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脳内ヒーロー洋二  作者: 井田雷左
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第三章 帰宅と疑惑と捜索 1



    1



例の木曜の朝、洋二も所属する教室に藍はいた。

時計を見ると、あれだけの事がありながら、実はあまり時間が経っていないことに彼女は驚く。

―おそらくロスタイムは10分以内、5分以上、か。

妙な女性にからまれたことは確かだったが、その後がよく理解できない。

負傷して、落下したように見えた鮎川洋二は、確かに何もないふうに再び現れた。

確かに落下した川辺を見たワケではなかったし、刺されたと思ったが血液を見た記憶がない。

ただ女性が覆いかぶさって刺されたようには見えた。

それも刺したように見間違えたのかもしれない。

すると、洋二がは偶然ナイフを避け、偶然川辺に落ちる前に壁だかに捕まって落下することもなかったということか。

あり得ないことのように思えたが、実際の現実はその解釈しかないようだ。

洋二本人が平気の平左なのだから、藍としてはこれ以上対応のしようがない。

明日洋二に会って話しかけてもその話は進展しないような気もしていた。

―誰と仲が良かったかな。去年私の席の隣にいた男子と、よく話しているようだったけど。超然としていて、話しかけ辛いんだよね。あの子。

この場合は〈去年私の席の隣にいた男子〉が信男で、超然としていると藍に思われているのが洋二だ。

洋二と彼にまつわる今朝の騒ぎのことを考えても、何の得策も生まれないので、次にその朝、自分に刃物を持ち出していた暴漢女性のことを回想していたが、やはり、どうにもどこで見たかを思い出せなかった。

例えば、子どもの頃見たとかそんな古いものでも、どこかで会ったことある、とかではなく、初めて見た気がしない、くらいの淡い記憶なのだ。

こちらも堂々巡りで、何かしら閃くことはなかった。

いつものように机に突っ伏し始めたが、どうも気配を感じて、がばっと上体を上げた。

人の気配、それは隣のクラスの江野くんだった。

廊下を重い足取りで、視線を落として歩いている。

随分早く登校していることに藍は訝しく思ったのだが、それも直ぐに知れた。

―兼崎たちを避けているワケか。

イジメ、というワケなのだろう。

兼崎という同じクラスの少年は仲間約5人で集まり、江野くんの意にそぐわないことをしているのは確かである。

藍や洋二が通うこの高校は中高一貫で、進学率は高く、名門大学への合格者は多く、演劇や演奏が盛ん、でもスポーツではあまり目立たないという、そこそこ中流から上流の家庭の子どもの通う学園だから、体育会系やヤンキーより圧倒的におたく気質な者が多いのだが、兼崎たちはその中にあり、少々違っていた。

ひと言で云えば、悪ガキが少し年齢を経たくらいのものだが、ここがいちばんタチ悪いのだが、巧妙だった。

江野くんから金を巻き上たり、恐喝するのでも、パシリとして使うのでもない、TikTokやInstagramに被写体として登場させるのである。

多くは歌謡曲を振りつけ付きで歌わせたり、昔の芸人の一発ギャグをやらしたりするもので、それは他愛もない、男子高校生のおふざけにしか見えないのだ。

実際、そういったSNSで歌い・踊る江野くんは楽しそうに見える、でも、その録画する前には江野くんは怯えているし、イヤがっている。

更に、個人情報が晒されている。

自分らはモザイク等の処理をしているが、江野くんだけは処理されていない。

一度教師から注意されて、処理はしていても、ブレたり、取れたりがしょっちゅうで、わざとらしいくらい個人情報の撒き餌を動画に出し、学校や家も特定されている。

それは捨て身の芸と思われ、それでも笑われている。

そしてクラスの皆は、一緒になって笑うか、無視するかの二派に分かれている。

かれこれ半年以上続いている。

注意した教師が担任の小林先生である。

その小林先生に相談した藍だったが、彼がおそらくしたのだろう、江野くんは三年になると兼崎くんたちとクラスを離された。

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