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6.シェリーとルイスとフレディのこと


 鐘の音色が再び空を埋め尽くし、四つの音を最後に消えた。外回廊のд(デー)の柱の下部がぽろりと外れ、開いた穴から小さな手が現れた。そして頭、金の髪。


 這い出した少女は充分に光に目を慣らすと、空を仰ぎ得意気に息をついた。ふッ。満面の笑顔である。


 受け取っていた招待状に拠れば、茶話会は四時に始められる予定なのだ。シェリーはうきうきとした素振りで外した板を元にと戻した。


 始まってしまったらこっちのもの。ルイスが無様な遅刻よりも、むしろ残念にも欠席の方を選ぶことは予想に容易い。


 誰かが見つけたとしても、ズルズルと引きずられてテーブルに現れられては、会そのものが台無しとなってしまう。会を仕切る女主人(ホステス)として壊れた雰囲気を引き戻す、ルイスは未だそれほどの力を持たない。


 そもそも出席の返事も無理やり押し切られたものだった。姉だから従えとは、ご無体な話である。ルイスの凝っている都会風マナー最優先は、シェリーには苦痛以外の何でもなかった。


 比べれば大司教のお説教の方だって、想像の余地があって楽しいと言えてしまうほど。


 残念、大司教様、最高の苦痛の座は失われたわ。


 もっともルイスは大きな見落としをしている。今日この午後にシェリーに空いている時間などあるわけがない。


 彼女の愛する従兄殿は、週末一週おきにしか戻っては来ない。例え一瞬間たりとも無駄にはせずにしがみついていること、それが彼女の最優先であることくらい、忘れないで欲しいのに。


 草を踏む足音であっても、聞き間違えはしない。シェリーはバルコニーの柵に上り、大きく身を乗り出して、手を振りながら叫んだ。


「お帰りなさーい、フレディ。今日は時間通りねー!」


 緑の中から返ってきた笑顔に、体中があたたかくなる。喜んでいるのだ、全身が。


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