万博の怪人(7)
地に倒れたにゅうめんマンにとって幸いだったのは、ミョクミョクもまた倒れたままだったことだ。顔に受けたアッパーカットがいまだに後を引いているのだった。それほど強力なアッパーだったし、打ち所も悪かったのだろう。強力な奥義を使った直後で息切れしているとか、目玉の1つをもぎ取ったダメージもあったかもしれない。
にゅうめんマンはミョクミョクに攻撃されることを避けるため、地面をはって敵から遠ざかり、そこで改めて横になった。この時点で2人はすぐに戦いを再開できず、事実上の小休憩となった。
「ミョクミョク様。大丈夫ですか」
2人の戦いに気づいてそれを見ていたミョクミョクの手下が、ミョクミョクに駆け寄って声をかけた。
「問題ない。強く殴られた衝撃で一時的に頭がくらくらしているが、すぐに治るはずだ。敵は完全に弱っているし、俺が立ち上がったときに勝負はつくだろう」
「口から血が出ているじゃありませんか。これを使ってください」
手下はミョクミョクにタオルを差し出した。
「すまんな」
ミョクミョクはタオルで口の血をぬぐった。目玉をもいだ所も傷ついていたので、ついでにそこも軽くふいた。目玉は、ここぞというときはもぎ取って攻撃に使える仕組みになっているが、それでも一定の自傷ダメージがあり、体に優しい攻撃手段ではないのだった。
「ところで、暑い中で体を動かしてのどがかわいていませんか」
手下はたずねた。
「かわいている」
「よかったらこれを飲んでください」
手下は水の入った水筒をかばんから取り出した。
「いただこう」
ミョクミョクは手下に支えられて上体を起こし、水筒を受け取って少し水を飲んだ。
一方、にゅうめんマンをずっと見守っていたのは三輪さんだ。三輪さんも、ぼろぼろになったにゅうめんに駆け寄って声をかけた。
「大丈夫ですか」
「なんとか」
「もうやめておいた方がいいですよ。死んでしまったらどうするんですか」
「莫大なお金と国の威信をかけた博覧会の存続がかかっているんです。ちょっとやられたくらいで降参できません」
「だけど、もう体がぼろぼろで、ひどい怪我もしているじゃありませんか」
「相手も消耗しているはずです。さっきから1度もパンチを打ってこないところを見ると腕はすでに使い物にならないんだと思うし、何度もこちらの攻撃を受けて平気でいられるはずがありません」
「でも……」
「正直言って、この依頼を引き受けたときは自分1人で十分だと思ったし、ミョクミョクがこんなに強いとは思いませんでした。だけど、簡単に負けたんじゃ無敵のヒーローの名がすたります」
「でも、無敵のヒーローというのは自称なんだし、すでにこれまで何度も追いつめられたりしているんだから、今さら命をかけて無敵であることにこだわる必要はありませんよ」
「事実を突きつけるのはやめてください」




