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脳内ヒーロー洋二  作者: 井田雷左
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第五章 抱擁と計画と依頼 8



    8



自分たちがこの大掛かりなイジメに加担していたとは誰もが思いたくないのだ。

私立の進学校の、フツーの生徒で誰もがいたいのだ。

だから、皆で話し合ったワケでもないが、俗情と結託したのだ。

だが、表情を見る限り、何が起ったか判らない!といった表情の者が数名いる。

―アレの中にオレもいたのか。

もう既に洋二は知った側の人間なのだ。

目の前の信夫は無表情のままスクリーンを見つめている。

洋二は信夫を誘って廊下に出た。

スクリーン騒動のせいで、二人を一瞥するものさえいなかった。

「信夫、兼崎たちの江野くんに対する〈アレ〉、なんとかできないもんか」

「ふうん、洋二も気づいたのか。さすがにアレでは気づくよな」

洋二の流した映像はモザイクや目線の入っていないオリジナルだった。

「一人の生徒を皆でからかい・おもちゃにしている。その映像を全世界に向けて配信している。証拠を残しているようなもんじゃないか」

「そうなんだろうが、江野がさ、自分は兼崎たちと仲間だと思い込まされている。将来の夢はお笑い芸人、とか言わされているし、いや、これは逃げ、だな。一矢報いてやろうというヤツはいたにはいたが、兼崎の鉄面皮の前では留飲を下げることすらできなかった」

その中にはおまえもいるんだろう、と洋二は思った。

「小林先生とか教師はどうしているんだ?」

「江野が他クラスに行かせたことだけで、手を打ったつもりだ。それにさ、うちの学校、都内にあと系列があと二つあるだろう。同じように中高一貫のヤツ。ヤバくなったら、それこそ自殺の兆候や登校拒否とかしだしたら、そこに直ぐ転校させるらしいゼ」

洋二はその二校を直ぐ特定し、この数年の転入・転校記録をチェックした。

―該当件数、この一年で四件。少ないのか、多いのか。

この四人を洋二は誰も知らなかった。

「どうすれば、いいんだ、信夫」

「番長がさ、兼崎たち複数名をボコボコにすればいいんだよ」

信夫は笑いながら云った。

―オレ、それ、今なら出来るな。

廊下から階段に上がれる場所には、一階だと上へ行く階段に空きスペースがあって、そこに人気ひとけがあったのを信夫と洋二は今更気づいた。

そこにいたのは藍と江野くんだった。

「ああ、例外がいた。麻井だよ。あいつだけがああいうふうに江野に声をかけている」

木曜の朝、兼崎と寺田から何か又巻き込まれそうだったので、江野に何をされようとしているのかを問い詰めているのだ。

「江野くん、話してよ。私がなんとかするから」

「又先生に、い、い、言うんだろ。そ、それは、」

江野は黙っているが、発言してもたまにどもるかのどちらかだった。

「麻井はさあ、別に江野の相手しているだけじゃなくて、クラスで自習の時に急に『関白宣言』を唄い出した江野を撮影している寺田にもくってかかったことあったよ。二年生の時だから、おまえ知らないだろうが。最近もイス蹴っ飛ばして兼崎を牽制したようだし、麻井だけだよ、ちゃんと動いているの」

その藍の「あ、待って!」は比較的大きな声だったので、二人の耳にも聞こえた。

江野は脱兎のごとく、三人とは違う、隣の教室へ入った。

「鮎川くん、登校してきたんだ」

藍は作り笑いに似た表情を浮かべた。

「江野くんと何話していたんだい?」

洋二は、色々と話したかったが、この問いが精一杯だった。

「魂の取り戻し方、鮎川くんなら知っている?」

困った表情を浮かべる藍。

返答できない洋二。

―オレが無視してきたことをこの子はたった一人で闘ってきたのか!

「二人ともさ、そろそろ一時限目が始まるよ。戻ろう」

と信夫。

うつむき気味で歩く洋二の前に頭一つ分小さい藍の後頭部があった。

―こんな小さい身体で、クラスの悪と闘ってきたのか。

―そういやぁ、考えたこともなかった。

―なんで、麻井さんを好きになったかを。

確かに、そのショートボブの髪型に溌剌とした肢体には草木の美しさに、哺乳類のかわいらしさがあったが、洋二が好きになった理由はそんなかわいらしさだけではなかった。

―オレが気になったのは実にこの子の心だったんだ。

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