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ページ(8) 3ON3


『2人共、おはよう!』


リンさんめっちゃ張り切ってるなぁ・・・


「おはようございます!」


『ねーちゃん、おはよ!』



今俺らは森を抜けてしばらく行った平原に来ている。リンさんはめっちゃ早起きだった為、先に此処で鍛錬していたらしく、少し汗ばんでいる。俺とケンは後から彼女のいるこの平原に来た。どうやって来たかと言えばケンの愛犬、柴犬のタロの鼻のお陰だ。リンさんの匂いを辿って素早くここまでオレとケンを案内してくれた。


それにしても・・・


今日のリンさんは特訓用に白のジャージを着ている。出会って初めての日は作務衣を着ていたから新鮮だなぁ!たかだかジャージと思うかも知れないがめちゃくちゃ似合ってて可愛い!!俺の顔は緩みまくってた。


『シンヤ!何やら余裕の笑みを浮かべているが、気を抜くと死ぬぞ?!』


「えー!?まじすか!!俺今から殺されるのー??てか、全然余裕なんてねーよ!ただ、その・・・」


『ねーちゃんのジャージ姿に見とれてたんだよ、シンにーちゃん!』


な!?


こいつ、俺の心でも読めるんか!?てか、やっぱガキだな!普通の大人なら言わないような余計な事をサラッと言いやがる!思わず俺は顔が真っ赤になってしまった!!


『は、恥ずかしい事を言うな、シンヤ!!』


リンさんが色白の頬をほんの少し赤らめてモジモジと照れた顔を見せている。


なんてこった・・・めっちゃくっちゃ可愛いじゃねぇか!!神様ありがとう、リンさんに出会わせてくれて!!


ていうか、恥ずかしい事を言ったのはケンだけどな!とは言え、この天使の照れ顔を引き出してくれたお前には感謝だぜケン!!


『そんな事は良いとして、まずはお互いの能力をより理解する事から始めたい。実際に使って見せて欲しい!』


リンさんはまだ頬が赤いままで取り繕うように厳しく言った。


『まずはケン坊!お前に出来る事をシンヤに見せてやれ!』


『うん、分かったよリンねーちゃん!』


『シンにーちゃん!オイラの1コめのチカラは動物さんの好きな食べ物を採ってきたり作ったりして食べさせて1日だけオイラの言う事をきいてもらうチカラって前に見せたよな?』


「ああ、凶暴なクマに名前付けて完璧に飼い慣らしてたよな!あれはビビったぜ、正直無敵じゃね?てか餌作ったりもしてんのか?スゲーな!」


『んー、無敵かはわかんないけどタロがいないと出来ないんだあれ。タロが近くにいないとダメなんだ、いちおう、シンにーちゃんの本のチカラと同じでチカラのもと?がタロだからさ。』


「なるほどな、てかそれって俺のも本ないとダメだし、リンさんも刀ないとダメって事か!?」


『刀などと無粋な言い方はよせ、俺は不動だ!!』


あ、そういや口数少ないけど喋る刀だったな・・・いつの間にかリンさんも刀持ってるし!


「あ、ワリィ不動さん!とにかくあんたが居ないとリンさんはチカラが出せないんだよな?」


何でオレ、刀に気ぃ遣ってるんだろう。


『そうだとも言えるし、違うとも言える。』


今度は不動じゃなくてリンさんが答えた。


『不動は普段は私の中に入っていて眠っている状態なのだが、その状態では刀としての不動は誰の目にも見えていない。しかし、不動が居ない状態でも私の力は使える。』


「そうか、考えたらその刀・・・不動さんを持ってない状態で大男の攻撃を防いで更に硬化した手の平で掌底打ちしてぶっ飛ばしてたもんな!」


てか、自分の中に刀入ってるってどういう状況なんだろうな、理屈的にわからん・・・。


『そういう事だ。私の力の詳細はまた後で話す。』


俺やケンとは根本的に能力の使用条件が違うのか。俺の場合は本を出したり消したりするわけだが、消している時はリンさんの刀みたいに俺の身体に入っているとかじゃないのか。ケンの場合は愛犬タロは生き物、元々の飼い犬が能力を持ったと見るべきなのか?じゃあケンはケンでまた別の能力を持ってるのか??分からない事がまた増えた感じだぜ・・・


『話が逸れてしまったな、ケン坊!お前の操れる生物の幅を見せてやれ!!』


『うん、おっけー。まずはこいつ!』


そう言うとケンは上空高くに自慢の腕力で何か食べ物らしき肉?ちらっと肉っぽいものが見えた気がするが速すぎて分からんかった。とにかく上空に投げられた肉に素早く飛びつく・・・鳥!?


「何じゃコイツはーー!!」


そう叫びたくなるのを分かって欲しい。だって、その鳥はめっちゃくちゃデカい!!!


「ウソだろ?!全長20メートルはあるんじゃねーのか!?」


オレがビビり終わる間もなく、その巨大鳥はバビューン!!と急降下してきて俺ら・・・というかケンの前に着地して伏せた。


『こいつの名前はトリーダ!何回かご飯食べさせてたらカンペキに仲良しになれたよ!デカいやつほど仲良しになるまであげるご飯の量がたくさんいるみたいだ。こいつは1日とかじゃなくてカンペキな友だちだよ!』


ニコニコとケンが笑って説明してくれた・・・


「もうお前怖いものなしじゃねぇか!!」


オレがそう言うとケンがまた説明を続ける。


『どうかな?今のとこトリーダが1番大きい友だちだけど、もっと大きい動物さんもいるかも知れないし。それにリンねーちゃん言ってたけど、ほかのチカラ持った人達がどんなチカラかによってもオイラのチカラで勝てるかどうか分からなくなるんだってさ!なんかアイショー?とか言ってたよ。』


「ああ、相性な。それはあるだろうな・・・」


どんな能力でも得意な事があれば苦手な事、弱点はあるはず。それを把握する意味でもお互いの能力を見せ合う必要があるわけか・・・思った以上にリンさんはオレを仲間として受け入れようとしてくれてるのかも!


「オッケーだ!それで今度は一番小さいお友達のお披露目があるのか?」


オレがそう言うとケンはいつも通りニカッと笑って返す。


『もっちろん!もうにーちゃんの肩に乗ってるよ。』


え!ちょっと待て!!


不気味な虫とかだったらどうしよう・・・


オレは自分の肩を見るのが怖くなった・・・・


えーい、でも見なきゃ!勇気を出してオレは自分の肩を見た!!


「ん?おおっ!!こいつはカブトムシじゃねーか!しかもこれ、ヘラクレスオオカブトじゃねーのか!?良かったー、カブトでー!気味の悪い蜘蛛とかだったらどうしようって思ってたわー(汗)」


ん?リンさんの様子がおかしい?なんか顔がこわばってるぞ!?


「リンさんどーかした?」


『い、いや何でもない!!』


「何でもなくはなくね?顔色悪いよ?」


そう言ってオレがリンさんのほうへ歩きだすと、ものすごい殺気が!!


『寄るな!それ以上近づくと私はお前を倒さねばならん!!』


「もしかして虫怖いの?」


オレはそう言って更に間合いを詰めることを考えたがこの殺気にビビって出来そうにない(汗)


うん、やめとこう。死にたくねーわ!!虫もこの殺気にあてられて可哀想だな・・・


「まぁ、とりあえず改めて分かったわ。お前は動物から虫に至るまで色んな生き物と仲良くなれるすごいやつって事がさ!」


『へへ。照れるなー!ほんじゃ2コめのチカラね!』


ん?2コめ?それは見てないやつだな!


『ヘラっち、突撃だー!!』


ヘラっちってこのカブトの名前か?こいつってやっぱりヘラクレスオオカブトか?だからヘラっち??


そんな事を思ったのも束の間、ヘラっち?はオレの肩から離れたと思ったら3メートルほどに巨大化して、(てか、小さいお友達、結局巨大化!)明らかに何も無いであろう空間に体当たり?何かをドン!と車で跳ねたような音と『ぅげぇええぇぇー!!』という男の断末魔、吹っ飛ばされた何かが平原の地面の上をズザザザザーッと音を立てて滑っていく音が聞こえた!!


聞いた事のない男の声だ。

そいつはオレたちの前に姿を現した。人間だ、完全にヘラっちの突撃のショックでノビている。


「マジか、こいつ俺達を狙ってたんか?姿が見えなかったとこ見ると透明になる能力のノゾキ趣味の能力者ってとこか?」


てか、スゲーなケン!まるで某有名モンスターゲット系ゲームの主人公みてーじゃねーか!!


「これがケンの第2の能力か?!仲間にした生物の元々の能力を何倍にも引き上げた上で使える?普通のカブトムシは突然デカくならない。どういう理屈で巨大化するかは分からないけど、身体を何倍にもデカくした上で繰り出される体当たりは人なんて軽くぶっ飛ばす!透明を見抜いたのも視力がほぼない代わりに触覚で匂いを感じ取るカブトムシの特性の力か!!」


『へへ、さすがにーちゃんだな!虫の事も知ってるなんて、昆虫の図鑑とかも読んでるのか?』


「まーな、でもヘラクレスオオカブトってこの星に生息してるんだな?てか、最初に戦った暗闇野郎といい、こいつといいコソコソと卑怯な能力の野郎ばっかに狙われるな!」


役目を終えた事でヘラっちは居なくなり、安心したリンさんがオレ達に近づいてきて言った。


『不穏な気配があったが正確な居場所が掴めなかったので私がケン坊にアイコンタクトして引きずりだしてもらった。ケン坊、お手柄だ!』


『へへ、ねーちゃんの合図、ようやく最近分かるようになってきたもんね!』


マジか!アイコンタクトなんて全然気づかなかったぜ・・・


『あともう1人だ!』


リンさんは目を鋭くして静かに言った。


あと1人俺らを狙ってるやつが居るってのかよ!?


でもここは見通しの良い平原、透明になる能力者がもう1人居るとも考えられない以上、気配はあるのに360度どこを見回してもその《もう1人》とやらは姿が見えない!


どこだ!


どこに居やがる!?


まさか・・・



空!?


オレは雲ひとつない青空を慌てて見上げた!!


いや、


違う。上じゃないのか・・・



そう思った瞬間だった!!


『馬鹿め、下だよ!!!』


モ、モグラ!!?


地面から薄気味悪い青白い顔した男、歳は40代くらいの中年だろうか?手だけモグラの手みたいな形をしている。自分で穴を掘って顔だけ出している、まさにモグラ人間!!そんなやつに足を掴まれちまってる!!


こいつはなんかヤバい!今の足を掴まれてる状況とこいつの青白い顔から放たれている不気味な笑みがオレの危機感を掻き立てている!!相当ヤバい気がする!!


「くそ、離せ!!」


そんな事を言って足を振りほどこうと藻掻いても勝利を確信している顔のこいつが離してくれるわけねぇ!!


こいつの狙いは何だ?こういうヤバい奴は漫画とかアニメでは自爆したり、相手を足止めして自分ごと仲間に攻撃させたりするのがある種のお約束だったりする。でもこいつは人間だ!そんな損な役回りを、ましてや殺しでポイント獲得なんてルールからしてもやる訳はないだろうが・・・


モグラの能力で言ったら地中にオレを引きずり込んだ後で俺を殺すつもりか!?何とかしなきゃいけねぇ!!


どうする!


どうするオレ!?


バトル漫画の噛ませキャラみたいに、こんなところでボロ雑巾扱いされて死んでくのか!?


そんなのは絶対イヤだ!!


イヤだーーー!!!


・・・


ん?


なんか、


死ぬ間際ってスローモーションみたいになるって言うけど・・・なんか長すぎねーか?


あ!


もしかして!!


知らないうちにスロー能力を発動してる!?


よし、どうして発動したのかはよく分からねーが、今のうちに脱出だ!!


オレはモグラ野郎が掴んでいる足を頑張って両手で引き剥がした!とりあえずどうしよう、間合いを取るべきか?1メートルほど後ずさりした後で周りを目視、他に仲間が居ないか探してみる。見たところではこのモグラ野郎以外に居なさそうだが・・・。


とりあえず安心して能力を解除してしまったようだ、みんな動きが普通に戻ってる。


モグラ野郎は怪訝な顔でこちらを見て言う。


『何だ?いつの間にお前、移動した!?瞬間移動能力か!??』


なるほど、1回目に使った時は相手が暗闇能力だったし相手の反応がイマイチ感じ取れなかったが、使われた相手にはそういう認識になるのか!つまり、相手の思考もスローになってるって事だ!相手は突然オレが1メートル後方に瞬間移動したようにしか見えて無いって事!!これはデカイ発見だな!!


でも、短い時間とはいえ1度使っちまった!今日再びスロー能力を発動出来るのはいつだ?まずいかもな!!


『特訓の相手としては申し分無いな!シンヤ、ケン坊!こいつらを倒そう!!』


リンさんが相手にも聞こえるように声高らかに言う!


てか、こいつら?よく見るとさっき透明野郎を捕えて縄で縛ってたはずなのに姿がない!!参ったな、また透明になって隠れやがったのか!?


『御二方もケンちゃんもお気をつけなされ!拙者の鼻ではもう1人、全部で3人居るようでござる!!』


タロがこっそりと小さな声でオレ達3人にそう言う。こういう時、鼻が利く犬が居ると心強いな!


しかし、3対3か・・・まぁ、そりゃそーか。自分達の方が相手より少ない人数だったらどれだけ強い能力でもケンカ売ったりしないだろうから。透明とか地中移動のモグラとか、騙し討ち能力の時点で自分達の力に自信があるとは思えない。相手の能力も分からない状況で騙し討ち掛けて・・・いや、そもそも透明を見破ったのはカブトムシのヘラっちだし、モグラ野郎は仲間を助けに来ただけ?


だったら・・・


「待ってくれ!お前らとオレら、戦う理由無くねーか?オレらさ、ここ来たばっかで何も知らねーんだ!色々知らねー事教えてくれよ!お前らもこんなとこで殺し合いとか変だって思ってんじゃねーのか?」


透明の奴は姿見えないから分からないが、モグラの奴はじっとこちらを見て止まっている。


そして奴は次にニヤリと笑って言った。


『お前ら初心者なのか?じゃあ、チャンスだな!どんな凄い能力でも使いこなす前に殺してやる!!』


人の話、聞く耳無しってか?


「待てって!何でそんな簡単に殺すとか言えんだよ?お前に何の得があんだよ?運営とかってのが言う豪華商品とやらが何かもわかんねーんだろ??」


『フハハハハ!そうか、知らねーのか!それくらいなら良いだろう、教えてやる!豪華商品なんてヌルいもんじゃないんだよ!俺達はこの星で自分の欲望を具現化した能力を使って人間狩りをしてる!!そして最後の1人、生き残った能力者には《そいつの望む願いを何でも》ひとつ叶える事が出来るんだよ!!!』


《自分の望む願いを何でも》ひとつだって?!マジかよ!?そんな事が可能なのか?何でも叶えるなんて、いくら何でも壮大すぎる!!でも、オレらをこの訳分からん星に飛ばして能力まで個別で授けてる《運営》とかって奴らなら何でも出来そうではあるか・・・。


『どうだよ?テメーもちったぁ殺る気出たかよ、あんちゃん!!』


こいつ・・・欲望の塊みたいな野郎なんだな、その目には自分の中にある強い欲望、それを満たす為には何でもやってやるという歪んだ意志みたいなものが感じられる気がする。こうしてオレとゆっくり喋ってるのも獲物をじわじわと追い詰めてどう殺すかってのを考えて楽しんでるって感じだ!!こんな奴を説得しようと思ったオレが馬鹿だったか!!


『にーちゃん・・・』


『シンヤ、分かったろう。こいつらは始めから人と分かり合おうという気持ちを持ち合わせていない。戦って、倒して、拘束しよう!』


2人はオレを心配そうに見つめている。


「よし、分かった!オレも覚悟決めたぜ!!こいつらはオレらの特訓相手だ!ボコボコにしてやる!!」


3人目の敵ってのが何処に居るのか分からないが、こうなったらトコトンまでやって自分の能力の正体を掴んでやる!!



オレ達3人とモグラ野郎、透明野郎、もう1人の敵はまだ姿すら見つけられていないが、3対3の戦いが始まろうとしていた・・・。





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