狙われた屋台(5)
これでセントクリストファー・ネイビスの館長はやっつけたが、まだ2人残っている。そのうち1人が前へ進み出て言った。
「次は俺の国、セントビンセント及びグレナディーン諸島だ」
「セントビンセント及びグレナディーン諸島は3国のうち1番南です。『グレナディーン諸島』を名乗っているにもかかわらず、グレナディーン諸島の一番大きくて人口が多い島がなぜか隣の国に属しているという、ちょっと納得しがたい国だった気がします」
このような微妙な評価を受けて、セントビンセント及びグレナディーン諸島の館長こそちょっと納得しがたい気持ちだったが、三輪さんがこの国を知っていることは間違いなかったので、しぶしぶ負けを認めた。
さて、残る1つはセントルシアだ。同国館長のおばさんが前へ進み出て言った。
「さあ、最後は私の国、セントルシアについて何か話してもらおう」
「……」
セントルシアは3国の最後を飾るにふさわしい強敵だった。正式名称は「セントルシア」で単純そのもの、他の2国と違って主だった島は1つしかない。日本からは1万4千キロ離れていてなじみも薄い。
セントルシアの館長は回答に悩む三輪さんを挑発した。
「ふふふふ。あんたは顔もきれいだし頭もいいけど、どうやらセントルシアの無名度にはかなわないようだね。なんたって、他国の人たちに紹介すべきセントルシアの特徴なんて、この私でさえ思いつかないくらいだからね!」
「博覧会のパビリオンの館長なんだから自国の特徴くらい知っておけよ。来客にどんな話をしていたんだ」
他の国の館長があきれて言った。
ところが、ここで三輪さんはセントルシアに関してあることを思い出した。
「そうだ。セントルシアといえば、開いた鳥のくちばしを下から見上げたみたいなデザインの国旗が特徴です」
しかしミョクミョクの手下たちはこれを疑った。
「開いた鳥のくちばしを下から見上げた国旗だと?そんな旗がこの世に存在するのか」
「簡単には信じがたいな」
「何かの思い違いじゃないか」
だが、みんながそんな話をしていると、セントルシアの館長はハッとした顔をして、服のポケットからハンカチを取り出し、他の人たちの目の前に広げて見せた。そこにはセントルシアの国旗が印刷されていた。
「何だこれは!ほんとに開いた鳥のくちばしを下から見上げたみたいな国旗じゃないか」
「思い違いなんかじゃなかったんだ」
「あの女、とんでもない所に目をつけやがるな……」
「こんな変な国旗のことまで把握している人間に、俺たちが勝てるわけはなかったんだ」
ミョクミョクの手下の館長たちは負けを認め、屋台に手をつけることなく撤退した。




