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脳内ヒーロー洋二  作者: 井田雷左
35/80

第四章 調査と合流と決断 5



    5



藍は満足したので、眠くなってきた。

だが、去年の暮れに弟・昭に起ったことを洋二に伝えることは忘れていなかった。

聴き終わると洋二は店員に「レモングラスのお茶」を二つ頼んで、「トイレに行く」と藍には云った。

洋二は既に排泄が必要のない身体だったのだが、人間のフリをするために席を離れる必要を感じた。

―シンクエ・クレゼンサ、谷口早苗だ。

席に着くと、目の前の藍はストローを加えながら、眠そうにしている。

「谷口早苗、お父さんと同じ会社に勤めていたが、去年の秋頃に寿退社している。相手は大学の同級生で、稼業を継いだ時に嫁いだようだ。商店だったから、立派な熊手が必要なようで、その熊手が本店の奥に飾られているのをホームページでみつけた」

そう云い終ると、洋二はスマートフォンでその熊手を見せた。

「なんで! どうして判ったのだ!?」

「言ったろう、スーパーハッカーって。それよりきみのアドを教えてくれないか? 谷口早苗の顔写真を送る」

洋二はここ数週間、聴くに聴けなかったことをサラッと云えて、少々誇らしかった。

お互い、初めてQRコードを使用したので、悪戦苦闘し、ようやく交換できた時は、顔を合わせ、少し笑い合った。

「この人だよ」

声の主は昭だ。

そもそも洋二はこの写メを昭に見せ・首実検するために藍のアドを聴いたのだ。

姉弟が電話で「スーパーハッカーだからか」とか「ドローンで盗撮したんじゃないか」とか云っている。

「弟がそうだって言っている。いちばん気にしていたのは子どもを堕胎したかどうかだって」

「それが判らないんだ。ぼくの出来ることはネットに残ったわずかな痕跡から情報を得ることだが、保険適応外の堕胎手術ではそのアトが残らない」

―さっきまでご飯をもりもりと食べる若いカップルに見えたのだろうが、今ではなんちゅう話をしているんだ。

「私たちの生まれた頃にはもうネットってあったけどさ、私たちの親、その又親であるおじいちゃんおばあちゃんの時代には無くて、せいぜい三十年、いや、未だ二十年ちょっと、こういう時だよね、万能ではないと気づくのは。心の中はネットには書いてない」

「いや、この女性、SNSを匿名で三つやっていて、不倫相手と別れたとか子どもを処分したとか思わせるようなつぶやきか書き込みしていないかチェックしたけど、それらしい思わせぶりは入力してなかったよ」

「鮎川くん、それ、怖いよ」

「すまない」

洋二はこの能力を使って本当は何をしていたのだろうか。

世界征服、日本統一ができるだけのポテンシャルはないから、城や要塞に閉じこもって、周囲の人間を支配したり、マスコミやネットを愉快犯のように飛び回るくらいのことをしていたのだろうか。

未だ若いから、そのような可能性はあったのだろうが、ともかく今はこの目の前の藍の当面の問題を解決することに注視するしかないと判断している。

なによりそうしないと、この身の上になったケリがつかない。

「鮎川くんさ、そんな凄い検索能力を持てたのって、木曜のケガがなくなったことと関係しているんじゃない?」

―!

「だから、その飯田安奈って人をこの四日で探し当てた、さっきの話では監視もしているんじゃない?」

「麻井さんはさっきまで眠た気だったし、その前は美味しそうに食べてくらたけど、やはり、鋭いな」

「未だ話せる時じゃないか」

「うん。納得どころか理解してもらう自信もない」

「私のせいかね」

「僕が好きでやったことに、誰にも責任は取らせたくないよ。そうじゃないと魂が汚れる」

本来ならば、云った方も云われた方も今のセリフは笑うところだが、洋二は真剣に云い、藍は真剣に聴いた。

「いつか話してよ」

「うん。弟くんの疑心暗鬼をまず晴らしたい。うってつけの人物がいるし。その後は飯田安奈だ」

「それは警察に突き出す、ということ?」

「まずは谷口早苗の件を僕に任せてくれないか」

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