にゅうめんマン、怪人退治の依頼を受ける(3)
「話は分かりました。ただ、危険を冒して怪人を退治するわけですから、依頼を受けるにあたって、それなりの誠意を見せてもらえればありがたいと思います」
にゅうめんマンは言った。
「ご安心ください。謝礼は弾みます。危険な仕事ですし、なにしろ博覧会の存続があなたの働きにかかっていますから」
「お金は要りません。でも、お金よりもっと大事なものがありますよね」
「何ですか」
「にゅうめんです」
「そ……そうですね。それで、にゅうめんをどうすればいいのでしょうか」
「博覧会でにゅうめんの展示をしてください」
「むちゃですよ!」
運営責任者はにゅうめんマンの要求に面くらった。
「なに、新しいパビリオンを建ててくれとは言いません。すでにある日本のパビリオンに『にゅうめんコーナー』を設ければいいのです。簡単な話です」
「そんな難しい話聞いたことがありませんよ。そもそも、にゅうめんは博覧会のテーマと関係がないじゃありませんか」
「テーマって『命きらめく未来の世界』でしたっけ。そんな限定的なテーマでもないんだし、にゅうめんの展示があったって大きな問題はないと思いますがね」
「しかし、パビリオンでにゅうめんの展示をするみたいなえこひいきをすれば、他の食品の関係者が黙っていないんじゃないですか」
「にゅうめんは日本を代表する食品だから、そこはみんな認めざるを得ないでしょう」
「そんなバカな。にゅうめんと比べたら、きしめんとか沖縄そばの方がまだ日本代表にふさわしいですよ」
「……あなたに何の誠意もないことがよく分かりました。この話はなかったことにしましょう。さようなら、また会う日まで」
にゅうめんマンはいすから立ち上がって帰ろうとした。
「待ってください!お願いです。正義の味方なんですから、こんなに困っている私たちを見捨てないでください」
運営責任者はにゅうめんマンを必死で引き止めた。
「にゅうめんの展示は無理かもしれませんが、もし怪人を退治してもらえたら、にゅうめんマンさんのために、私が毎日おいしいにゅうめんを作ってあげますから!」
「気持ちはありがたいんですが、中年男性の手作りはその、何と言うか……もう間に合ってますから」