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脳内ヒーロー洋二  作者: 井田雷左
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第六章 バカが義体でやってくる 10



    10



小林は話し続ける。

「オレが今狙っている女子に告白できない陰キャ男子、か。誰だろうな」

そして小林は女子生徒の名前を次々に挙げた。

その中には当然、麻井藍もいた。

「オレも昔はモテなかったんだ、気持ちは判る。だがそのうちきみにも判るよ、男はそうして大人になるんだよ」

「では、どうして二度も離婚した? 今のアンタならば子どもが二人くらいいて、家族を営んでいるだろうに。それなのに未だ子どもの女を追い求めている。しかも、十年以上」

「男と女には色々ある。別れる時もあれば、続く時も。オレは前者だっただけだ」

「違うね。一般論に解消しようとしているが、その言動にはなんら普遍性は見いだせない!アンタはフィクサーを気取って、子どもの世界を攪乱し、そのあがりで子どもの女を騙している変態に過ぎない。それは趣味嗜好の話であって、一般論ですらない! 特殊な男の性癖だ!」

「おっ、巻き返してきたね。オレこういうのは得意なんだよ。というか、だから、女の子はオレのベシャリにウットリするという実例なんだが。そんな弁が立つ男子生徒がいてくれて先生嬉しいよ! 今のコはもっと弱いと思っていた。モヤシっ子だと思っていた。こんな電話で話しているより、教室で討論とかして、受験や就職の面接、ディベートに役立てようゼ!」

「やはり、判っていないのは、アンタだな。オレも怒りに任せて、この部屋への強襲も考えた。だが、それは必要ない」

「やってごらんよ!」

「教室で討論? なんでそれをしなかった? アンタのは徹頭徹尾、密室芸なんだよ! 自分の能力を自分の欲望を満たすためだけにしか使わない、いや、違うね、人生に先が見えたから、そういう目的でしか動かなくなっただけだ」

「いやいや、校長や同僚を手玉に取り、構築してきたこのシステム! ちゃんと世の中の一角で機能しているじゃあないか!」

「それが密室芸なんだよ! その能力を用いて、革新的な教育理論を打ち立てる、イジメを無力化させる方法論を打ち立てる、そういうことをなぜしなかった? アンタは人の心を操作できるだけで、この世界は動かしていない!」

「そんな理念や方法論を編み出してなんになる? だが相手を論破させることはできるがな。この世界にどこでだって通用する!」

「そうか、やって見せてください」

それは、俗に言うキョトンとした顔だった。

小林はそのような表情をした。

その真空を埋めるように、小林の部屋の固定電話が鳴る。

受話器を取る。

「小林先生」

校長の声だ。

「生徒の親御さん、教育委員会の幹部、文部科学省の官僚、その他もろもろ、あなたの家の電話番号を知らないから私の家に電話を掛けてきているよ。きみの部屋の、きみの全言動は、そういった方々の家のTV画面やPCのディスプレイに放映されているよ」

「!」

左の耳に押し当てた受話器から校長が未だ何か話している。

洋二は、当初ここまでする気はなかった。

録画はしていたものの、小林がこの話を聴かれたくない人々の家の探知とジャックをしていたものの、そこまでの決断をしていなかった。

確かに洋二は未だ子どもであった。

しかし子どもながらにフェアでありたいと思っていた。

だが相手はそうではなかった。

やっていい相手と洋二は認識した。

話すつもりなど、最初からなかった。

見下して、マウント取りに精を出すだけだった。

だから「男のすることだよ」あたりでスタンバイしていた全チャンネルを開放した。

洋二の判断が正しいかどうかは後日、藍も判らないと云った。

でもその決断を攻めることもしなかった。

これは言い訳になるかもしれないが、後の調査で、小林にコントロールされた元女子生徒が、複数名、PTSDの症状が現在発症していることが判明し、幸い未遂だが、自殺を試みた元生徒も数名いたということだ。

これだけの大仕掛けをすることは洋二の側にもリスクはあった。

なによりこれだけのハッキングをする存在が23区内にいるとバレたことだ。

回線を海外経由にして、絶えず移動させ、痕跡は消した。

洋二の能力でこれが限界で、現在の日本の科学力ではここまでは追えないと判断した。

これ以上やると洋二は確実に尻尾を握られるとこまでやった。

だが、今回の事例は野放しにされることはあり得ないのだ。

洋二にはここで初めて、追われる危険性が発生したのだ。

「ぜ、全部、お芝居の稽古だったんですよ! こんな、ありがちな話が実際にあるワケないじゃないですか!? 騙されちゃあ、いけません!」

小林が左耳をつけた受話器にがなり立てる。

右耳にはスマートフォンが以前つけられており、そこからは洋二のこんな声が聴こえた。

「アンタは、オレに負けたんじゃない。アンタの人生、それ自体に負けたんだ」

洋二の電話は切れた。

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