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脳内ヒーロー洋二  作者: 井田雷左
31/80

第四章 調査と合流と決断 1



    1



金曜、藍が登校すると洋二は又欠席していた。

少し心配したが、特に誰かに尋ねるワケもなく、アドレスを知らないからメールも送らず、そのままにした。

そんな態度を見咎めたのか、いや、実際に話しかけてくることもなかったが、こちらをうかがう男子がいた。

信夫である。

藍の記憶だと洋二とよく接していた男子だ。

―もし、月曜にも出席していなかったら、あの子に鮎川くんの様子を聴いてみよう。

そして兼崎たちを遠目で見る、藍。

―昨日の今日、江野くんをまたいじめるようなことはしない、か。それとも又何か企んでいるのか。

兼崎家はこのハイソな家庭が多いこの学校で、そこそこ大きい芸能プロダクションを経営していた。

週末はそんな親族経営に今から乗っかりたい兼崎くんとしては、金土日は空けておきたいのだ。

彼が大手動画配信サービスで素人の高校生ながら、それなりのレベルをキープできるのは実家からの機材や小道具を用意してもらい、撮影スタジオを借りられるからだ。

そういう点でも、兼崎とその腰巾着どもがよけい嫌いな藍であった。

その日は、特に何事もなく帰宅すると、まずやらなければならないことはネットで検索することだ。

再度、谷口早苗を検索し、昨日の強襲者の手がかりを見つけなければならない。

父親の会社のホームページを見る、その会社の評判を転職サイトや匿名掲示板で調べる、SNSで何か誰かがつぶやいてないかを読み解く。

それ以外の手がかりでも探したが何も見当たらない。

夕方から初めて、入浴と夕飯以外使って、時刻は気づいたら深夜二時である。

ちなみに、夕飯の時にすっかり昭が元気になっていて藍は嬉しかった。

土日出勤も父親は多いが、明日は夫婦でコストコに買い物をしてくると母親は言っていた。

なれば、父の会社に近寄ったら、実の娘、一発でバレるところ、明日土曜に行ってみるのは得策であろう、と考えながら、藍は眠りに就いた。

藍は起きると昼だった。

小学生の時は生活習慣改善のため、土日でも、温厚な父・母から諭されるように起こされたが、大学受験のため高一から深夜まで勉強する日があると知っていて、大目にみてくれるようになっていた。

藍は眠るのは大好きだが、興が乗ってくると実はいつまでも起きていられる習性も併せ持つ。

母が用意してくれたご飯を食べると、昭もどこかに出かけたためか、さて、今から行くか・どうしたものかと自室でゴロゴロしていたら、又眠っていて、気づけば、十九時、それは父母の帰宅で知った。

土曜の夜は出来合いの惣菜で済ますことが多かったが、どれも皆、美味しかった。

父母はもう夕飯を済ませたいたようで、食卓には藍一人だった。

―料理に凝るお母さんを楽せようと土曜は外食の日になんとなくなったんだっけ。

藍の心には罪悪感が芽生え始めていた。

―父親の秘密を暴くことはこの家族を壊すことだ。

―弟も両親も誰も望まない。

―実際、弟は私に話して気が楽になったようだ。

―あの谷口早苗と名乗る女性の虚言の可能性もある。

―又何かあった時に、動きだせばいいんじゃないか。

今日、一日中眠れたのは両親がこの家を維持してくれているおかげなのだ、と藍は自分に云い聞かせるように思った。

その時に藍が口に運んでいたものは母親が痛めてくれたプルコギであった。

肉でも葱でもない触感に藍の歯は直ぐ気づいた。

―!

右手にその口内の中に入った異物を出す。

それは爪であった。

企業の管理ミス!と藍は思ったが、その推理は物証により、直ぐ拒否された。

―自分の爪にも似ている、この爪の持ち主は!

「藍ちゃん、ドルチェも食べるでしょう」

母の倫が現れた。

「お母さん、ちょっといい」と直ぐに立ち上がり、藍は母親の左手を引っ張った。

そう爪の形状から左手の薬指だと推察したからだ。

あたかも求婚のリングのようにその折れた爪を藍は母の手の甲を上にして、指に合わせる。

「あ、藍ちゃんが持っていたのね。炊事の時に気づいたら折れていて、どこにいったのかと探していたのよ」

藍は母の話の途中に左手の手の甲を下に向けた。

親指の下、母指球に折れた爪が突き刺さった、できたばかりの傷があった。

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