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脳内ヒーロー洋二  作者: 井田雷左
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第五章 抱擁と計画と依頼 2



    2



そんな力を最大限に駆使して、住む地域や学校に、君臨しようとする気持ちなど、洋二にはさらさらなかった。

彼にも、大学受験は楽勝!とか就職しなくても済む!くらいの不埒な考えが生まれたものだが、まずは、藍の安全と自分を刺したヤツを把握することが洋二にとっての最優先事項なのだ。

だからまずは飯田安奈のことを徹底的に調べた。

とはいっても既にネットに直結していて、セキュリティなど意味をなさない洋二にとっては瞬時の作業であった。

最初だから突然で驚いたが、今度はその情報を精査したのだ。

現在は単発の仕事を派遣会社で行っていて、住まいは変わらず。千葉の実家とも最近は交渉がない。

いや、それ以外の情報もこの数か月、今までに比べて格段に減っていた。

―そうだ。ネットに上がっていない情報でないとダメなのだ。

飯田安奈はマイナーなSNSに不倫日記めいたつぶやきを多く投稿していたし(それも約半年前にぱたりと止むのだが)、麻井延彦とのメールのやり取りからもその足跡は辿れた。

でもこの半年、おそらく延彦と別れた時期なのだろうが、ネットからの情報が出なくなった。

延彦の会社が入ったビルの受付嬢だった頃と同じ浦和の賃貸に住みながら、安奈は存在しないのも同じだった数か月がある。

―今のオレに少し似ているな。

こうして洋二は安奈の部屋のPCを監視し、ドローンを配置した。

ドローンは数台をネットで支払って購入し、繫華街の店舗で受け取った。

念のため、クレゼンザには藍の周辺を見張らせた。

ひとクラス、約30人くらいは同時に監視把握が可能だという結論に至ったのだが、直ぐに藍が動くまでは予想外だった。

飯田安奈とどのように接触を試みるかは懸念事項だったが、藍がもたらした早苗の件で、こちら側に引き込むという計画に変更した。

それは良い考えのハズだったのだが、思わぬトコでミソがついた。

―飯田安奈の方が妊娠していたとかどういうことだよ。

それには洋二も驚いた。

病院を利用すれば、何かしらのIDの提示が必要だろうに、その痕跡がなかった。

―おかしい、それだけの痕跡を見逃すハズはないのに。

だから、洋二は浦和にある安奈の部屋を直接訪れることにした。

複製生体のヴォイスチェンジャー機能を使って、母親の声にして、高校へ病欠の連絡をいれた。

新宿で乗り換え、ドローンでは通った駅から安奈の住む賃貸へ向かった。

大人っぽくみせようとしたのか、紺のブレザー姿だった。

呼び鈴を鳴らす。

もし居留守を使われるのならば、脳内から直接、安奈のスマートフォンに電話するつもりだったが、ドアは開いた。

チェーンをかけたままの隙間から安奈が顔を出す。

だが無言。

「入っていいか。それとも喫茶店かファミレスに行くか」

ドアが閉まる。

「どうぞ。入っていいよ」

開いたドアの奥から安奈がそう云った。


独り暮らしの女性の部屋に入るのは洋二にとって初めてだったが、部屋内の空気は妙に澱んでいて、何故か臆することもなく、居ることができた。

ダイニングキッチンのテーブルに安奈はペットボトルのお茶を置いて、「こんなものしかないけど」と勧めた。

「僕が判りますか」

「うん。神田川で私が刃物で傷つけた男の子」

「ワンピース買ってくれた人、で憶えているんじゃあないんだ」

「うん。多分昨夜、私に川崎の酒屋へ寄越したコと同じじゃないかとは少し思っていた」

「声、変えていたんだけどな」

「なんか判るもんだよ」

「罪悪感でも生まれたから? 凄く痛かったよ。その後、落ちたし」

「ごめんなさい」

安奈はフローリングの床に正座して頭を下げて、「今でも刺して、あなたの肉体に刃物が入っていく感触を直ぐに思い出せる」と云った。

「ワケは話す気ないけど、無事だ。でもあなたが樸にしたことは許されるものではないし、許す気もない」

正座の状態から、突然立ち上がった時、洋二はむしろ攻撃を警戒した。

武器を携帯している可能性に気づかなかった自分を恥じたが、彼はその直後もっと恥ずかしくなる。

「ごめんなさい。私を、使って」

安奈は洋二に抱きついていた。

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