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ページ⑷ お姉ちゃんに会いに行こう!


「もう後戻りはできんぞ!ほどきかたを忘れちまったからな!!」


うーわあぁぁ!!


キタコレー!!!


なんてカッケェんだよ!!


これで来週まで待てとか焦らしプレイが過ぎるぜオイー!!



最初は小学生くらいだっかな?週間漫画誌で毎週楽しみで楽しみで仕方ない漫画があった。


連載中に何度も何度も読み返して、キャラの台詞もぼぼ暗記できてるほどだった。終了した時の喪失感と言ったら、そりゃあひどいもんだった。仲良く毎日遊んでた友達が急に親の都合で引っ越しして会えなくなる・・・みたいな感じに似てたかも知れない。


それからオレは色々な漫画や小説を読み漁った。新たな友達を探すように!


オレは幸せだった。現実世界で嫌な事があっても本の中の登場人物に会いに行けば何も寂しくなかったし全部忘れられた。


そう、幸せだ!!


オレは・・・


オレは・・・・・


オレは!!


「オレは本を読むのが大好きだ!毎日、本の中の登場人物に会いに行くのが幸せだ!!1日が24時間しかないのが残念で仕方ないぜ!!もっと沢山、長い時間読んでいたいのに!!いっそ、時が止まればとか、時間の流れを遅く出来ないかとかそんなことばっか考えちまうほどによ!!!」


オレは馬鹿みたいな小っ恥ずかしい事を大声で叫んだ!本心をさらけ出す時は大声で天に向かって叫ぶみたいなのもお約束だろ?


『にーちゃん、それだよ!それをもっとココロの中で強く叫んで!!たぶんそれがシンにーちゃんのチカラだよ!!』


ケン、まじかよ!?いや、ケンはオレの目の前で色々とすごい事をもう見せてくれてる、何より純粋なあいつの言葉を疑うまでもねー!!


オレは心の中で時をゆるやかにする、遅くする、オレの1番幸せな読書の時間を味わってる時の何者にも邪魔されない時間、自分の周りの時間は全て遅くなるイメージを作るように、


集中!!


集中!


集中。


集中した。


オレの右手に本が!!


いつから持ってた?本を持ってた覚えはない、よく考えたら寝て目を覚ましたあの時から持っていた記憶がない!オレが今、能力を使おうとしたから本が右手に現れた?


正直、本が現れた事で今、能力が発動しているのかもわからない。何故なら暗闇で何も見えないから目で目視出来る目安が何もないからだ、クソ野郎の動きがゆるくなってるところでも見れたら確信出来るんだろうが、そもそも声だけでオレを殺そうとしてるやつが男だということ以外、顔も体格もわからないじゃねーか。


でも不思議とオレの右手にある本は紛れもなく書店で出会ったあの不思議な本であるということだけは確信出来た!!


そして、だからこそオレは時を遅くする能力が発動していると、この右手の本を信じようという気持ちになってきた。


オレがこの後取る行動はもう決めていた。


時を遅くする能力だと思った、そう決めた、そう信じたその時から!


これはもう賭けだ!どうせやらなきゃ、このワケわかんねー状況で殺されちまうんだ!!


永遠ともほんの数十秒後とも取れるなんとも不思議な感覚の後、その瞬間は来た!!


「いって!」


オレの右脇腹を、恐らく刃物の先だろう、ほんの少しだけチクッと先の方だけ刺した感覚があった!


「今だ!!!」


オレはその刺さった痛みの先にヤツが居るイメージを頭の中に描いて、手探りで腕だけをグッと先の方に伸ばした!身体ごと行くと時が遅くなってるといってもオレの身体に刃物が深く刺さるだろうし、かといって後ろに引いて刃物が抜けると、この暗闇の中でもう二度とヤツの居場所に辿りつけそうにない。


ホントに賭けだ、1番の問題はこの時を遅くする時間がどれくらい続くのか、そしてヤツの刃物が思いのほか長い場合、もしくはヤツが刃物を持って刺しに来てない場合、つまり投げて刺しにきてる場合、完全にこの作戦は詰みだ。


頼む、あってくれ・・・


ガシッ!!


「やった!!捕まえたぞクソ野郎!!!」


オレは刃物の向こう側、この距離で掴めたというこはやはり短刀、恐らくバタフライナイフを持ったクソ野郎の腕を掴む事に成功した!!


オレはそのまま野郎の腕を両手で掴んで思いっきりグーっと力をいれて握った!!


カランッ!!


よしっ!!ナイフが地面に落ちた!!


後は手探りで野郎の身体の後ろに腕を回すようにして思いっきり身体ごと地面に叩き付けてオレは野郎の背中にドンッと尻餅をつく形で乗っかった!


『ぐえっ!!』


オレに潰されたクソ野郎が声を上げる。


「どーだ、ざまぁ!!」


オレは勝利を確信した!もう何があってもコイツは放さねぇ!!


「オイ、とっととこの暗闇を解けよコノヤロー!!」



これで終わりだ、どうやってもこの野郎に逆転はねぇ!!


暗闇から人を襲うクソ野郎の顔を拝んでやる!!


そう思ってた・・・



『クソ!クソ!!クソがあぁぁーーー!!!』


『今回は引いてやる、でもよ、いずれテメーは殺してやるよガキ!お前は俺様の顔を見る事はなかったけどよ、俺様のほうはテメーの顔分かってるからなあァァァ!!』


引く?ナニ言ってんだこいつ?この状況で逃げられる訳ねーだろ??


そう思った瞬間!!


目の前には森・・・


ようやく暗闇が晴れたようだ。


そして!!


「なっ!?オレがしっかり押さえつけてたはずのクソ暗闇野郎が居ねえ!!」



『ヒッヒッヒッヒ!オレ様はまた何時でもテメーを殺しにきてやる!!それまでビクビクして待ってるんだなぁ!!あばよ!!』


上空から野郎の汚ぇ声が響いてその後、辺りは完全に静寂に包まれた・・・


『カンゼンに消えちゃったね、あんな事言ってたけど負け惜しみだよ!にーちゃんは自分のチカラ使って勝ったんだよ!!』


「おう、ケン!ありがとな!!お前のアドバイスのおかげで何とかオレも自分の能力使えるようになったみたいだわ!!」


ほんとケンのおかげで命拾いしたわ・・・


『いや、オイラのコトバだけでチカラ使えるようになるにーちゃんすげーよ!!オイラ真っ暗の中で何も分からなかったんだけど、にーちゃんどうやってあの真っ暗ニンゲンの人やっつけたんだ?』


目を輝かせて興奮した顔でケンがオレに詰め寄る!!


「まず、暗闇の中でシャキン!て音がしたろ?暗闇の中で響くあの独特な音っていったらナイフ、しかも折り畳み式のバタフライナイフを開いた時にする音だろうなって思ったんだよな、野郎はその音でオレにナイフで刺されるっていう恐怖を与える為、ワザとその武器でオレにトドメを刺しに来た。」


「でも、それだけじゃなくて、そんなモン使うヤツは性格もビビりなヤツで腕力には自信がない奴が大抵の場合多いと思ったから、来るならオレに対して横か後ろから来ると予想してた。」


「お前のアドバイスでオレは時間を遅くする能力が発動してくれると信じて、実際能力は発動してたみたいだからよ、後は神経を集中して、横か後ろから自分の身体に痛みが来るのを待って、案の定、横腹からじわじわ痛みが来た、時間が遅くなってるから野郎の動きもナイフの刺さりも遅くなってて、その中でオレの身体はいつも通りの動きが出来るから、後は野郎の腕掴んでナイフを放させて取り押さえた!!」


「ざっとこんな感じだ!結局、暗闇が晴れると同時に野郎は煙みたいに手応えなくなって消えちまったけどな。」


ちょっと子供には難しい説明だったかな?とオレは思ったんだが、ケンは


『すげー!!にーちゃんそんなイロイロ考えて戦ってたんかー?めっちゃアタマいいし、チカラもすごいなー!!オイラにはムリなこといっぱい出来るんだなー!!』


ますます凄い目を輝かせてオレにグイグイと詰め寄って来た!!


「ははは、照れるなオイ。てゆーか、話は違うけどよ・・・」


オレはケンに聞きたい事がある。てか、ケンしか聞ける相手が居ない。


「ケン、また聞きたい事があるぜ!」


「その1、今の暗闇野郎と戦う前に訊ねたお前とタロの能力。オレの能力は戦闘で目覚めたっぽいからいいけど、やっぱ気になる!」


「その2、暗闇野郎の言ってたポイントと人を狩るサバイバルって話!!」


「その3、サバイバルって言葉からもオレらの他にも能力を使えるヤツが大勢居るのか?何人くらいだ??そもそもオレらの能力はどうやって決まってるんだ???」



9歳の子供に難しい質問多いか?


でも、ケンしか今のオレに頼れる人間が居ない・・・


この異星の先輩のこいつなら何かしら知ってることは少なくないはずだ!!


『まず、1コめのオイラとタロのチカラね!』


そう言うとケンは自分の半ズボンのポケットからゴソゴソと何かを取り出してオレに見せた。


「ん?何だこれ?木の実か??」


怪訝な顔で木の実を見つめるオレにケンが二カッと笑って答える。


『うん、でもただの木の実じゃないよ?』


『おっ、さっそく来たよ!』


ケンは何を言ってるんだ?何が来たって言うんだ?


そうオレが思ってケンが視線を向けてる方向、オレの後ろを振り向いてみた。すると・・・


ガルルル・・・



何だあぁぁぁー!!?


振り向いた先、オレの2メートル後ろに熊?いや、熊のようでビミョーに熊とは違うのか?頭には悪魔のような2本の角が生えている!体長はどのくらいだろうか?3メートルくらい?いや、とにかくデカくてコエェー!!


「ケン、やべーよ!なんだアレ?逃げようぜ!?いくらお前でもアレはやべーよ!!」


オレがそう言うと熊のようなその生き物はオレらの方に向かって突進して来た!!


なんだよオイ!!


次から次へと心休まる暇もねーのかよ!!


殺られる!!


そう思った瞬間、


ケンが自分の持ってた木の実を思いっきり投げた!!


木の実はオレの顔の横を凄い速さで横切り、熊の口の中に見事に入った!!


「マジかよ!!」


スピードもコントロールも凄すぎて笑えるわ!!


いや、しかしコレが何の解決に??


『クマジロー!!』


森中に響くようなデカい声でケンは叫んだ!


そして、


『お手。』


今度は急に落ち着いた声で言った。


お手?だと??


何イイィーーー!!


信じらんねー!!デカくて凶暴でオレらなんて一瞬で殺せそうな熊の化け物がケンにお手してる!!!


催眠の類いで嫌々させられてるって感じじゃない、飼い犬のように穏やかな顔で完璧にケンに懐いている!!

・・・かと思えば今度は熊が伏せてケンに頭をヨシヨシと撫でられてる。


「はは・・ははは・・・は・・・・」


もうオレは笑うしかなかった。


ん?コレがケンの能力?じゃあ・・・


「ケン!お前の能力がこの動物を操る力だって言うのか?じゃあ、あの凄い槍捌きとか身体能力は何だよ?あれは元からあるお前の力で不思議な超能力とかじゃないのか?」


オレがそう問うとケンは答える。


『木の実はこのデビルマークってクマさんの好物だよ。木の実のニオイにつられて来たんだよ、オイラのチカラは動物さんの好きなものをあげると1日だけ動物さんが何でもオイラの言うこときいてくれるようになるってチカラだよ。』


『それから、オイラもともと体育とかトクイだから体動かすの自信あるよ、でもヤリの上手な使いかたはオイラのししょーに教わったんだ!』


なるほど、ケンって・・・


やっぱ・・・


生まれついてのバケモン、チート子供だ!!


動物を1日だけでも完璧に操れる上に自分も強いとか、ヤバすぎんだろ!?


あと、うん?ししょー?


・・・師匠??


「ちょっと待て!ケンの師匠が居るのか!?お前より強いって事だよな!?」


『うん、オイラよりゼッタイ強いよ!はじめて会ったのはオイラがこのホシに来てからだから3ヶ月まえだね!』


やべーな、槍術を教わって3ヶ月であれだけ達人レベル(少なくともオレにはそう見える!)の技を身につけるケンは充分にチートなのにそれを上回るバケモンが居るのか!!


『あ、じゃあ会いにいく?タロのチカラとか、サバイバルのコトとか、ほかの人のコトとかオイラじゃ分かりやすくセツメー出来なそうだし、きっとおねーちゃんならちゃんと教えてくれるよ!』


え!?


お姉ちゃん??ケンより強いヤツが女!!?


やばい、ゴリゴリの脳筋ゴリラみたいなやつかな!?そいつ、能力何だろ?筋肉操作とかかな??


まー、でもそいつが知ってるなら会いに行くしかねーな!


「よし!会いに行こうぜ!!」


『うん!じゃあ、おねーちゃんに会いに行こう!!』


『タロ!!』


ケンがタロの名前を呼ぶと巨大化したタロが物凄いスピードで来てオレらの前で急ブレーキ、伏せた状態で待っている。


ケンはタロの背中に飛び乗り、オレも置いてかれはしないだろうが慌ててタロの背中に飛び乗った!


そして、オレら2人が完全に背中に乗っかったのを確認するとタロは猛スピードで走り出した!!



さて、今度はケンの師匠と会うのか・・・その女に会えばこの星でオレが何をさせられようとしてるか、わかるのか?



不安と期待にオレの胸の鼓動はドクン!ドクン!!と速くなっていた。



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