0.唐揚げ
醤油、さとう、おろし生姜、おろしにんにくを混ぜ合わせた秘伝のタレと脂身の多い鶏のもも肉をジッパーに入れる。丁寧に空気を抜き、よく揉み込む。そして冷蔵庫で一晩寝かせる。
こうやって、もも肉に下味をじっくり染み込ませた。
「さて、肉もいい感じに下味が付いたな。次は衣の準備だ」
ここにもこだわりがある。
僕はしっとりとジューシーな唐揚げが好きなので、まずは小麦粉で鶏肉を全体的にコーティングする。
こうすることで揚げた時に水分が出ていくのを防ぐことができ、噛んだ時に溢れんばかりの肉汁を楽しむことが出来る。
小麦粉を全体的にコーティング出来たら次は片栗粉を振りかける。衣の食感にアクセントを追加する大切な工程だ。ここも抜かりなく裏表全体に振りかける。
「……よし!」
バットからこぼれた粉なんて気にならないほど、真っ白くお化粧できたもも肉はため息が出るほど美しい。
正直、ここで食べてしまっても構わない。
冗談だ。カンピロバクターなどで食中毒を起こしてしまう。
そう、鶏肉は必ず火を通さなければならない。
さあ、油を温めよう。
まずは90℃、ここで衣が崩れないようにそっと肉を入れていく。油に浸ったら下手に動かしたりなんてしたりしてはいけない。衣が剥がれてしまうから。
じ〜っくりと、肉に火が入るのを感じながら様子を見る。低音で調理する理由は、肉が中までしっかり火が通るようにするためだ。最初から高温で温めてしまうと表面が焦げついて、しかし中はまだ火が通っていないなんてことにもなりかねない。
4分〜6分。さて、そろそろ取り出すか。
小麦色に輝く唐揚げを取り出す。きらきらと輝く油を軽く切り、いったん端によける。
さらに油の温度を170℃になるまで温める。さえ箸を入れるとぷつぷつと泡立つ温度だ。
1度揚げた唐揚げを高温に熱した油に戻す。
これを2度揚げと呼ぶらしい。1度目は肉に火を通し、2度目は表面をカリカリに仕上げるため。
黄金色のプールに沈められた唐揚げはジュ〜っと、美味しそうな音を立てる。
ふむ、いい感じた。高温に熱された衣もカリカリになっただろう。
さてそろそろ頃合だ。油に沈められた唐揚げを引き上げよう。
さえ箸で1つを掴みとる。まさにダイヤモンドだ。
油でキラキラと光る表面にカリカリとした衣の感触。
小麦の焦げた香ばしい香りも立ちのぼる。
それらを一つ一つ掴み取り、油を切るためにバットに並べる。
仕込みから仕上がりまで完璧。自分のこだわりを貫いた逸品。実に美味しそうだ。
「よし……今日はご馳走だ!」
思わず頬が緩んでしまった。




