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21話 会えない時間と僕色のドレス(ラインハルト視点)。

第三王子、ラインハルト視点のお話です。

短めです。

リリーの誕生パーティーから遡ること、ひと月前。

意気消沈している第三王子のラインハルトは、自室のソファーの上で膝を抱えて丸まっていた。

世間ではキラキラした王子として有名な彼だが、今は全くその面影が無い。


あぁ、リリーに会ったのはまだ一昨日のことなのに、もう会いたい。

今すぐ会いたい……。


くるくる変わる表情や、無邪気にスープを頬張る横顔を思い出しては更に思いは募っていく。


だけど、次に会う約束もないし、お忍びで町をブラブラしてみたって、母上みたいに偶然出くわすこともないだろうし……。


社交界デビューもまだなリリーとは、どうしても会える機会が限られてしまう。

少しでもリリーの情報が欲しいラインハルトは、昨日、今日とリリーの父親の伯爵を城の入り口で待ち伏せしてみた。

さりげなく彼女の様子を尋ねてみたラインハルトだったのだがーー。

期待した答えは、両日とも『娘は元気にしています』という簡潔なものだった。


あの答え方は絶対、嫌がらせだよな。

リリーから僕を遠ざけようとしているに違いない。

もういっそのこと、直接屋敷に会いに行ってみるか!?


考えて、ラインハルトは丸まった姿勢のまま横にボスンと倒れた。


そんなのダメに決まってるよな。

僕、王子だし、リリーはまだ婚約者でもないし。

もぉーーーー、なんで僕は王子なんだ!!

大体、仲のいい幼馴染みの男がいるっていう噂は本当なのか!?


ラインハルトがやきもきしながらソファの上でゴロゴロ転がっていると、ノックの音が聞こえ、王妃がピョコっと顔を出した。


「あらあら、思った通りにうだうだ腐っているわね」

「母上、なんの御用ですか。ご覧の通り腐っていますので、僕のことはしばらく放って置いてください」


すっかりやさぐれているラインハルトは、王妃に冷たく言い返すと背を向けた。


「あらぁ、そんなこと言っていいのかしら? リリーちゃんに関する素敵なお話を教えてあげようと思ったのだけれど。じゃあ、好きなだけそうしていなさい」


意味ありげな微笑みで告げ、去りかける王妃をラインハルトはなんとか引き止めると部屋に連れ戻した。



「それで? リリーがどうしたんですか?」


きちんとソファーに座り直し、真面目な顔で問いかける息子に、母は「仕方ないわねぇ」と言いながら、さきほど仕入れたばかりのとっておきの情報を教える。


「え、リリーの誕生パーティー!? この前はそんなこと全然言っていなかったのに……」

「リリーちゃんも知らされたばかりだと思うわ。本人以外でこっそり話を進めていたみたいよ」

「でも母上、僕がパーティーに呼ばれることはないですし、しばらくリリーは忙しいってことですよね?」


段々声に覇気がなくなり、見るからに萎れていくラインハルト。

分かり易すぎる。


この子ってば、要領も頭もいい子だと思っていたけど、恋をするとこんなにダメになるのねぇ。

面白くて堪らないわ。


王妃は笑いそうになるのを堪えつつ、ラインハルトに提案した。


「だから、直接は会えないけれどドレスを贈ったらどうかしら?」

「ドレス?」


ラインハルトは想像してみた。


リリーにドレス……。

リリーに僕の選んだドレスを着てもらう……。

だったら幼馴染みや、他の男達を牽制するような、「僕の色」を使って「僕のリリー」だと主張出来るような特別なものを……。


ふふふふふと悪い顔をしながら笑い出した息子を、母が困ったように見つめていた。


なんでこの家の男ってみんなこうなのかしらねぇ。

執着が酷いというか。

ま、リリーちゃんなら私も大歓迎だから、ここは私も手を貸すとしましょうか。


「私の専属の職人を貸してあげるわ。日にちがあまりないから、今回は少しは妥協しなさいね」


聞いているのかいないのか、ラインハルトはリリーのドレスをイメージするのに忙しそうだ。


「私達からは逃げられないわよ、リリーちゃん」


ラインハルトとそっくりな悪い顔で微笑みながら、王妃が呟いた。



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