怪人の手下、スペインのパビリオンを襲う(5)
にゅうめんマンはパビリオンから少し距離をとり、牛もその後をついて来た。そこで両者は改めて向かい合い、戦いは仕切り直しとなった。
牛は壁に激突した後もピンピンしていた。このように元気いっぱいの状態で動き回られると、安全に近づくことが難しく、とり押さえづらい。ここで、にゅうめんマンにアイデアが閃いた。
《威嚇してひるませるのはどうだろう》
動物の世界において威嚇は敵を惑わす有効な手段だ。だが、体重1トンを下らないと思われるこの牛を、圧倒的に体の小さな人間がどうやって威嚇するのか。——にゅうめんマンの体に宿る、圧倒的に大きなニューメニティを使うのだ。
「はああああぁぁぁぁぁぁ!!!」
かけ声とともに気合を入れると、元から高かったにゅうめんマンの体のニューメニティが想像を絶するレベルまで高まり、丁寧に調理したにゅうめんのだしを彷彿とさせるまぶしい黄金の輝きとなって体外にあふれ、ほとばしり出て、周囲の空間を満たした。
「さあ牛!これでどうだ!」
威嚇の効果を確かめるため、にゅうめんマンは牛の方を見た。牛は、まぶしくてうっとうしそうだった。
やがて、つき合っているのが面倒くさくなったのか、牛は5回目の体当たりをにゅうめんマンにしかけた。タロは賢い牛だが、残念ながら、にゅうめんマンのニューメニティのすごさを理解できるほど賢くはなかったようだ。
威嚇が失敗したので、にゅうめんマンはやむなく、さっきと同じように牛の体に飛び乗って両角を捕まえた。また同じ展開になるかもしれないが仕方がない。運がよければ、にゅうめんマンに有利に事が運ぶこともあるかもしれない。
少なくとも牛はさっきと違う行動をとった。背中に飛びつかれたタロは数秒間跳ね回って暴れたが、やはりそれが無駄であることを理解して跳び回るのをやめ、突然まっすぐに疾走し始めた。ただし、今回は建物の壁に突っ込むのではなく、何もない方向に全力で走った。
何もないと言ったが、正確に言うと、その先には戦いを見物していた大勢の野次馬がいた。見物人たちは、怪獣みたいな牛が自分たちの方へ突っ込んで来るのを見て肝をつぶし、大慌てで逃げ出した。そもそも暴れ牛の見物みたいな無鉄砲なことをすべきでないのだろうが、確かに見ごたえのある戦いだから、野次馬が集まるのもしかたないのかもしれない。というか、野次馬たちよりも、パビリオンが襲撃されるのをアトラクション扱いして博覧会を開催し続けている運営者がむしろ無鉄砲だった。
さて、その間にゅうめんマンは、はらはらしながら牛にまたがっていた。そして、またがるだけならよかったのだが、すぐに牛の手口にしてやられることになった。自動車並みのスピードで疾駆していた牛は、野次馬のいる辺りに到達する前に、いきなり急ブレーキをかけたのだ。地面を舗装するタイルはひづめの膨大な圧力に耐えられずに割れ、にゅうめんマンは、意表を突くこの行動に対応できず、角をにぎっていた手がすっぽ抜けて、前方に大きく投げ出された。
「いたたた……」
落ちるときに受け身をとったので大事には至らなかったが、固いタイル敷きの地面に放り出されて体が痛んだ。




