないの?」
「………えっ?」
いきなりの
先輩の質問に
心がさらに揺れる。
「…ねぇよ。」
あたしより先に
鹿野が言った。
「ふぅん。そっか」
「鹿野先輩……もし、鹿野と吹部の後輩がつき合ったらどうしますか……?」
鹿野が驚いた表情で
あたしを見る。
「…ちょ。めいっ!!何…質問してんだよっ!!!」
「うーん。どぅなんだろうね。わかんないや………」
「あっ。あたし着いたんで帰ります。さようなら。」
「めいちゃぁんばいばい」
あたしは
自分の家に
走って行った。
さっき
何で鹿野先輩に
あんな事
聞いたのか……
自分でも
分からなかった。
最近…
どうしたんだろ?
あたし―
「―慎…明日。言うんでしょ?」
「―てか何で姉ちゃんが知ってんの?」
「うん。見てたら分かるから♪」
「…はぁ。」
「がんばってね。まぁ。めいちゃぁんもいろいろあるみたいだけどね…わかってあげなさいよ?」
「―わかってるって」
あたしは
眠れたのかな…?
「めいっ!早くっ遅刻するよっ!」
「えっ…もぅ朝なの?」
あたしはケータイを
ゆっくり開く。
画面を見ると
もぅ時間は
8時を過ぎていた。
「…やば!」
あたしは
急いで
用意をすませて
学校まで走った。
学校が
見えかかった時…
誰かが
あたしを呼んだ。
「櫻井っ」
「……えっ?」
振り返ると
あたしに
手を
ふっている人がいる。
「―岡本…?」
「…よぉ。」
「うそっ!…何でいんの?てか、なにしてんの?あたしたち…余裕で遅刻だよっ?―行こうよ…」
「嫌だ。」
「は?何で―」
「―俺。櫻井をずっと……待ってたから…」
「そんな…何で?」
「…伝えたかったから…。」
「何を…?」
「櫻井は…信じてないだろ?…俺が…櫻井を好きって事…」
「…な。そんな事…信じるわけないじゃん。」
「………やっぱ信じてくんないんだな。」
少しずつ…
淋しい表情に
変わっていく
俊一の顔…
あたしは
俊一の顔が
見てられなくなって
足元に
視線を落とした。
「…ホントなの?」
「うん。―櫻井さ…今日。コクられるからさ…最後に伝えたかった。」
「岡本…あたしね…。入学してからずっと岡本の事…好きだった。…あたしの事…心配してくれた時もすごく嬉しかった。これからもあたしはずっと岡本の事が好きなんだって思ってた…でも鹿野といるとあたし自身が分からなくなったの…」
「うん。わかってる。だから今…コクったんだ。もぅ櫻井が迷わないように…。……木下の事は…もう…心配しなくていいから…」
………あたしたち…
ずっと
すれ違っていただけだった。
もしも
あたしと俊一の
運命が
交わっていたら…
あたしたちは
毎日を
幸せに過ごしていたのかな?
ホントは
あたしと俊一は
結ばれる運命だったのかも知れない。
…未来は
あたしが変えたんだ。
「…うん。ありがとうっ。」
「じゃ…行こっか?」
あたしたちは
学校に
向かって走り出した。
授業中の廊下は
すごく
静かで
少し不気味だ。
―ガラ
「遅い。遅刻だぞ!!」
「すいません。寝坊しました。」
「早く座れよ!!?」
「「はぁい。」」
あたしと俊一は
席に向かう。
美咲の
視線を感じる。
視線の方を見ると
美咲が
鋭い表情で
あたしと
俊一を睨む。
あたしは
勇気を振り絞って
美咲に話しかけた。
「―お…おはよ」
「………てかさ。おはよじゃないしっ。―はゃく座れば?」
「…うん。」
あたしは
授業を
ちゃんと…
うけてたのかな?
あんまり
覚えてないや…。
「…あ。」
時計を見ると
鹿野との
約束の時間が
来ていた。
……どうしよ。
あたし…
行っていいよね?
―ガタンっ!
あたしの机が
勢いよく倒れる。
…あたしは
無意識に
立ち上がって、
ドアの所に
走って行っていた。
「櫻井っ!」
「岡本………」
俊一が
あたしを呼び止める。
クラスのみんなは
時間が
止まったかのように
静かで
ただ
あたしを
じっと見ていた。
「…ホントにいくん?」
「…うん。約束したからっ」
「…そっか。わかった。行ってこいよ…。―てか俺…めっちゃ恥ずかしいじゃんっ!!!」
「―岡本……。ありがとうっ。
」
先生は
話の内容が
よく分からないのか
口をポカーンと
あけていた。
そして
いきなり
あいていた口を
閉めて
あたしを怒鳴った。
「―櫻井っ!!!おまえ…!!!また…抜けだす気か!!!」
「…先生っ。行かせて………今、行かないと意味ないんです!!アイツが…待ってるんですっ!!」
「…はぁ。今日だけだぞ…」
「ありがとうございますっ!」
あたしは
廊下を
必死に走った。
―パタン!
あたしが
屋上に着くと
鹿野が
座って待っていた。
「…遅くなってごめん。
」
「ううん。俺も今来たとこだよっ?」
「…そっか。」
優しい
そよ風が
あたしと
鹿野を包む。
「話なんだけどさ…」
「…うん。」
あたしの鼓動が
ゆっくりと
加速していく…。
「俺さ…めいが…好きなんだっ…!!!!」
「えっ……!!!?」
思わず
下を向いてしまう。
あたしの体は
時間が
止まったかのように
動けないでいた。
指だって…
小刻みに震えていた
鹿野の視線が…
―あつい。
前…
向けないや……
……まさか…
俊一の言った事が
当たるなんて………
「―…めいっ。こっち向いて?」
恐る恐る…
…ゆっくりと
鹿野の方に向く
あたし。
「………」
「―…返事。早く聞かせて…?」
あたしが
一番………
大切にしたい人は
……誰?
一番……
好きな人は誰?
頭に浮かぶのは
あの人だけ。
あたし…
まだ…
あの人の事が
好きだった。
第4話
始まった時間
だから…
ちゃんと
伝えなきゃって…
ちゃんと
伝えようって
思ったよ…
この時の
あたしの気持ち…
キミに届いたかな?
「…ごめん。あたし…好きな人がいるから…」
「…それでもいいから…俺と付き合って?」
「でも……そうしたら……鹿野が傷つくから―」
あたしの
震える手が
鹿野の手によって
引っ張られる…。
抱き寄せられる体。
激しい鼓動…
あたしたちを
包む風…
優しい太陽の光
「…それでもいいっ!!!!」
「…………」
あたしは
何もいえなくて…
ただ
鹿野の胸の中に
頭を埋めていた。
「…めい?」
「…うん。それでもいいなら…付き合おぅ?」
「…マジ?」
「…うん。マジだよっ?」
鹿野があたしを
…抱きしめる力が
だんだん
強くなっていく。
「…ありがとめい…めっちゃ好きやで?」
「…うん。ありがと…」
この日…
あたしと鹿野は
始まった…。
ここから
あたしたちの時間が
スタートしたんだ。
あたしたちは
これからも
同じ時間を
刻んでいくって
思ってた。
ゆっくりと
あたしたちの距離が
広がっていく…。
「…どぅする?教室まで戻る?」
「…うん。」
あたしと鹿野は
ゆっくりと
屋上の階段を
降りていった。
廊下に響いていく…
足音が
2人しか
居ない事を証明する。
そして
すぐに
教室の前まで
ついてしまった。
…でも
一向に
教室に
入ろうとしない
あたしを見て
鹿野が言った。
「…俺。手紙書くわ!!」
「…えっ?」
「なんかさ…。書きたいし。めいと手紙したいからっ!!!!」
「……っ。―うん。ありがとっ…。」
「じゃ…書くからっ。早く入れよ?」
「…うん。ばいばいっ」
「…じゃあな!!」
あたしは
しばらく
鹿野の背中を
見ていた。
…優しくて
いつも―
助けてくれた鹿野…
あたしは
鹿野を選んで
間違いじゃ、
なかったよね…?
あたしは
教室のドアを
勢いよく開けた。
「…………」
ただ
無言の
空気が流れる。
席に着くと
真っ先に
横の列の
彩から手紙が
まわって来た。
「………ん?」
内容は……
さっきの
抜けだした時
何してたの…?
そういう内容が
書いてあった。
さっきの事を
思い出して
ペンを
すらすら走らせる。
そして
彩の席に
手紙を投げた。
ふわりと
浮かぶ手紙…。
彩は
その手紙を見た後…
にやけて
あたしを見た。
それから
彩の事情聴取が
始まった。
鹿野………。
今日が
あたしたちの
記念日。
あたし…
これからもずっと
鹿野のそばに
いたいよ…。
ずっと…
一緒にいれるかな…?
あたしは
彩と
ずっと
しゃべっていた。
彩は
少し羨ましそうに
あたしの話を
聞いていた。
あたし…
この日の事…
いまでも
ちゃんと
覚えてるよ…?
あたしは………
絶対に、
忘れないよ…。
たとえ…。
鹿野が
忘れたとしても…
あたしは
忘れないよ。
…キーンコーン
やっと
授業が終わった。
あたしは
春とナナと
彩と千夏と
あゆと
しゃべっていた。
「櫻井っ。」
「…えっ?」
「―コレ鹿野ってぃから」
ホントに
かいてくれたんだ?
「うん。ありがと。」
あたしは
上野から
手紙をもらった。
表には
ちゃんと
鹿野の字で
あたしの名前が
書いてあった。
「…てか。櫻井って鹿野ってぃと付き合ってんの?」
「…えっ。―あ…。……うん…。」
「…あっはやっぱり?―鹿野ってぃさ様子明らかに違うから分かりやすいんだよねっ……まぁ。がんばってよ?」
上野は
あたしの肩を
ぽんっと叩いて
笑った。
「…あはは。そうなんだ?上野ありがと」
「ん。じゃな」
上野が
教室を出た後
自然とあたしに
視線が集まった。
「ねー何て書いてあんの?」
「うちも気になるっ」
みんなが
一斉に言った。
更に
周りの視線が
あたしに
集まってくる。
そんな状況だから
あたしも
余計に
内容が
気になってしまう。
「…あ。待って?開けるから………」
あたしは丁寧に
手紙を開いていく。
開いていくと
うっすらうつる
鹿野の字。
『めいへ』
『今日は…無理やりみたいでごめん。また今度、よかったらどっか…遊びに行きたいな』
『鹿野より』
「…………へぇ。」
「二組の鹿野って…見た目によらず優しいんだね…?なんかさ…意外だったし。」
あゆが
呟くように言った。
「…うん。わかるもっと強引な人っていうイメージあったし…。」
春も
あゆの意見に
のった。
そして
みんなも
納得したように
小さく頷く。
そんなに…
意外なのかな?
鹿野は…
誰にでも優しいよ?
そりゃ……
見た目は
ちょっとだけ……
チャラいと思うけど
―けど
優しいよ…?
「ってかそんな事よりさ…返事、書かないの?」
彩が
春とあゆの間から
顔を出していう。
「…返事かぁ。」
あたしは
ゆっくりと
ペンを走らせる。
『鹿野へ』
『別に無理やりじゃないよ?…うん。また今度、遊びに行こ』
『めい』
「…これでいいかな?」
「いいと思う」
みんなは
あたしの手紙を見て
納得して
頷いていた。
「ってかさ。」
さっきまで
頷いていた
みんなの視線が
千夏に集まる……。
「―どうやって渡すの?」
「あっ!!」
―考えてなかった。
…どうしょ?
さすがに
渡しに行くのは
恥ずかしいし…
わ―っ。
p(´⌒`q)
「じゃあさ。誰か、男子に頼んじゃえば?」
あゆがあたしに
提案した。
「だってさ…。鹿野も上野に頼んだじゃん?」
あゆの意見に
みんな賛成した。
「じゃ…誰に頼む?」
「うーん…」
「あたしは岡本がいいと思うなぁ。」
ナナが
岡本の名前を
上げた。
「何で…?」
みんなが
ナナに訪ねる。
みんな
びっくりしすぎて
思わず
ハモってしまう声。
「だってさ。岡本も陸部だし…仲良いかなって。」
「じゃ。岡本にしよっか。」
「…うん。」
―どうしょ。
こんな事…。
岡本に
頼んでいいのかなっ……?
岡本…。
嫌な顔
―しないかな?
あたしたちは
岡本の席に
移動する。
ちょうど
岡本が
席のまわりで
男子達と
しゃべっていた。
「…めいっ。がんばって」
ナナが
あたしを見て言う。
あたし達は
ゆっくりと
岡本の席に
近づいて行った。
あたしは
不安で
少しかすれた声で
俊一に話し掛けた。
「岡本…あのさコレ。鹿野に…………渡してくんない?」
「…えっ?鹿野に………?」
岡本は
少し顔を
曇らせながら
あたしを見て
一回、
笑ってから
手紙を持って
走って行った。
「…岡本。」
そんな
俊一を見て…
あたしの心の中には
罪悪感と後悔が
残った。
何も…
してない。
あたしは
悪くない。
そうやって
言えたら……。
どんなに
楽だろ………
あたしは
今日…………。
自分の事しか
考えてなかったせいで
あたしの事を
大切に
思ってくれた人を
あたしが………
傷つけてしまった。
あたしは
時々思うよ…。
どうして…
人って…
大切な人を
裏切ってまで
欲しいものが
あるんだろ………?
どうして
自分の事しか
考えてないんだろ…
「―あ…あた…し」
「え?」
あたしに
クラスにいる人
全員の視線が
集まった。
「めいっ。大丈夫……?」
ナナが
岡本の席を
ただ
見つめているだけの
あたしに駆け寄る。
「…どぅしょ…」
暖かい涙が
ゆっくりと
こぼれていく…。
「…あたし……最低だ……………。」
あたしの涙は
あたしから離れて
床に落ちた。
どんどん…
涙が
床に消えていく。
床には
涙の後が
うっすらと
残っていた。
「めい……」
彩が
あたしに
駆け寄って来た。
「…めいっ…追いかけなよっ!!!今なら…間に合うから……」
彩は
あたしの手を
引っ張って言う。
「……でも…」
あたしには…
追いかける理由も
追いかける資格も
無いよ…。
「…諦めんの?…諦めたら…何にも、始まんないよ!!!」
「…あたし。ちょっと行って来るっ…!!!」
「……ちょっ?」
彩の手を離し、
ナナ達を
かき分けていた。
…思わず
走り出していた
あたし。
瞳には
涙がたまって
視界が
ぼんやりとしていた。
あたしは
鹿野の教室を
覗きこんだ。
教室には
鹿野と俊一は
どこにもいなかった。
「…いない。」
あたしが
慎のクラスの
前にいると
咲に
声を掛けられた。
「めいっ……どうしたのっ?」
「咲っ」
「鹿野ってぃ…と何かあった?」
あたしの
表情を見て
咲が
心配そうに言う。
あたしは
咲を
安心させるために
涙を拭いて
笑った。
「ううん…。ちょっと違うんだ…また今度話すね。―鹿野どこに行ったの…?」
あたしが
笑ったら
咲も笑顔になった。
「分かんないけど…さっき岡本と一緒にどっか行ってたよ?」
「…えっ!岡本…と?」
「うん。そうだよ?」
「わかった。ありがとう…」
咲と
離れてからも
必死に
俊一と鹿野を
探した。
…けど。
ドコにも……
いなかった。
あたしが諦めて
歩いていると
誰かの怒鳴り声が
聞こえてきた。
「何で…お前が持ってんだよっ!!!?」
「は…?俺はめいに頼まれてんだよ!!」
…鹿野っ?
俊一も………。
何で……?
あたしは
思わず目を疑った。
「羨ましいんだろ?」
「はぁ?」
「お前さ…言ってたよな?」
「何をだよ…」
鹿野と俊一の声に
人がどんどん
集まって来る。
そして
ザワザワと
にぎわい始める。
あたしは
思わず
壁に隠れた。
だんだんと
鹿野と俊一の声が
大きくなっていた。
あたしは
壁の横から
顔を出して
様子を見ていた。
「―まだ諦めてないって……!!!!……雅人に諦めきれないって言ってたよな?」
「…………」
「どうなんだよ…!!!!」
「だったら…何だよ…!!!俺は…めいに協力したいだけなんだよっ…!!!!」
俊一が
肩を
大きく振りかぶって
鹿野を殴った。
…バシッ
鈍い音が
廊下に響く。
一気に静まる
まわりの声…。
鹿野は
倒れ込んで
頬を抑えていた。
「きゃ――っ…!!!」
またザワザワと
まわりが
騒がしくなる。
「…鹿野っ!!!」
あたしは
…何をしている…?
気づくと
あたしは
鹿野のところまで
走り出していた。
「…っ!!?めいっ?」
「大丈夫…?」
「あぁ…。」
「櫻井っ!!!!」
俊一が
あたしの手を
引っ張って
あたしを見る。
「…………。」
…俊一は
何を…考えてるの?
わかんない……。
「…何で…鹿野を殴ったの?」
「…俺の気持ちは考えてくれないんだ………?」
俊一は
あたしの手を
勢いよく
振り払った。
「岡本………?」
「櫻井さぁ…鈍感すぎっ。そんなに…すぐにさ…お前の事………諦めれるワケないじゃんっ―」
「………………」
そう言うと
俊一は
走り出して行った。
あたし…
また……………
傷つけてしまった。
ごめん……。
ごめんね。
俊一には
何回謝っても
足りないくらい
悪い事をしたと
思ってるよ。
…ごめんね。
「あ…」
鹿野の手が優しく
あたしの手を握る。
「…ごめんな。あんなトコ見せて…俺……めいは誰にも渡したくないからさ―」
「ううん…鹿野は悪くないよ…」
「ありがと…めい。」
「いいよ。鹿野―」
あたしの手を握る
鹿野の手が
更に強くなる。
「―あのさ…俺の事鹿野って呼ぶのやめて…?」
「え………」
「俺の事…下の名前で呼んで……?」
「慎…?」
騒ぎだす鼓動。
赤く染まるほっぺた
…熱い。
「ありがと。これからはさ…慎でいいから」
「うん…」
まわりの
ザワザワとした
雰囲気が
ちょっとずつ
変わり始めた。
人ごみから
クラスの麻里奈ちゃんを見つけた。
「あっ。めいじゃん。何―付き合ってるの???」
「えっ…と」
あたしは
どうしていいのか
分からなくて
戸惑っていると
慎が……
「…付き合ってるよっ?」
麻里奈ちゃんに
返した。
唖然とするあたしとまわりの人ごみ…
麻里奈ちゃんは
あたしを見て
にやけている。
「っ…。」
あたしの
ほっぺたは
更に
赤く染まる。
そうしていると
いきなり
慎が立ち上がった。
そして
あたしの腕を掴む。
また早くなる鼓動。
いつもより
近くに
感じられる慎。
「…めい。行きたいトコあるんだけど…行こう?」
「―うん。」
ちょっと走ったら
後ろから
麻里奈ちゃんらしき人の声が
廊下に響きわたった。
「めいっ。先生には保健室にいるって言っとくね~っ」
麻里奈ちゃんは
あたしと慎に
大きく手を降って
叫んだ。
「うん!ありがとう」
あたしは
慎と廊下を
ひたすら走った。
あたしと慎の隙間を
風が通り抜ける。
風にのって
花の匂いが流れてくる
「慎…どこいくの?」
「…え?」
慎とあたしの
足取りが止まる。
「…さっき行きたいトコあるって言ってたから…」
「―あれ、嘘。」
「…えっ?」
あたしの頭が
一瞬…
真っ白になった。
「だって…俺さ?めいと2人になりたかったから……嘘ついてごめんっ。」
「…………」
あたしは
何も言えなかった。
ただ
慎が
あたしを好きな事を
知っていて
けど…
あたしには
好きな人がいて
それでも
形だけで
付き合ってる……
そんな
あたしには
純粋な慎の気持ちに
なんて言っていいのか
分からなかった。
あたしは
慎を騙している。
そんな
事実が頭を駆け巡る。
慎は………
あたしと居て…
辛くないのかな?
あたしと居たら
逆に
慎を傷つけてるんじゃないのかな……
あたし…
慎の優しさに
甘えすぎてた。
慎の気持ちも
考えてなかった。
慎は
我慢して
あたしのワガママも
聞いてくれたのに…
あたし
やっぱり―
自分の事しか
考えてなかった…
「めい?」
心配そうに
慎が
あたしの顔を
覗き込む。
「…あっ。」
「やっぱ…いや?」
「ううん…。」
「……本当に?」
「本当だよ…?」
あたしは少しだけ
笑って見せた。
「そっか‥。」
「うん」
「じゃぁさ?ベンチ座って喋ろうよ。」
慎は
近くにあったベンチを
指差しながら言う。
「いいよ。ちょうど座りたかったんだ。」
ベンチに2人が座る
あたしは
何を喋っていいのか
よく分からなかった。
慎の
気持ちを
踏みにじった
あたしには
楽しむ資格なんて
無いと思ったから
あたしは
ずっと
黙っていた…
先に口を開いたのは
慎だった。
「めいはさ?」
「…うん?」
「……最近何かあった?」
「…ううん。特に何にもないよ。」
―心配してくれてるの………?
最近
あたしの様子が
おかしいから?
「何で?……何でそんな事きくの?」
「……最近のめい…顔が疲れてるからさ…」
「…え」
「…俺。本気で心配してんだよっ?だからさ…何かあったらちゃんと言って欲しい。相談のるから…」
「……………。うん」
慎の言葉が
あたしの胸に
突き刺さる。
締め付けられているような心…
苦しい………
「めい…俺の事、信用できない?」
「……違うよっ。」
「じゃぁ。言ってよ…」
「それは………言えないから…」
慎の顔が
一気に曇る。
慎は
ベンチから
立ち上がって
あたしに言った。
「…めいはさ…まだ俊一の事忘れてないよな…?」
「えっ…」
「分かるから…めいの事見てたら。」
「………………」
あたしは
何も言えなくて
ただ下を向いていた。
「けど…俺はそれでもめいが好きって気持ちは変わらないから。だから…俺の事は気にすんな…。俺はめいて付き合える事だけで幸せだからっ。」
「あたし……慎には悪いって思ったから俊一の事……言わないって決めてた。―言わなくてごめんなさい。けど……あたし、慎の事好きになりたい………」
「無理しなくていいから…」
慎が
呟くように
あたしに言った。
「……無理なんか、してない。」
「え…」
「本当にそう思ってるんだよ……?」
「…嬉しいよ。」
「……………うん」
「俺、ずっと―待ってるから……」
「―うん。待ってて…」
「めい?」
慎が
あたしの腕を掴む。
次第に近づく
2人の距離………
慎は
ゆっくり
あたしを抱きしめた
あたしと
慎は
感情が
押さえきれなくなって
2人
抱きしめあいながら
泣いていた。
そんな
あたしと
慎の頭の上には
怪しい雲があって
ポツポツと
通り雨が降っていた
雨に濡れる髪
水が滴る慎の腕
濡れて重くなる制服
第3話
先輩の視線
どれくらい
たったんだろう?
気がつくと
あたしと慎は
まだ抱きしめあっていた
「…俺………辛いよ…めいが他の奴みてんのも…付き合えねぇのも……辛いよ?」
「…ごめんっ。」
「めいは謝らなくていいからっ…俺は、めいと付き合えるだけで幸せなんだから…」
「慎…」
あたしの中で
たまっていた物が
勢いよく…
溢れ出す。
溢れ出したら
止まらなくて…
あたしは
慎の胸に
あたしの顔を埋めた。
泣き続けていたあたしは
後悔していた。
自然と
溢れてくる涙。
慎の
優しい匂いが
あたしを
落ち着かせる。
慎…
あたし…
ちゃんと
慎との約束…
守れたよね?
ちゃんと…
守れたつもりだよ?
そして…
今も
気持ちは変わってないよ…。慎は…………
気持ち…
変わってない?
あたしは
―ずっと、
待っていたよ…
これからも
ずっと…
「慎…」
あたしが
慎の胸の中から
顔を出す
「うん?」
「こんな空気にしてごめんっ…あたし………」
「別にいいよ…こんな空気になったけど…お互いに、本音言えたじゃん?俺……嬉しいよ」
「慎。…うん。あたし、慎の不安もわかったから…」
「めい…記念にさ?プリクラとりにいかね?」
「…マジ?プリクラ?」
「………うん」
慎は
あたしから離れて
照れた顔で言う。
……かわいい。
「…あたし、プリクラめっちゃ好きなんだっ。」
「…そっか!!じゃ、今からいこっ」
「何で行くの?」
「俺、チャリ通だから…後ろ…乗る?」
「うん。」
あたしたちは
授業中の学校を
眺めながら
学校の
近くのコンビニに
来た。
「ここに止めてんの?」
「お―」
慎は鍵を取り出して
チャリの鍵を開ける。
カシャンっ
勢いよく鍵が開く。
慎がサドルに
腰を掛ける。
「乗って?」
「……うん」
ゆっくりと
後ろに乗るあたし…
「乗った?」
「うん…」
ゆっくりと進む
自転車。
………重くないかな?
「…重くないかな…?」
「うん。軽いよ?」
「良かったぁ。」
慎の言葉で
いっきに
不安が取り除かれる。
慎が
そんな
あたしの安心した顔を
見て笑った
そして
さっきみたいに
ちょっと笑顔で
自転車を
漕いで行った。
……背中…
やっぱり
あたしより大きいな…
そんな事を
考えながら
慎の背中に
もたれてみる…
一瞬だけ
慎が反応して
慎の体がビクっと動いた。
あたしは
慎の腰に手を回した。
「……めい?」
慎が少しだけ
振り返る。
「慎……」
「…………」
2人が無言になる。
聞こえるのは
慎が漕いでいる
自転車の音だけ…
「…あははっ」
あたしと慎は
笑いあった……
照れくさそうな
慎の表情…
あたしは
離れたくなくて
ずっと
慎にもたれていた。
しばらく
慎にもたれていると
目の前には
地元のショッピングモールがあった。
「めい。着いたぁ。」
「…うん。」
あたしは
もう少しだけ
このままで
いたかったけど
慎と
プリクラを撮るって
決めたから
仕方なく…
自転車から降りて
慎から離れた。
慎は
駐輪場に
自転車を止めて
あたしの手を握った。
「いこっ!!!」
慎が
あたしの手を優しく
握ったまま
走り出す。
「―えっ!!?」
唖然として
走らされるあたし。
「慎っ!!?…走らなくても………はぁ―はぁ………プリクラ撮れるよ…?」
「わかってるよ。」
「じゃあ…はぁ………何で走るの?」
あたしは
すぐ疲れて走るのを
止めてしまった。
「だって俺。楽しみだから。早く撮りたくて仕方ないし………」
「慎…」
「意外かも知んないけどさ…俺、彼女とプリクラなんて…初めてだし………とにかく。楽しみだから。」
「…あたしも初めてだしっ。彼氏とプリクラ撮るの…。」
「えっ!!意外っ」
「悪いっ?」
「ううん。てか…逆に嬉しい。」
「何で……?」
「だってさ…めいの初めてが俺だもん。嬉しいに決まってんじゃん!?」
………かわいい。
あたしは
だんだん……
いろんな
慎を見て
慎を好きになって
きていた。
「あ。」
そんな話を
しているうちに
いつの間にか
ゲーセンに
ついていたあたしたち
ゲーセンには
平日で
まだ
学校の時間だからか
人は全然いなかった。
「慎―。どれのプリ機で撮る?」
あたしは
たくさんある
プリ機を指差して
慎に言った。
「ん―。どれでもいいよ?…めいが決めて―。」
「ん……。あたしは…アレがいいっ。」
あたしは
慎と手を繋いだまま
プリ機のところまで
歩いて行った。
「…久しぶり何だけどっ………」
あたしと
慎は
お金を入れて
準備をした。
「慎…どんな感じで撮る?」
「ん。とりあえずピース?」
カメラの
フラッシュが
眩しいくらいに光る。
「あははっ。どこ見てんのコレっ。」
「…えーっ!?」
そんな感じで
プリクラを
撮っていると
ついに最後の一枚になっていた。
さっきみたいに
ピースをしている
あたしの肩を
慎がいきなり
抱き寄せた。
「…!!?」
慎の手によって
あたしの顔が
慎の顔の方に
向けられる。
「…………」
『3』
プリクラの音声が
響く。
『2』
ゆっくりと
近づく2人の距離。
『1』
…カシャ
シャッターと同時に
あたしは初めて
キスをした。
「…えっ?」
あんまりにも
突然過ぎて
何が何だか……
よく分からなくなる
「…いや…だった。よな………?」
慎が
申し訳なさそうに
言った。
「…ううん…。びっくりしただけだよ…!?」
「……そっか。なんかしたくなってさ……」
「…うん。…いいよ。」
あたしたちの間に
重い空気が流れる。
デコっている
あたしを
慎は
ずっと見つめていた。
「………」
初めてだった。
けど。
君だったから
あたしは嬉しかったんだよ…?
「…慎。あのさ…?」
あたしは
慎に
分かりかけてきた
この気持ちを
伝えようとした。
「何……?」
「あたしは…」
…カコン。
「あ…」
あたしが
伝えようとした瞬間
プリクラが
勢いよく出てきた。
「…あ。プリクラ出てきたねっ。切りにいこっか?」
「…おぅ。てかいま何言おうとしてたん?」
「ううん…やっぱりいいっ。」
慎は
不思議そうな顔をして
笑ってから
あたしの頭に
手を乗せて
クシャクシャと
撫でた。
「じゃぁ。また今度聞かしてな?」
「うん。いいよ?」
あたしたちは
また
手を繋いだ。
手を繋いで
近くのファミレスに入った。
あたしたちは
お互いに
向かい合って座る。
「ご注文は、お決まりでしょうか?」
定員が
営業スマイルで
あたしたちに
話し掛ける
「あたしは…ドリンクバーと………チョコレートパフェで」
「俺は…ドリンクバーと…ドリアで」
「はい。」
定員が
厨房に消えた後
あたしたちは
ジュースをのみながら
話していた。
「めい―っ?めっちゃ、気になるんだけどっ…」
「何が?」
「さっきめいが言おうとしてた事。」
「えっ。あ……アレねっ?」
「何言おうとしてたん?」
慎が真剣な表情で
あたしを
じっと見つめる。
あたしは
慎の視線に勝てず
下を向いた。
………決めた。
あたし言うよ?
例え………
伝えて…
あたしが
壊れてしまっても…
あたしは
キミに伝えたいって
思いました。
………あたしの
気持ち…
この時に
ちゃんと…
届いてたのかな?
「分かったからっ……言います!言う…言うからっ」
あたしは
覚悟を決めた。
「………あたしねっ?」
慎の視線が
更に強くなる
「気付いたら…あたし、…………慎の事好きになってた……」
「……………」
慎は
あたしを驚いた顔で
見つめていた。
あたしは
下を向いて
騒がしい鼓動を
落ち着かせようと
していた。
震えだすあたしの指
「めい?」
「……ん。」
「…俺……不安だった。めいが俺の事好きじゃないって分かってんのに…無理やり付き合わせて……いつか、めいが離れていきそうで……―俺、怖かった。けど。めいが俺の事好きになってくれて嬉しいよ。―ありがとう。」
「……慎。」
「今日が、本当の俺達の記念日だなっ。」
慎が
手で頭を掻いて
照れながら言った。
慎と目が合う。
笑い合うあたしたち。
「…6月…13日…今日があたしたちの記念日だね。」
あたしも
少し照れながら
慎に言った。
「めい。」
「うん?」
「これからもずっと一緒にいようなっ?」
「…うん。ずっと一緒だよ?」
「分かってるって」
あたしは
ジュースを
飲みながら
プリクラを切る。
この時のあたしは
これからの
―運命を予測していただろうか。
分かるはずもなかった。
今…
あたしは幸せ過ぎて
何も考えられなかったんだから…
「はい。プリクラ切れたよ」
あたしは慎に
切ったばかりの
プリクラを渡した。
「ありがと。」
「慎?プリクラさぁ……ケータイに貼ろ?」
「俺もそう言おうと思ってたっ」
慎が
あたしを見て笑う。
あたしは
その笑顔に
ときめいてしまう。
「貼ろうぜ」
「うん。」
あたしは
しばらくの間
どの
プリクラを貼ろうか
悩んでいた。
慎はすぐにプリクラを貼ってジュースを飲んでいた。
「……まだ決まんねーの?」
「うん…悩んじゃって………」
「コレでいいじゃん?」
慎は
一枚のプリクラを
あたしの
ケータイに貼った。
「どのプリクラ貼ったの?」
「見てみ」
あたしは自分のケータイを見る。
「ちょ。慎……コレ貼るのっ…!!?」
慎に
貼られたプリクラは
あたしがあえて避けていたCHU-プリだった。
「恥ずかしいよぉっ」
「大丈夫だって俺も同じの貼ってるから」
「…うん。」
あたし………
嬉しかったんだ。
キミと同じ物を
持っている事が…
けど…
素直に言えないよ…
「これからどうする?」
「どうしよぅっか」
「あ。」
「めい?」
「あたし…行きたい所ある!」
「ドコ?」
「すっごく景色がキレイなんだよっ!!!―いつか彼氏が出来たら……あたし、行ってみたいって思ってたんだ。」
「よっしゃ。いこっ!!」
慎は飲んでいたジュースを置いて
あたしの腕を掴んだ
「えっ。」
あたしたちは
店を出て
自転車に乗った。
「めいっ。方向どっち?」
「えっと………あたしん家の方向!!!」
「わかった。」
慎は自転車を
漕ぎ始める
風がふわりと
すり抜ける。
しばらくして
自転車が
いきなり止まった。
「慎…?」
慎はボーっと何かを見つめていた。
あたしは
慎に掴まりながら
前を覗き込んだ。
「……慎。」
……あたし。
慎の事…
信じてたよ。
なのに…
なんで?
あたし達の
目の前には
部活帰りの山内梨沙がいた。
梨沙は
あたしと慎の
様子を見て
苦笑いをした。
山内梨沙は…
慎と
一時だけ
付き合っていた。
噂で
聞いただけだった。
だけど
今確信に変わった。
慎は
あたしを一回見た。
張り裂けそうになるあたしの胸……
苦しくて
苦しくて
辛かった……
山内梨沙が
あたしに駆け寄る。
「めいちゃんっ★」
「えっ?」
「ちょっと話したい事あるんやけどっ★来てくれる?」
あたしは
動揺を隠せなかった。
山内梨沙とは
話すのは初めてだし
何を
聞かされるのかが
不安だった。
けど…
あたしも
山内梨沙に聞きたい事があった。
今の慎との関係。
今の
山内梨沙の気持ち
すごく
知りたかった。
「いいよ。話そう。」
「んじゃ慎。借りていく!」
「めい…」
慎は心配そうに
あたしを見ている。
あたしは
慎を
安心させるために
笑顔で手を振った。
「終わったら帰ってくるから…ここにいて」
「…おぅ。」
慎は少しだけ
安心した顔で
あたしに微笑んだ。
慎に微笑み返すと
あたしと山内梨沙は
ゆっくりと
慎に背を向けて
歩いていった。
しばらく
歩いていくと
小さな公園が
目の前に見えた。
「座ろっか?」
山内梨沙が
ブランコに
駆け寄って言う。
「そうだね…」
あたしは
ブランコに座る。
「…梨沙から話してもいいかな?」
「いいよ。」
………絶対。
聞かれるよね…?
慎の事…
あたしは
震える手を
握り締めていた。
「梨沙と……慎の事知ってるよね…?」
山内梨沙は
気まずそうな顔をしてあたしを見る。
「知ってるよ……」
「そっか……。」
やっぱり…
前に
山内梨沙と慎が
付き合ってたのは…
本当だったんだ。
「めいちゃんは…慎の事どう思ってるの?」
「…あたしは、慎の事が好きだよっ…」
「…やっぱり。」
「えっ。」
「慎の事…梨沙…まだ好きだからね…。」
「………」
「絶対。奪ってみせるから……覚悟してて…」
そう言うと
山内梨沙は
公園から
去っていった
………絶対奪ってみせるから………
あの…
山内梨沙の表情。
怖い。
すごく怖かった。
山内梨沙は
どこかに行ったのに
あたしの手は
まだ…
震えていた。
それは…
慎を
奪われる恐怖だった
あたしは
しばらく
自分を
落ち着かせてから
慎の居る場所まで
戻った。
「めい…」
「慎…」
慎を見ると
溢れ出してしまう涙
また
慎を奪われる恐怖が
よみがえる。
「…しん…っ」
あたしは
慎に駆け寄った。
慎はあたしを
抱き締めながら
あたしに
問いかける。
「―山内に何言われたん…!!??」
「……」
あたしは
何を慎に
言ったらいいのか
分からなくて
戸惑っていた。
「…もしかして……梨沙……付き合ってた事…めいに言った?」
慎の言葉が
あたしの胸に刺さる
聞きたくなかった
慎が
山内梨沙の事を
梨沙って
呼んでたこと
「聞いたよ…。慎……知ってる?梨沙ちゃんは……まだ慎の事…好きなんだって………」
「えっ?」
慎は
驚いた表情をした。
あたしは
慎から離れた。
嫌だった……。
山内梨沙と慎の事…
「ごめんっ。もぅ…あたし…………無理だよ…?―別れよぅ………?」
あたしは
涙を流しながら
慎に伝えた。
頬を流れる涙が
温かい。
ゆっくりと
同じ速さで
流れていく。
「…何で―」
「…だって……慎も―…まだ梨沙ちゃんの事が…好きなんでしょ?…」
あたしは
震える声で言った。
両手で
顔を抑えながら
涙を流していた。
「……は…?」
慎が
動揺して
あたしを見る。
「言わなくていいよ……わかってるから。」
あたしは
慎に背中を向けて
走り出した。
「めいっ!!!」
慎が
あたしを
追いかけてくる。
「来ないでっ」
あたしは
必死に
慎から逃げる。
だけど
陸上部の慎から
逃げる事は
できなかった。
どんどん
慎が
あたしに
近づいてくる。
「待てって…!!!!」
あたしの腕を掴む慎
あ。
………捕まった。
どぅしよ…。
「何で…俺が、梨沙の事が好きって…決めつけんの…?」
「……離して…」
「は………」
「離してっ!!!」
「話聞けって…」
あたしは
涙が溢れていくなか
壊れていた。
慎の腕をはらって
あたしは……
言っては
いけない事を
言っていた。
「めい…?」
「もぅ…慎なんか、信じられない。」
「…え」
「………一緒に居たくない。」
「だから…梨沙のは、違うって…」
慎は必死に
あたしに
説明していた。
だけど…
そんな慎の姿も
そんな慎の声も…
何も
あたしの心には
届いてなかった。
「ごめん…今は信じられない……―違う。信じたくない。
」
あたしは
慎に
そう言ってから
その場を
去った。
どれくらい
走ってきたのかな?
あたしは
気が付いたら
あの
夕日がキレイな
丘に居た。
今日は
曇っていて
あんまり
キレイな夕日は
見れなかった。
何で―
あんな事
言ったんだろ……
あたしは
何回も
何回も…
涙を流して
空を見上げた。
景色は変わり始めて
もぅ
真っ暗な空に
姿をかえていた。
夜空には
キレイに瞬く星。
流れていく星たち。
あたしの瞳には
眩しいくらいに
うつる星。
「櫻井…?」
空を見上げて
泣いて居ると
後ろから
誰かが
あたしを呼んだ。
「………!!?」
涙を拭いて
ゆっくり振り返る。
「あ。」
あたしの名前を
呼んだのは……
あたしの
目の前に居たのは…
上野だった。
「………上野…?何で居んの…?」
「居たらアカンの?」
「…そんな事…ないけど………」
あたしは
何とか
泣いている事が
上野に
バレないように
涙を抑えていた。
ラッキーな事に
もう
夜になっていたから
暗くて
周りがあんまり
見えなかった。
だけど…
意外に
あたしの考えは
甘かったんだ。
「…櫻井さぁ。泣いてる…やんな?」
いきなり
バレた……!!!!!
何でわかったの?隠してるはずなのに
あたしは
酷く動揺した。
「…やっぱり」
上野が
そんな
あたしを見て
笑った。
「…いいじゃん。いつあたしが泣いても……」
「別にいいけど。何で櫻井が泣いてんの?」
「え。」
「「………」」
お互いに
沈黙が続く。
上野があたしを
見つめている。
真剣な上野の表情。
キレイな瞳。
上野に
見つめられると
何だか
あたしは
上野に
見透かされたような
感じになる。
「それは……」
あたしは
上野の瞳から
目をそらした。
「…当ててやろっか?泣いてる理由。」
「……えっ」
「―櫻井さぁ…不安何だろ!?鹿野ってぃとの事。」
「………」
何で…
上野は
いつだって
あたしの気持ちが
手に取るように
分かるんだろう。
そういえば。
…小学校の時も
そうだった。
あたしが
上野に
相談してたら
さっきみたいに
よく
あたしの気持ちとか
思ってる事
当てられたっけ…
……懐かしいな。
「あたし……確かに不安なんだよ……」
「当たったんだ?」
「ううん。当たってないよ?……あたし…慎の事が不安だよ?それは当たってるだけど………」
「何?」
「あたしね…もう慎と終わらせる事にしたんだ。」
「……え!!?」
上野は
すごく驚いた表情で
あたしを見た
「…何で…?」
少しずつ
曇っていく
上野の表情。
締め付けられる
あたしの心。
「…あたし…今日聞いたんだ……」
思い出すと
頭に浮かんだ
梨沙ちゃんの顔。
梨沙ちゃんの言葉…
ちゃんと覚えてる。
『梨沙ちゃんは慎の事…まだ好きなの…?』
『梨沙はまだ好きだよ…。』
梨沙ちゃんは
あたしに
本当の気持ちを
伝えてくれた。
それは
本当に強い人しか
できない事だよ。
梨沙ちゃんは
本当に強い……
あたしは――
上野が
あたしの隣に
座って言った。
「何を…?」
「…………梨沙ちゃんって…まだ―慎の事好きなんだよ…?…」
「は…?」
「びっくりだよね!?…2人が付き合ってた事は知ってたけど…まさか……まだ…」
あたしの手が
震え始める…。
「櫻井…」
自然と溢れた涙が
頬を濡らす。
「……っ。」
「…でも、鹿野ってぃは…ちゃんと櫻井の事好きなんじゃなねぇの…?」
「…分かんない…」
「何で……」
「分かんないよ…。だって今日…梨沙ちゃんと会った時…梨沙って呼んだんだよ…!!?」
「………」
「慎が何を考えてるのか分かんないよ…」
あたしは泣き崩れた。
上野は隣で
優しく
あたしの頭を
撫でてくれた。
あたしは上野の
優しさに
包みこまれながら
静かに泣いた。
「…上野。」
「何?」
「あたし…明日、慎に伝える。…もう不安だから慎とはもう居られないって…」
「櫻井がそうしたいんだったらそうしたら?」
「…うん。」
「ありがとう。」
あたしは
少しだけ
上野の手を握った。
「櫻井?」
「…お願いだから…もうちょっとだけ……こうしてていい?」
あたしの
手の震えから
あたしの不安が
伝わったのか
上野は
あたしを
優しく見つめて
あたしの手を
握った。
「…別にいいけど。好きなだけ握ってていいから…」
「ありがと」
あたしは
涙をためた瞳で
夜空を見上げた。
あたしを見て
上野も
夜空を見上げた。
光輝く星達。
見つめていると
夜空に
一本の線が流れた。
「「あっ」」
流れ星は
あたし達の前から
一瞬で消えた。
「…知ってる?流れ星って誰の願いが叶うときに流れるんだよ?」
あたしは
涙を拭きながら
上野に問いかけた。
「…確かにそうかもな。…俺の願い事も叶いそうだし?」
「えっ?…上野の願い事って何?」
「あはは。絶対に教えないっ。」
「えーっ?」
「…しゃーねーなぁ。教えてやろっか?」
「やった。」
何故か離れる
あたし達の手……
「…俺の願い事は…」
「……」
「櫻井と……一生一緒にいる事だ。」
「……えっ……」
涙がピタリと
止まる。
「何で……」
「ずっと……俺に相談してくる櫻井が好きだった。…俺だけに見せる弱さが…守りたいって想わせてくれた。」
「………」
「だから…今すぐとは言わねーけど…俺と…付き合って欲しい。」
「………」
「…ごめんな。こんな時に言って…」
上野があたしの
頭を撫でる。
寂しそうな表情の
上野…
「……上野…あたし…恋愛感情か分からないけど…あたしは……上野と一緒に居たい。」
「え……?」
「あたし…上野と一緒に居る時…本当のあたしで居られるんだ。だから…あたしは……」
「櫻井っ…!!!」
「えっ?」
一瞬にして
あたしは
上野の腕の中に
抱き寄せられた。
「櫻井……ありがとう。…俺……すげぇ嬉しい……」
上野はそう言って
あたしを
強く抱きしめた。
重なり合う
あたしと上野の
鼓動…
熱くなる体温。
「あたし……ちゃんと言うよ……あたしの本音も…上野の事も…ちゃんと言うから……」
あたしは
上野の胸に
顔を埋めた。
そして
強く抱きしめた。
あたし達を
見ている星達は
どこか…
寂しそうだった。
あたしは…
気づいていなかった
この時
あたしと上野の事を
見ていた人が
いたなんて………
考えてすら
いなかった。
……まさか…
梨沙だったなんて。
寄りによって…
見ていたのが
梨沙だったなんて…
運命は…
残酷でした。
第4話
薄れていく過去。
しばらく
上野の胸に
顔を埋めていたら
聞き覚えのある声が
後ろから
聞こえた。
少し低い
怒ったような声。
「…めいちゃん。」
汗ばむあたしの手
あたしは
ゆっくりと
後ろを振り返った。
あたしの目の前にはやっぱり
あの人がいた。
……梨沙ちゃん。
「……あ。」
振るえる手の平。
汗ばむあたしの手
真っ白になっていく
頭の中…
「…は?何してんの?めいちゃん。」
更に低くなっていく
梨沙ちゃんの声。
「…梨沙ちゃんには関係ないよ。」
あたしは涙を拭いて
梨沙ちゃんに言った。
「は…!!!?」
梨沙ちゃんが
表情を変えて
睨んでくる。
どんどん
迫ってくる
梨沙ちゃん。
………怖い。
恐いよ…
あたしは
思わず
後ずさりしていた。
……やだ。
恐い……!!!!
来ないでっ……
気づけば
あたしと
梨沙ちゃんの距離が
ほぼ…
無くなっていた。
梨沙ちゃんに
胸ぐらを
掴まれかけた時
上野が
あたしと
梨沙ちゃんの間に
立ちはだかった。
「梨沙…!!!止めろよ。」
「は!!?意味分かんないし……何なの?何してんの!!!?」
「…俺らが、なんの話しててもいいだろ!?………どうせ、明日慎から聞かされるだろうし?」
「……何?」
梨沙ちゃんが
少し
おさまったように
上野に聞き返した。
「…明日。楽しみにしてろよ!?」
「は…」
梨沙ちゃんは
びっくりした表情で
上野を見て
『馬鹿らしい』
って言って
どこかに行った。
あたしは
ただ…
唖然としていた。
梨沙ちゃんに
おびえて
何も、
言いたいことを
言えなかった。
あたしって……
やっぱり
弱い人間だな。
こういう時に
つくづく
思わせられる。
そうやって
思わせられるから
やっぱり、
あたしは弱いんだ。
「櫻井っ?」
「えっ?」
しばらく、
その場に
呆然としていると
上野が
暖かいココアを
買ってきてくれた。
「ん。ココア。」
「…6月なのにココア?季節違うじゃん。」
「いいじゃん!6月の夜は寒いから!ちょっと冷えんのっ」
「え―っ」
あたしは
一口、
ココアを飲んだ。
「…やっぱり季節はずれだ。ワラ」
あたしは
上野にクスクスと
笑う。
上野も
あたしを見て
笑顔になる。
そんな
時間が
幸せに感じた。
「………」
無言になったとき
上野は
もう一度
あたしを見て
笑顔になった。
こんな時間が
ずっと……
続いて欲しいって思った。
こんな事
言っても……
キミは信じてくれないんでしょ?
ホントだよ?
ホント…
あたしには
この夜が
忘れられない夜に
なった。
明日……
例え
どんな結末に
なったとしても
あたし
この夜の事
忘れないから。
そうやって
あたしは夜…
泣きながら
ずっと
自分に
言い聞かせていた。
そうしていると
あっという間に
朝が来た。
カーテンの隙間から
眩しいくらいに
差し込んでくる
太陽の光。
あたしは
いつものように
制服に身を包んで
学校に向かった。
あたしは
重い足取りで
階段をゆっくりと
上がっていく。
教室に入ると
何故か
教室には
誰もいなかった。
あたしは
自分の席に座って
窓を眺めた。
しばらく
外を眺めていると
ナナやひより達が
来ていた。
「おはよ。めい早いね?」
「うん。ちょっとね。」
ひより達と
話していると
上野が来た。
「櫻井っ♪」
「上野っ…!!!」
「今日どおすんの?」
「とりあえず…昼休みにメールで呼び出す。…それから、ちゃんと言うよ。」
あたしの手が
また…
慎の事を思い出すと
震えてくる。
そんな
あたしを見て
上野は
心配になったのか
あたしの手を
握って
こう言った。
「…鹿野ってぃに言う時、言って?」
「えっ?」
「…俺…心配だから。ちゃんと見届けて…鹿野ってぃに俺の気持ち言いたい。……櫻井の事も……」
「……うん。」
あたしは
この時
思わず
涙が
溢れそうになった。
…上野の優しさが
弱った
あたしの心に
染み込んで………
暖かい涙が
一粒だけ流れた。
上野は
そんなあたしの涙を
指で拾って
笑った。
「…泣き虫っ♪」
「………」
「ばーかっ!!!」
キーンコーン。
そんな
あたし達の会話を
裂くように
チャイムが響く。
「あ。」
残念そうな顔で
あたしを見る
上野。
「…俺。戻るわ!!………行く時メールしろよ?絶対行くから…」
「…うん。ありがとう」
あたしは
笑顔で
上野に手を振った。
「じゃな!」
上野は
自分のクラスに
戻って行った。
「はぁ。」
言うんだよね…
頑張らなきゃ……
そう考えていると
あっという間に
授業が
進んでいく。
あと
1時間で
慎に言わないと…
あたしは
机の中でゆっくりと
ケータイを
開いた。
『慎…会って話したい。…昼休みに屋上に来て―めい。』
メールを送ると
すぐに
返事が
かえって来た。
『…わかった。昼休みに行くから。』
あたしは
慎からのメールを
見て
溜め息をついた。
不安で仕方なかった
あたしは
上野に言われた通り
上野にメールした。
『さっき…慎に言ったよ…。』
上野のメールも
すぐにかえって来る
『そっか。…昼休み…ちゃんと自分の気持ち言えよ?…もし、なんかあっても俺がいるから…大丈夫だ。』
『ありがとう。』
『んじゃ。昼休みにまた櫻井の所行くわぁ!!』
あたしは
しばらくの間。
ケータイを
ただ、
ずっと
見つめていた。
ケータイを
見つめていた
あたしに
誰かが話し掛ける。
「…なんかあった?」
「…えっ。」
あたしは慌てて、
ケータイを
机の中で閉じて
隠してから
前を向いた。
「…話聞くけど?」
「美咲。」
あたしの
目の前には
あたしを
心配そうに
見つめている
美咲がいた。
「ううん。大丈夫。ありがとう。」
あたしは
最近
美咲と
よく話すんだ。
美咲とは
いろいろあったけど
鹿野と
付き合い始めてから
お互いに
相談しあうようになっていた。
「…だったらいいけど……あんまり、溜めたらアカンで?」
美咲は
あたしにそう言って
ガムを一つ渡した。
「コレ……好きでしょ!?……食べて元気出してよっ♪」
ガムを渡すと
美咲は
前を向き直して
授業に集中していた
あたしは
美咲からもらった
ガムを口に入れた。
「……甘い。」
あたしは
ガムを噛んで
呟いた。
………ありがとう。
美咲。
―美咲には
どれだけ
助けられたか
分からないよ。
美咲に
感謝していると
授業が
終わっていた。
「あっ。行かなきゃ…」
あたしが
廊下に
出ようとした時…
ちょうど
上野が出て来た。
「櫻井っ。」
「上野っ。」
「………行こっか?」
「うん」
あたしは
小さく頷いて、
上野の後ろを
ゆっくり
ついて行った。
屋上に
近づくにつれて
あたしの
不安は
どんどん
増えていった。
「…開けるぞ。」
上野が
屋上のドアを
前にして
あたしに訪ねた。
「……うん。」
―ガチャ…
重い屋上の扉が
開く。
「遅かったな…めい。―雅人も……。」
扉を開けると
座って待っている
慎がいた。
「―あ………。」
「…めい。―話って、………何?」
慎は
いつもと違う
真面目な表情で
あたしと
上野を見た。
慎に
見られた瞬間。
一瞬だけ
あたしの心に
針のような物が
突き刺さった。
あたしの手には
ひや汗がにじむ。
「………」
「櫻井っ……」
「めい……何…?」
「…ちゃんと…言えよ?大丈夫だから」
「うん……」
あたしは
覚悟を決めた。
ゆっくりと
唇を開いた。
「……別れたい。」
あたしは
震えて
少し
掠れている声で
言った。
「…………」
あたしは
慎の表情を見るのが
恐くて
ずっと……
下を向いていた。
「………マジで言ってんの………?めい。」
慎が
戸惑いながら
あたしに
問い掛ける。
あたしは
顔を上げて、
慎を見た。
慎は
信じられないような
表情をして
あたしを見ていた。
「……不安……なんだよっ…。怖いから。あたし………梨沙ちゃんに慎が取られちゃうんじゃないかって…。……怖いから。耐えられない……あたし…もう、慎とは居られない。……だから。別れたい。」
あたしは
慎の目を見て
言った。
「………めい…!!!俺は…別れたくないっ。めいの事めっちゃ好きだし…梨沙とは……何にもないから…!!」
慎の言葉が
あたしを苦しめる。
「……ムリだよっ。……慎…。」
あたしは
慎を
見ないようにした。
嫌だった。
少しずつ
壊れていく
慎を見ている事が。
つらかった。
だから
見ないようにした。
「……そうだ。鹿野ってぃ?」
「は…」
「俺と櫻井さ。付き合ってるから♪」
「…は。何だよソレ……」
上野の言葉で
慎の表情が
更に
暗くなって
いっている事が
流れていく空気で
わかった。
「は?…雅人………何、言ってんだよ……?」
「…今…言った通りだから。」
あたしは
慎を見つめた。
上野が言った事は
本当だって
慎に
ちゃんと分かって
もらうために。
あたしの
瞳を見て、
慎は
瞳を大きく開いた。
あたし達から見ても
分かるくらいに
動揺していた。
慎の
震えている手
落ち着かない足
慎を見ている事が
辛い………
あたしは
震えている慎を
そんな
気持ちで見ていた。
「何で……」
「鹿野ってぃ…」
「何でだよっ…!!?」
慎が
上野の胸ぐらを
掴んだ。
上野と
慎の距離が近づく。
睨み合う2人。
「…上野っ………慎っ…!!!止めてよっ。」
あたしは
2人を引き離そうと
2人の間に入った。
だけど
すぐに
跳ね返されて
しまった。
「…止めてよっ。」
あたしは
必死で叫ぶ。
だけど
上野と慎には
あたしの声が届かず
ケンカは
止まらない。
あたしが
諦めかけた時
あたしの後ろから
声が聞こえて
ドアが
勢いよく開いた。
「慎っ!!!!」
梨…沙ちゃん……?
一瞬
真っ白になる
あたしの頭の中
何で梨沙ちゃんが
ここにいるの…?
……なんで?
あたしの中の何かが
勢いよく
崩れ落ちる。
梨沙の声で
おさまるケンカ。
「…もぉ。なにしてんの?慎っ。」
「…わりぃ。梨沙」
「…めい…雅人。……んじゃ。もぉいいわ!!!」上野の言葉で
慎の表情が
更に
暗くなって
いっている事が
流れていく空気で
わかった。
「は?…雅人………何、言ってんだよ……?」
「…今…言った通りだから。」
あたしは
慎を見つめた。
上野が言った事は
本当だって
慎に
ちゃんと分かって
もらうために。
あたしの
瞳を見て、
慎は
瞳を大きく開いた。
あたし達から見ても
分かるくらいに
動揺していた。
慎の
震えている手
落ち着かない足
慎を見ている事が
辛い………
あたしは
震えている慎を
そんな
気持ちで見ていた。
「何で……」
「鹿野ってぃ…」
「何でだよっ…!!?」
慎が
上野の胸ぐらを
掴んだ。
上野と
慎の距離が近づく。
睨み合う2人。
「…上野っ………慎っ…!!!止めてよっ。」
あたしは
2人を引き離そうと
2人の間に入った。
だけど
すぐに
跳ね返されて
しまった。
「…止めてよっ。」
あたしは
必死で叫ぶ。
だけど
上野と慎には
あたしの声が届かず
ケンカは
止まらない。
あたしが
諦めかけた時
あたしの後ろから
声が聞こえて
ドアが
勢いよく開いた。
「慎っ!!!!」
梨…沙ちゃん……?
一瞬
真っ白になる
あたしの頭の中
何で梨沙ちゃんが
ここにいるの…?
……なんで?
あたしの中の何かが
勢いよく
崩れ落ちる。
梨沙の声で
おさまるケンカ。
「…もぉ。なにしてんの?慎っ。」
「…わりぃ。梨沙」
「…めい…雅人。……んじゃ。もぉいいわ!!!」
「は、」
上野が
鋭い目つきで
慎を睨む
「だって……お前ら付き合ってんだろ!?…じゃ…俺は、梨沙と付き合うから…これで………全部終わるじゃん。」
「何言って……」
「…梨沙。行こっか?」
「…うん。」
「待てよっ…!!!」
慎と梨沙は
上野をムシして
屋上を出て行った。
取り残された
あたしと上野は
慎が
何を考えているのか
全く
分からなかった。
「……何考えてんだよ……鹿野ってぃ……」
上野が
近くにあった
椅子を蹴って言う。
「上野っ……」
「櫻井…いいのかよ……?お前の気持ちは鹿野ってぃに伝わったと思うけど……あーゆー事になって……」
「……うん。いいんだよ。……あたし…伝えられただけで幸せだよ?…あんな風になっちゃったけど…伝えて良かった…ありがとう…雅人。
」
「えっ?」
上野が
あたしの言葉に
気づいていない
動揺した姿を見て
あたしは
小さく笑った。
「…雅人…ば―かっ!!!」
あたしは
優しく
雅人の肩に
抱きついた。
「……今…雅人って…呼んだ?」
雅人が
恥ずかしそうに
あたしを見る。
「…ダメだった?」
「…全然!!!」
雅人は
あたしに
抱きつき返した。
「嬉しい?」
「…すっげー嬉しい。」
あたし達は
お互いを
信じ合うように
強く
強く……
抱きしめた。
「…雅人。……あたしの事も…ちゃんと名前で呼んで…?」
あたしが
雅人の
胸の中で
呟いた言葉は
この時のあたしの
願いそのものだった
あたしは
雅人の胸の中から
顔を出して
雅人を見つめる。
「…めい。」
雅人に
あたしの名前を
呼ばれた瞬間……
あたしは
笑っていた。
嬉しくて
嬉しくて…
思わず
顔に出ていた。
隠そうとしても
顔に出て…
恥ずかしい。
だけど
愛しい時間。
「雅人…あたし達…頑張ろうね。」
「分かってる。」
あたしと
雅人は
ゆっくりと離れて
手を繋いだ。
「…雅人…ずっと…すきだよ?」
「…俺も、めいの事…好きだよ?」
あたしと
雅人は
お互いに
不安を
掻き消すかのように
訪ねあった。
「…帰ろっか。」
雅人が
あたしの手を
引っ張って言う。
「うん…!!!」
あたし達は
ゆっくりと
屋上を後にした。
「雅人っ……」
あたしの教室の前で
雅人があたしの
手を離した。
「また、会いに行くから♪…それまでのガマンじゃん!?」
「うん。」
あたしの
頭を撫でてから
雅人は
自分の教室に
帰って行った。
あたしが
教室に
入ろうとした時
教室から
何故か
梨沙ちゃんが
出てきた。
「…めいちゃん。ちょっと話そ!?」
「…いいよ。」
あたしは
梨沙ちゃんに
体育館に
連れて行かれた。
体育館には
誰も居ない。
梨沙ちゃんは
バスケ部の部室を
鍵で開けて
あたしと
中に入った。
「…何の話か、分かってるよね…?」
「……分かってるよ」
……雅人の事だ。
「―めいちゃん…何で?……慎の事、あんな風に…言ってたのに………何で…雅人と付き合ってんの?…何で、慎と別れたの…?」
あたしに
少しずつ
迫って来る
梨沙ちゃん…。
「…それは……」
自然と
あたしも
後ずさりしてしまう。
「…何で?」
「……」
「―何で!!?」
梨沙ちゃんが
あたしの腕を掴んで
あたしを見る。
「―梨沙ちゃん。」
「…何?」
梨沙ちゃんの
低い声が
部室に響く。
「…それって、梨沙ちゃんに言わなきゃいけない?」
あたしは
鋭い視線で
梨沙ちゃんを
見返した。
「…は……」
唖然としている
梨沙ちゃんの腕を
あたしは
勢いよくはらった。
「…こんな事、梨沙ちゃんに言う必要ないでしょ?…」
「っ!!!―なっ…。…待ってよっ!!!」
梨沙ちゃんは
あたしの制服の裾を
力いっぱいに
引っ張った。
引っ張られる体。
「…何?―まだ、何かあるの?」
「…ふざけないでよ…!!!!梨沙にちゃんと話してよっ!!!……めいちゃんっ!!!!」
梨沙ちゃんが
声を張り上げて
あたしに迫る。
「…梨沙ちゃんには…関係ないじゃん!!!!」
あたしは
梨沙ちゃんの腕を
叩いた。
「…痛っ…!!」
「…梨沙ちゃん。もう、あたしと雅人に関わらないでね…。」
あたしは
梨沙ちゃんに
そう言うと
すぐに
バスケ部の
部室を出た。
体育館を出ると
すぐに
雅人を見つけた。
「雅人っ」
「お―めい」
あたしは
雅人に駆け寄った。
「―何してんの?」
「見たら分かるだろ?…掃除↓」
「…なんかした?」
あたしは
雅人を
ちょっとだけ
からかった表情で
見つめた。
「…ばーか☆何にもしてねーよっ」
「じゃぁ。何で?」
「はぁ↓…言われてなかったっけ?」
「何を…?」
「明日は、終業式だから…掃除するんじゃなかったっけ?」
「あぁっ!!!」
―すっかり。
わすれてたぁ―!!!
あたし、
そうだ!!!
確か…
じゃんけんで負けて
トイレ掃除に
なったんだったんだ…。
梨沙ちゃんとか、
慎の事で
すっかり
忘れてたよ…↓
(ノ△T)
「めい…早く掃除行った方がいいんじゃねーの?」
「…うん!!行ってくる。」
あたしは
雅人に
持っていたアメを
一つ渡した。
「…最近…雅人、あたしの為に頑張ってくれたからっ疲れてるでしょ?」
あたしは
笑って雅人を見た。
「…さんきゅっ」
雅人も
笑顔になった。
雅人…
好きだよ。
あたしは
雅人の笑顔を見ると
雅人と別れて
掃除場所に
走っていった。
あたしと
すれ違う生徒は
みんな
一生懸命に
掃除をしていた。
掃除が終われば
楽しい
夏休みが
待っているから。
みんなは
楽しそうに
掃除をしていた。
そんな
みんなの表情が
あたしを和ませた。
あたしの
中にあった
いろんな不安が
流れていく。
あたしは
走っている間…
掃除している
生徒の表情を
見ていた。
「櫻井っ!!!」
走っているあたしを
呼び止める
人がいた。
「……?」
振り返ると
あたしの後ろには
ほうきを持って
息を切らしている
俊一がいた。
「…櫻井っ!!!お前…サボろうとしてたよなぁ……!!!!」
「ち…ちが…今、行こうとして…」
「嘘つくなぁ…!!!」
「ほんまやって↓(ノ△T)」
あたしは
俊一に引っ張られて
トイレ掃除に
連れて行かれた。
「…めい。遅いっ」
美咲が
機嫌が悪そうに言う。
「ごめんっ…ちょっと用事があったから…」
「…終わっちゃったよっ」
「ごめんっ……」
あたしは
下を向いて
ただ謝っていた。
「そう思ってるんだったら…久しぶりに話そう」
美咲が
あたしの手を
引っ張って言う。
「え…」
「ほらっ」
「待って…」
あたしが
答えを言う前に
美咲は
走り出していた。
そして
あたしも
美咲と一緒に
駆け出していた。
どれくらい…
走ったかな?
気づいたら
あたしと美咲は
あの丘にいた。
「…めい。」
「ん?」
「あたしね…俊一と別れようと思う。」
「…え」
あたしは
一瞬、
美咲の言葉を
疑った。
「………。」
あたしは
美咲の顔を
覗き込んだ。
「…っ…うちと俊一…もう…無理なんだよっ…。」
美咲は
涙を流していた。
あたしは
そんな美咲に
何も言えなくて…
あたしは
ただ、
美咲を
見つめていた。
「……どぉして…」
あたしは
動揺して、
震える声で
美咲にたずねた。
「…やっぱり…めいじゃないと……ダメなんだって…。」
「…え…」
「……っ気にしないでよ?…めいが悪いんじゃないんだから…。」
美咲は
そう言って、
あたしに笑った。
「……美咲っ」
あたしは
思わず美咲に
抱きついた。
「めいっ…?」
「……あたしが…美咲の幸せを邪魔して…ごめんっ。……美咲っ。」
「……ううん…。めいは、悪くないから……。」
美咲は
そう言って
あたしを
強く抱きしめた。
「……めい…。最後まで話聞いてくれて…ありがとう…。」
しばらくしてから
美咲が突然
あたしの頭を
撫でながら言った。
「…別に…いいよ。…美咲…ちょっとは―すっきりした?」
「―うん。やっぱり…めいに話して良かった…。」
「あたし…ちょっとでも…美咲の…力になれた?」
あたしは恐る恐る
美咲の顔を
覗き込んだ。
……あたし、
ちゃんと…
美咲の力に
なれたのかな…?
ただ、
美咲を傷つけて、
迷惑かけてた…
だけじゃ
なかったのかな…?
「…うん!!めいがいてくれて良かったっ…☆―いろいろあったけど…めいは、うちの一番の親友だから。力になってないワケないじゃん☆」
そう言って
美咲は
あたしに笑った。
この時の
美咲の笑顔は
どこか懐かしくて
あたしは
絶対に………
美咲の
この時の笑顔を
忘れたくないと
思ったよ。
ううん…。
忘れたくないんじゃない。
絶対に…。
忘れないよっ。
「……良かったっ。ちょっとでも…美咲の力になれて…。」
美咲の言葉で
あたしは思わず…。
瞳にためていた、
大量の涙を
流していた。
「めい…」
泣かないって…
決めてたのに……。
あたしが泣いたら
美咲も…、
涙が止まらなくなるから
泣かないって
決めてたのに…。
ガマンしてたのに。
どうして?
溢れ出した涙は
どんどん
地面に落ちていって
深く…
深く
染み込んでいった。
「……美咲。ありがとう。こんな……あたしでも、一番の親友って言ってくれて……嬉しいよぉ。」
「めぇ…ぃ…。」
あたしの
言葉を聞いて
美咲は遂に……。
涙を流していた。
「…美咲っ…」
あたしと美咲は
2人…
キレイな夕日の中で
包み込まれるように
泣いていた。
第5話
変わってしまった世界
「…うわ……。目ぇ腫れてるし……。」
あたしは
まだ重い
瞼を開いた。
結局…。
昨日、
美咲と
ずっと……。
泣いていたんだ。
美咲と別れて
家に帰って来てからも
涙が止まらなくて
ずっと泣いていた。
だから
大好きなカレーも
妹に全部
取られてしまった。
「…はぁ。」
あたしは
腫れた瞼を
冷やしながら
学校に向かった。
「…おはよ。」
「おはよっ」
みんなが
あたしの瞳を見て
呆然とする。
「…どうしたの…!!?」
「目…すっごい腫れてるよっ!!!?」
みんなが
あたしの周りに
集まってくる。
「…あ。大丈夫…。」
あたしは
みんなに
小さく笑いかけて
廊下に出た。
「…はぁ。」
あたしは
腫れている瞳を
冷やしながら
窓を眺めていた。
窓を眺めていると
後ろから
声がした。
「めい?」
「……え…?」
振り替えると
あたしの後ろで
あたしを
不思議そうに
見つめている、
雅人がいた。
「…雅人?」
「めい…!!!どうしたんだよ?その目…。すっごい腫れてるし。」
「あ…」
雅人が
あたしの瞳を
優しくなでる。
腫れている瞳が
少し
ジンジンする。
雅人に
痛いくらいに
ドキドキする。
「…目ちゃんとひやせよ?」
「…うん…。」
雅人が
元気のない
あたしの返事を
聞いて
あたしの顔を
覗き込む。
「なんかあった…?」
あたしは
一瞬、
頭が真っ白になる。
美咲の事…
言っちゃっても…
いいのかな…?
…やっぱり
ダメだよね?
今はまだ…
雅人には
言えないよ。
雅人ごめんね。
ちゃんと…
言えるようになってから
ちゃんと言うから。
待っててね…?
「…ううん。何にも…ないよ?」
雅人は
あたしの顔を
見て笑った。
「…やっぱめいはウソつくの下手だなっ」
そう言って
雅人は
あたしの髪を
くしゃくしゃになでた。
「…え」
「顔にでるよなっ」
「………。」
「…大丈夫だって!!!理由はきかねぇからっ」
「雅人っ……」
「んじゃな…!!!なんかあったら言えよ?」
そう言って
雅人は
自分の教室に
入っていった。
雅人っ……
いつも
優しいね……。
強いね。
そんな雅人が、
あたしは
大好きなんだ。
雅人。
あたしは
雅人が
自分の教室に
入ってから
しばらくして
自分の教室に
入った。
教室の中には
美咲がいた。
そして
美咲は俊一と
話をしていた。
…昨日の話だよね…
あたしは
教室の入り口に
もたれて
美咲と俊一を
見守っていた。
どれくらい
たったんだろう?
いつの間にか
教室の中は
静かになっていた。
「…俊一。じゃあ…バイバイ……。」
静かだった
教室の中に
美咲の声が響いた。
「……おぅ……じゃ…な。」
俊一が
あたしのいる
ドアのところに
近づいてくる。
「………っ!!!」
―ヤバい…。
バレる…!!!
あたしは
小さくなって
ドアに隠れた。
「っ!!!」
思わず
俊一と目が合う。
しばらく
あたしと
俊一は黙って
下を向いていた。
俊一は
しばらくして
あたしの手を
引いて歩きだした。
「…ちょっと話そう…!!!!」
「・・は・・!!!?」
俊一は
あたしの手を引いて
走っている。
すれ違う生徒が
あたしと俊一を
見つめる。
「櫻井っちょっと学校でるから。」
「…えっちょ・・・」
あたしの
意見も聞かずに
俊一は
さらに
走るスピードを
上げて
走り出した。
しばらくして
あたしと俊一が
たどり着いた場所は
小さな公園だった。
平日の
朝だからかな・・・
誰もいない。
公園にいる
あたしと俊一の
周りには
誰もいなかった。
とりあえず
あたしは
ブランコの椅子に
ゆっくりと座った。
俊一も
あたしが座ってから
すぐに
あたしの隣の
ブランコに座った。
……話って…
美咲の事だよね…?
「話って…何…?」
あたしは
何の話か
わかっていたけど
あえて
俊一に聞いた。
「…俺…木下と別れたから…。」
―やっぱり……
昨日、
美咲が
言ってた言葉は
本当だったんだ…
「…なんで?」
「…俺が悪いから……。」
「どぉいう意味?」
「だから…俺が悪いの…!!!ちゃんと…アイツの気持ち…分かってなかったし…。」
「…そっか。」
美咲…。
こんなにも
俊一は美咲を
想ってくれているのに…
どうして…
不安になったの?
美咲は
俊一の気持ちを
知らなかっただけなの?
お互いに
気持ちが
理解しあえていたら
美咲と俊一は
別れる事は
なかったの…?
あたしの中で
いろんな
光景や言葉が
駆け巡る…。
「岡本は…幸せだった?」
あたしは
不意にこんな事を
聞いていた。
「…俺……アイツの事…あんなに不安にしたけど…俺は幸せだった…。」
俊一の瞳が
少しだけ潤んだ。
「……そっか。…美咲は…岡本といる間…あたしには見せてくれないような笑顔で笑ってたよ…?」
「え………」
「あたしは…美咲も岡本と同じだと思うよ?……ちゃんと幸せだったと思う…。…後ね…美咲……ちゃんと岡本の事好きだよ?」
「……………。」
あたしは
俊一の表情を
見てから
ブランコから降りて
学校の方に
ゆっくりと
歩いていった。
あたしが
俊一に話した事は
美咲は
思ってないかもしれない。
気づいてないかもしれない。
だけど…
あたしから見た
美咲は
めっちゃ
幸せそうだったよ。
学校までの道は
さっきより
なんだか
長く感じた。
しばらくして
学校に着いた
あたしは
不意に
ケータイを開いた。
「あ…雅人」
雅人から
メールが
5件もきていた。
しかも
メールの内容全部が
あたしを
心配してくれている内容だった。
雅人……
心配してくれてたんだ……。
―雅人。
早く会いたい。
会いたいよ………
雅人に
会いたくなりすぎて
気づいたら
あたしは
無意識に
雅人にメールを
送っていた。
『雅人』
『Eメール送信中』
『会いたいよ…。』
あたしは
メールを送った後
校庭の真ん中に
立って
ただ
ぼーっとしていた。
校庭には
授業中だからか
誰もいなかった。
校庭には
静かな風が
流れている。
……落ち着く…。
落ち着いていたら
ケータイが
鳴りだした。
…雅人だ。
あたしは
勢いよく
ケータイを開く。
『Eメール受信中』
『分かった。俺、今教室やけど…。どこにおるん?』
…来てくれるんだ。
あたしは
嬉しくて
夢中でメールを打った。
『今は……』
あたしが
メールを
打っていると
雅人から
メールが来た。
「え…?」
『Eメール受信中』
『雅人』
『めい…見つけたで。教室見てっ』
「…えっ?教室……?」
あたしが
振り返って
教室を見る。
「…雅人。」
雅人の教室を
見てみると
雅人が
あたしに
手を振っている。
教室から
雅人があたしに
向かって叫んだ。
「―めい―っ!!!待ってろよー!?今からそっち行くからっ!!!!」
「うんっ」
雅人は笑顔で
あたしを見て
笑っていた。
あたしは
また
空を眺めた。
「…めい―!!!!」
「ん…?」
「すきやでー」
雅人が
教室から
あたしに向かって
大声で叫ぶ。
雅人の
クラスの人達や
他のクラスの人達の
視線が
あたしに集まる。
「……!!!!」
窓から
あたしを
見ている人達は
あたしを
冷やかしている。
先生達も
あたしを見ている。
あたしが
そんな状況に
圧倒されていると
雅人が教室から
降りてきた。
雅人が来た瞬間
周りのざわつきが
更に大きくなる。
「雅人っ」
「めいっ」
「どぉしたの……いきなりあんな事言って……」
「…なんか…最近……めいさぁ。悩んでたじゃん?美咲の事とか山内の事とかでさぁ。だから…あんま一緒におれんかったし……寂しかったから…めいが会いたいって言って来てくれて嬉しかったから……。ごめん。」
雅人は
あたしの顔を
見つめてから
下を向いた。
「……ううん。そんな事ないよ……。ごめんね。あたし…自分の事ばっかりで気づかなくて………」
「めいは悪くないじゃん。」
「でも………」
「気にすんな…!!!だって…めいが今日会いたいって言ってくれたから…俺達…今日会えたし…。」
雅人が
顔を上げて
あたしに笑った。
「…雅人っあたし……嬉しかったよ?」
「ほんまに…?」
「うん。めっちゃ嬉しかったよ」
あたしは
思いっきりの笑顔で
笑った。
「やった―!!!」
雅人が
あたしに
抱きついてきた。
「嬉しい。」
「ちょ―雅人っ」
「マジ…幸せやし」
雅人があたしの
すぐ目の前で
笑っている。
あたしは
そんな
雅人の笑顔が
好きだよ?
あたしは
雅人を
抱き締め返した。
「…あたしも…幸せ………。」
雅人が
あたしを
抱き締める力が
どんどん強くなる。
あたし達が
校庭で
抱き締めあっていると
先生達が
走って来た。
「櫻井―!!!上野―!!!お前ら何してんだ―!!!!」
先生達が
勢いよく走ってくる。
「ちょ―!!雅人っ先生来たっ」
「にげっかぁ」
そう言うと
雅人は
あたしの腕を掴んで
走り出した。
「待て―!!!!」
―速い。
風に……
なってるみたい。
さすが
野球部…!!!!
先生との差も
どんどん
離れていく。
「…ねぇっ雅人っ…。どうするの…?まだ、先生追ってくるよ…?」
あたしは
息を切らしながら
雅人に言った。
「―このまま逃げても意味ねぇしなぁ・・・。」
「だからぁ・どうするの?」
あたしは
困ったような
表情で雅人を見た。
「んじゃ。どっか行こっか」
雅人が
あたしを見て
小さく笑った。
「・・・・え?」
あたしは
訳が分からなくて
走りながら
テンパっていた。
そんな
驚いている
あたしを無視して
雅人は
あたしの腕を
掴んだまま
門の方に
走って行く。
「…あ!ちょっと……。」
風が
あたし達の後ろから
勢いよく
駆け抜ける。
自然と
足が動いている。
……風になってるみたい……。
「早く!!!めいっ!!登って!!」
「えっ!!!」
あたしが気がつくと
雅人は
校門を
乗り越えて
あたしを待っていた。
「…待って…!!!」
あたしも
勢いよく
校門を乗り越えた。
「上野っ!!!櫻井っ!!!お前ら………!!!」
先生が
やっと
門の前まで来て
あたし達に
怒鳴っていた。
雅人はあたしを
見つめて笑った。
「いくぞ…?」
「…うんっ」
あたしも
雅人をみつめてから
笑った。
あたし達は
また
走り出した。
どうでしたか?
少しでも
楽しめていただけたでしょうか?
これは
全て、
私の体験談です。
”(ノ><)ノ
恥ずかしながら
書いて
いましたが…
自分でも
書いていて
驚くほど
進んでいたので
びっくりでした。
この
作品を書いた理由は
皆さん。
読者さんに
恋の楽しさ。
恋の辛さと切なさを
知ってもらいたかったからです。
だから
それが伝わって
恋っていいなぁ。
恋したいなぁ。と
思っていただけたら
私は
幸せです。
皆さん。
最後まで
読んでくださって
ありがとうございます。