にゅうめんマン、怪人退治の依頼を受ける
それから何日か経ち、国際博覧会はまだどうにか開催していたものの、怪人ミョクミョクは会場を荒らし続け、各国のパビリオンを次々に陥落させた。運営者は圧倒的な力を持つミョクミョクの暴走を止められず、博覧会が中止に追い込まれるのも時間の問題と思われた。このような状況で博覧会運営者が助けを求めたのが、無敵のヒーローにゅうめんマンだった。
にゅうめんマンは超人的な身体能力を持ち、誰よりも深くにゅうめんを愛する正義の味方だ。スーパーヒーローの常として正体を隠さなければいけないので、人前では常に黒い覆面をかぶっている。覆面は鼻から下が開いているため着けたままでもにゅうめんを食べることができる。体にはスピードスケートのスーツに似た真っ黒な服を着ていて、その正面には大きな斜め向きの金文字で「にゅうめん」と書いてある。
豆知識として、にゅうめんマンの体には「ニューメニティ」という特別なエネルギー的な何かが満ちている。ニューメニティは主ににゅうめん中に存在するが、にゅうめんの外にも微量に存在し、人体にもわずかに含まれる。ときどき人より多くのニューメニティを持つ人もいて、その中でも、目玉が飛び出るほど高濃度のニューメニティを体に宿しているのがにゅうめんマンだ。あまり高濃度なので体に悪いのではないかと心配されたこともあるが、特に問題なくやれている。
——さて、にゅうめんマンは、怪人のことで相談があるから話を聞いてほしいと頼まれて、博覧会の運営事務所を訪ねた。
事務所は、会場から少し離れた所にある、ものすごい高さの高層ビルに入居していた。にゅうめんマンが約束の時間ちょうどにやって来て、事務所の扉を開け中へ入ると、スーツ姿の女が出迎えた。
「にゅうめんマンさんですね。お待ちしておりました」
女に案内されてにゅうめんマンは中へ入った。むやみに高いビルの中にある他は普通の事務所で、そこそこ広いが思ったより地味だった。事務所の壁には博覧会のポスターが何種類か貼ってあって、毒にも薬にもならない感じのマスコットキャラクターの絵が各ポスターに描かれていた。にゅうめんマンは責任者を名乗るスーツ姿の男からあいさつを受け、この男と2人で応接室へ入った。