怪人の手下、スペインのパビリオンを襲う(4)
にゅうめんマンはパビリオンの外へ出た。スペインのパビリオンは攻撃を受けていたので、その周囲は、博覧会運営スタッフによって立ち入り禁止区域に指定されていた。ただし建物の正面にはパビリオンのスタッフが何人か倒れていたので、にゅうめんマンは、建物の脇の方の人がいない所へ走って移動した。
にゅうめんマンがその場所で立ち止まると、後を追って走って来た雄牛のタロが、鼻息荒くにゅうめんマンに突進した。にゅうめんマンは高々と真上に跳び上がり、またしても牛の攻撃をかわした。突進を空振りした牛はくるりと敵の方へ向き直り、牛とにゅうめんマンは正面からにらみ合った。
「さあ来い牛!人間の力を見せてやるぜ」
牛は敵の出方をうかがうように、しばらくにゅうめんマンを見つめていたが、やがて前足のひづめで2回ばかり地面を引っかくしぐさをしてから、4度目の体当たりをしかけた。まあ他にやることもないだろう。
にゅうめんマンは今度は横に飛んでそれをかわし、体当たりを外した牛がこちらへ向き直るときにスピードが落ちたところを狙って、すばやく牛の背中に飛び乗った。ひどく不安定な状態だったが、にゅうめんマンは卓越した運動神経でどうにか背中にしがみつき、うまいぐあいに、頭の後ろから両角をつかむことに成功した。それから、牛の首にまたがって体勢を安定させた。
「モオオオォーー!」
上に乗られたことが気に入らない牛は、敵を振り落とそうと暴れまくった。サイのように大きな体でビョンビョン跳ね回ったり、首を打ち振ったり、グルグル回転したり、後ろ足で立ち上がってみたりして、地獄の乗馬マシンみたいな迫力だった。離れた所から見ていた見物人たちが言葉を失ったほどだ。
にゅうめんマンは体をガクガク揺さぶられてひどい有様だったが、どうにか牛の体にしがみつき続けた。
《握力には自信があるし、角を手放さなければもちこたえられるだろう。牛が疲れたところで一気に片をつけてやる》
というのが、にゅうめんマンの思惑だった。
ところが牛は思いがけない行動に出た。暴れ回るのをやめ、にゅうめんマンを乗っけたまま、急にパビリオンの壁へ向かって疾走し始めたのだ。にゅうめんマンは、牛が頭からパビリオンに突っ込んで壁を突き破る直前に、角から手を放して地面に落下した。
「ぐっ」
大きな牛から墜落したのでそこそこの衝撃があったが、どうということはない。立ち上がって体勢を立て直したにゅうめんマンは、敵を振り落とすために牛がわざと壁に突っ込んだことに気づいた。
一方、壁を突き破ってパビリオン内部に突入した牛は、自分で空けた壁の穴から再び外へ出て、しっぽをしならせながら、巨大な体をにゅうめんマンの方へ向けた。
「俺は少しお前をあなどっていたようだ」
にゅうめんマンは牛に言った。




