怪人現る
「何だあれは!?」
「怪物だ!怪物が出た!!」
「みんな逃げろ!ぐずぐずしてると捕まって食われてしまうぞ!」
突然姿を現した異形の怪物に、国際博覧会会場はハチの巣をつついたような大騒ぎになった。この化け物は、後に「万博の怪人」と呼ばれる妖怪ミョクミョクだ。ミョクミョクは、人間に近い体型をしていて、顔の周囲に車輪状にいくつもの目玉があり、その代わり顔面には目がなく、鼻もなく、顔の中央には大きく裂けた口だけがある。
だが、他の来場者が逃げ惑う中、怪人にちょっかいを出す恐いもの知らずなやつもいた。
「何だあの化け物。着ぐるみじゃないのか」
と言って、その不良はミョクミョクに近づき頭をぺちんとたたいた。次の瞬間ミョクミョクの鉄拳が不良のみぞおちに炸裂した!
「ぐほぁっっっっっ!!!」
不良はなすすべもなく、腹を抱えて地面に倒れた。
「てめえ!何をしやがる!」
それを見ていた不良の仲間3人は、やられた男を助けるため一斉にミョクミョクに襲いかかった。だが、ミョクミョクは彼らの動きを見切り、目にも止まらぬ速さのパンチを全員にたたき込んで、一息に3人を打ち倒した。……静かに横たわる不良たちの体を、人工島の潮風がひゅるりとなでて通り過ぎた。
どうにか動く気力をとり戻した不良たちは、ミョクミョクの様子を見ようと顔を上げた。すると、怪人の顔の周りにあるたくさんの恐ろしい目玉が自分たちをにらんでいるのと目があった。あまりの恐怖に、不良たちは立ち上がって逃げ出すことさえできなかった。
「次に俺に手を出したときが、お前たちの死ぬときだ」
怪人は不良たちを打ち捨てて、どこかへ歩き去った。