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脳内ヒーロー洋二  作者: 井田雷左
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第四章 調査と合流と決断 8



    8



勿論、この全ての店の予約と手配は洋二の仕業だ。

同じ男に抱かれた女同士の闘いを設定した以上、自軍を華やかに飾り立てないと負けると思ったからだ。

正直、洋二にしてみれば、この女は殺したいくらいに憎い。

刃物で自分を刺し、不具の身体に墜としてくれた張本人である。

だが、この能力を充分活用できるようになると、不倫女の始末など瞬殺で出来るので、自分で手を汚すようなトラウマ作りは控えるべきだと考えた。

それならば、この安奈という女を徹底的に利用することにした。

先に藍に話したように、ネットの海を完全把握しても、世界や社会を支配したことにはならない。

今のような能力を持った方がそれがよく判る。

さすれば、負い目を自分に持った女を斥候として使った方がいい、なにしろこのような境遇に遇わせてくれた張本人、洋二に罪悪感も起こらない。

反抗的な態度を取らせないために、自分の財力と万能性を見せつける必要があった。

これが安奈に磨きをかけたもう一つの理由だ。

安奈がハイヤーから降りる。

谷口早苗の嫁ぎ先のある最寄り駅だ。

洋二はこの駅にあるビジネスホテルから指示を出していたのだ。

ドローンがこれ見よがしに安奈の周囲を飛ぶ。

安奈のスマートフォンが鳴る。

彼女が電話に出るのと、洋二がドローンのカメラにシンクロして、安奈の姿を見るのは同時だった。

「あ、これは、な、なんという、ほー」

安奈は洋二や藍の年上とはいえ、未だ29歳で、全然若い部類だ。

「この黒いワンピースはあなたの趣味?」

「そうだ、似合っているじゃないか」

洋二は既に気を取り直していた。

「この襟元のロココ調の飾りは私の年齢では少女趣味が過ぎるよ」

「オレに逆らえる立場なのか?」

だが既に安奈は知っていた。

この電話の声の主が良い人だということを。


洋二の仕込みはこの土地でも行われていた。

電話でワインを注文した。

発送先は高校の近所の教会にした。

代金とその折に寄付を表す送り状を部下が持って行くと、造られた喉のヴォイスチェンジャーによる中年男性の声でそう告げた。

この店には大きめのワイン庫がある。

ワイン庫があるということはワインを推しているワケで、高価な瓶が何十本とある。

数万円のものを十本購入すると電話で告げた。

「ついてはそのワインの解説をワイン庫でお願いしたい。ワイン庫としては大きめでも、密室、部下には女性を送るで、そちらも女性スタッフをお願いしたい」と洋二は続けた。


太い客だと思われたのであろう、一階のレジにいる店主は笑顔で安奈を迎えてくれた。

二階にワイン庫はあると云われた。

階段で申し訳ございませんが、と案内されたが、一緒に昇ることはしなかったのは、女性スタッフを所望したから、男性恐怖症とでも思わているのだろう。

二階は洋酒売り場のようで、ウィスキーやラムが所狭しと陳列されている。

奥にあるのがワイン庫のようで透明ガラスのドアは開いている。

開いているならば、上等、とこれも洋二が用意したドローンがつける。

この店の嫁だと洋二から聴いていた女性が出迎えてくれる。

今は谷口姓ではない。

早苗を知っているハズだと洋二(念のため、実際は安奈に洋二は名乗っていない)は云ったのだが、安奈に覚えはなかった。

笑顔の早苗に代金と送り状を渡す。

もう閉店ギリギリの日曜日の夜でも、高価なワインを十本購入したから、機嫌がいい。

今から何を云われるのかも知らずに。

「麻井家にはもう手出しなさらないでください」

最初その笑顔は固まり、直ぐに能面のような表情となった早苗だが、その返事は安奈にとって意外なものだった。

「※※ビルの受付の派遣社員でしょう? 憶えているわ」

フシギなもので、安奈が最初に思ったのは自分はあすこでは派遣社員じゃなくて、正社員だ、ということだ。

早苗としては雇用形態でなく、派遣された社員という意味で使ったのだが。

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