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20話 王子様からのドレスは着心地抜群です。

リリーの誕生パーティー当日。

パーティーは午後から始まる予定だが、リリーは朝から準備に追われていた。

パーティーの主役の為、身支度に時間がかかるからーーではなく、リリーが主役自らパーティー料理の手伝いを厨房で行っていたからである。


「お嬢様、こんなとこにいていいんですかい? 今日の主役なんですから、早く王子のドレスを着て、令嬢っぽく変身しないと」


コックのレオが、料理の仕込みを確認しながらニヤニヤしている。


もう!

またからかって!!


「いいの! どうせ変身したって、いつもの私を見慣れてる人しかパーティーに呼んでないもの」

「だからこそ、皆着飾ったお嬢様を見たいんですよ。さぁ、あとは我々に任せて、支度をしてくだせぇ」


レオに厨房を追い出されると、待ってましたとばかりに待機をしていたアイラに捕まった。


「もう、いつまでお料理をしているつもりですか! お嬢様は本日の主役なんですからね!!」


怒られてしまったわ。

でもドレスを着るだけなら、そんなに時間はかからないと思うんだけど。


……などど思っていたリリーは、すぐに反省した。


はい、私が甘かったです。

ドレスを着るのって、こんなに大変なのね……。


厨房から戻ったリリーはお風呂で磨かれ、念入りに髪を手入れされ、ようやくドレスに袖を通したと思ったら髪を結われ、お化粧をされた。

これでは始まるまでにヘトヘトになってしまいそうだ。


「もうこれくらいで良くないかしら? 時間も無くなってきたし」


終わりの見えない様子につい根をあげるリリー。


「これで最後ですから。このバレッタを着けたらおしまいです」


アイラがラインハルトからの贈り物の一つ、金色のバレッタをリリーの茶色の髪に留めて言った。


「出来上がりです! 完璧です!!」


自信満々な表情で、リリーを大きな姿見に映す。

そこには、丁寧に髪を編み込み、ふわりと広がるラベンダー色のドレスに身を包んだ可憐な少女がいた。


「えええっ、これが私!?」


令嬢らしからぬ素っ頓狂な声をあげ、リリーが驚きながら鏡を覗き込んだ。

やはり目を惹くのはラインハルトから贈られたドレスで、見た目は可愛らしいのに普段ドレスを着慣れないリリーに合わせてか、とても軽い素材で動きやすく作られていた。

細やかなラインハルトの心遣いを感じずにはいられない。


リリーの声に反応したかのように扉が開き、待ちきれない様子の家族が揃って顔を出した。


「リリー! なんて綺麗なんだ!!」

「あら、見違えたわねぇ」

「良く似合っているよ。第三王子の見立てというのが引っ掛かるけれど」


お兄様はまだハルト様からドレスを贈られたことが面白くないみたいね。

何を心配しているのかわからないけれど、ミルクスープと猫ちゃんを助けたお礼に決まっているのに。


そもそもドレスを贈られることの重要性や、送り主の髪や瞳の色のドレスがどんな意味を持つのか、田舎育ちのリリーはよくわかっていなかった。

教えるべきか悩んだ末、家族と使用人は口をつぐむことにした。

だって、面白くないからである。

簡単にラインハルトに大切なリリーはやれない。




パーティーが始まった。

リリーは皆にお祝いの言葉を述べられ、軽食をつまみながら楽しい時間を過ごしていた。

幼馴染みのジェシーとオーウェンも、ドレスとタキシード姿で会場に現れた。


「リリー、お誕生日おめでとう! あら、それがラインハルト様から贈られたドレス? とっても似合っているわ!」

「お招きありがとう、リリー。そうしているともう完璧な令嬢だね」

「二人とも来てくれてありがとう。そうよ、これがいただいたドレスなの。オー兄さま、いつもの私は何だと思っていたのかしら?」


いつものように砕けた雰囲気でふざけあう。

しかし、リリーがその場を離れた途端、兄妹の表情は一気に変わった。


「お兄様、あのドレス見ました? 王子ってば、やり過ぎだわ。あんなに分かりやすい贈り物をするなんて!」

「うん、僕も驚いたよ。でもリリーが王子の好意に全然気付いてなさそうなことに一番驚いたけどね」


少し呆れたようにオーウェンは言うと、なんだか屋敷の入り口の方角が騒がしいことに気付いた。


「賑やかだな」

「何かあったのかしら?」


ジェシーとオーウェンは会場の扉に目をやり、同時に二人で固まった。


そこには第三王子のラインハルトが颯爽と立っていた。


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