ページ⑶ 闇の中
オレとケンは一緒に小屋の外へと飛び出した!
「なんだこりゃ!?」
オレは思わず叫んでしまった!!
オレ達2人の目の前にある光景、それは・・・
完全なる真っ暗闇!!
夜の暗闇とかそんなもんじゃなく、本当に何の影も形も見えない、完全に真っ黒な黒。
「おい、ケン!居るか?オレの目が急に見えなくなっちまったのか?オレには目の前なんも見えねーんだが??!」
『シンにーちゃん、オイラも同じだよ!でもこれはおかしいよ!!だって、今はまだお昼のはずなんだ!急に真っ暗だし、オイラは目がいいほうだから夜でも少しは見えるはずなのに!!』
ケンは狼狽えた様子でそう言った。そして更に続ける。
『あんまあれこれセツメーする時間なさそうだからカンタンに言うけど、たぶんこれオイラ達の話を外で立ち聞きしてた人のチカラだとおもうよ!』
「マジかよ!暗闇を作る能力とかあんのかよ!!」
それってめっちゃヤバいんじゃねーのか?外でオレらの会話を立ち聞きしてて、オレらが外に出た途端にその暗闇の能力使うって、少なくとも敵意はあるよな?
いきなりこんな闇の中でバトルとかしないといけないのかよ!!
『にーちゃん、あんま動かないほうがいいよ、ワナとかしかけてあったら危ないし、この真っ暗な中ではぐれちゃったらオイラもにーちゃんもやばいよ!?』
「確かにな、わかったぜ。だけど、どうするよ?その、敵?でいいんだよな?そいつの位置とかわかるか?」
オレがそう尋ねるとケンは焦燥したような声で言った。
『それが・・・わからないんだ。』
『オイラ、ニオイで人のだいたいの場所とかわかるんだけど今はぜんぜんわからない。ニオイを消してるのかもしれないし、ニオイがわからないくらい遠くまでいってからチカラ使ってるのかも!』
「やべーな、お手上げじゃねーか!てか、そもそも何でオレ狙われてんだ?オレじゃなくてお前が狙われてんのか?オレらの話聞いてたヤツの目的って何だよ??」
マジわけがわからねー!相手の目的もそうだけど、オレはここで何すりゃいいんだ?謎が多すぎて混乱してるオレに答えを提示してくるように突然、暗闇の中で薄気味悪い声が響いてきた!!
『ヒヒヒヒ・・・
いい反応だな!教えてやろう・・・お前は!お前らは!!
これから殺されるんだよ!!』
??!!
「何でだよ!?そんなことして何の得があんだよ!?何モンだよ?何で知らないやつにいきなり殺されなきゃいけねーんだよ??」
『落ち着いて、シンにーちゃん!きっとこの真っ暗をつくった人のねらいはポイントだよ!!』
焦って暗闇の能力の主に対して叫んでいたオレにケンがそう言うと、今度は暗闇の主が俺に続ける。
『正解だボーズ、どうせお前らは死んじまうけど俺様は寛大だ。教えてやるよ。』
『ここじゃ人が人を狩るサバイバルやってんだよ。1人殺すにつき、10ポイント手に入る。100ポイント貯めるまでサバイバルからは抜けられない!!
ボーズ!大方、お前もそのマヌケな新入りを油断させてブチ殺そうとしてたんだろ?助けたふりしてよう、お前もたいがいヤベェよなぁ!?』
なっ!?サバイバル??
殺し合い??
てか、それもだけど!!
「ケン!ホントか!!?
お前、オレを騙してたのか?」
『ちっ、違うよ!!落ち着いてシンにーちゃん、オイラは騙してなんかない!!会ったばっかで、むつかしいかもしれないけど信じて!』
確かに会ったばかりで誰でも彼でも信じるのは難しい。落ち着け、オレ。この場合、あからさまに信じられないのは不意打ちで真っ暗闇でオレらを殺すと宣言してきてる暗闇ヤローじゃねーか!!
「悪い、だよな!オレは暗闇からオレらを殺すとか言ってるクソ野郎よりオレを森で助けてくれたお前を信じるぜケン!!」
『シンにーちゃん!信じてくれてありがとう!!大丈夫、オイラ達に真っ暗のヒトの場所はわかんないけど、それは向こうも同じはずだよ!』
「そうだなっ・・・」
ガンッ!!
オレが言い終わると同時くらいにオレの右頬に何かがぶち当たった!!
「痛ってぇーーー!!」
『どうしたのシンにーちゃん、大丈夫!?』
「大丈夫・・だ。かなり痛かったけど、立ってられないほどじゃねーよ。多分何かで殴られたみてーだ。」
ケンの心配を振り払うようにオレが言って、すぐにまたクソ野郎の声がした。
『ヒヒヒ・・・
分からないと思ったか?お前らの居場所が!
分かるんだなぁ、これが!!』
『考えても見ろよ、この真っ暗闇を作ってるのは俺様だぜぇ?真っ暗闇に潜むってアドバンテージがあるのにそれを活かせなきゃイミねーだろーがバァーカ!!』
ドカッ、バキッ、ドボッ!!
「ぐぁっ!!」
調子に乗りやがって、ボコボコ何発もどついて来やがる!ホントにムカつく野郎だ!!
オレは暗闇の中でサンドバック状態で顔や腹を殴られ続けた。
『シンにーちゃん!!』
ケンがオレを心配して狼狽しているのが声で分かる。
『シンにーちゃん、ごめん!オイラ、戦いにタロを巻き込みたくないから小屋の中に留守番させてるんだ!連れて来てたらタロの鼻で真っ暗の人を探し当てられたかも知れないのに!!』
「大丈夫だ、ケン!お前がタロを大切に思ってるのは見てれば分かる!!まだ会って時間は短いけどよ、動物にも人にも優しく出来るお前が悪い人間なわけねーよ!それによ・・・」
どうやら武器の類いは使ってないっぽい。拳で殴ってるみたいだ。意外とオレは落ち着いてる。この野郎は案外力は強くないみたいだ、顔面はファイティングポーズを取って守り、身体に力をグッと入れて耐えてれば腹をやられてもなんとか耐えられる!
『ヒヒヒ・・・』
より一層嫌味を増した笑い声。勝ち誇ってるような上から目線の笑い声だ!
『それに・・・何だ?コイツ、力は強くないな、これくらいなら殴られても耐えられる、か?』
オレの胸の中が締め付けられるように苦しくなった!心臓の音が速くなったのが自分でわかった!!嫌な予感が背筋を凍らせた!!
『何でただ殴るだけだったか教えてやるよ、すぐ殺したら面白くないだろ?じいっーくりと、いたぶって追い詰めてよ、ほんの少しだけ希望を与えて、それを刈り取るんだよ、ヒヒヒヒヒヒヒ!!!』
野郎はそう言うと、
シャキィン!!
やばい!!
何か刃物の音だこれ!!!
こ、
殺される!!!!!
『ヒヒヒヒ・・・闇はいいよなああぁ
闇はいいよぉぉぉぉ・・・
闇にかかれば誰もが無力だよ、闇を愛する俺様以外はなあぁぁああ!!』
なんて野郎だ!!
何か無いのか?
異星に来てこれから楽しい冒険が始まるんじゃねーのかよ?
それが人殺しサバイバルゲーム?
こんなイカレ野郎に殺されて終わり??
普通はこういうのって主人公がすごい能力に目覚めて形勢逆転ってのが漫画でもラノベでも王道展開じゃねーのかよ!!
ん?
そういや、
「ケン!!オレのチカラって何だ!?どうすりゃお前が言ってたチカラが使えるんだ??あるんだろ?オレにもこの暗闇ヤローと同じような特別な力がよ!!」
オレは自分の能力への期待と、この状況から助かりたいという気持ちでケンにすがるように叫んだ!!
ケンの返答は俺の期待に反して意外なものだった。
『ケンにーちゃん、いちばん好きなことは何!?』
は??
「いや、お前!質問に質問で返してんじゃねーよ!!てか、それどころじゃねーし!!ゆっくり雑談してる暇なんてねーんだよ、殺されそうなんだぞオレ!!!」
『いや、にーちゃん、大事なことなんだ!!にーちゃんのチカラに関係あることなんだよ!!』
マジか!!
「趣味は読書だよ!3度のメシの時間以外は読書だけして生きて行きたいくらい、いや3度のメシも本読みながらの時も結構あるくらい好きだよ!!」
これがオレの最後の言葉になるんだろうか・・・冴えない台詞だったな・・・
『それだよ、にーちゃんのチカラは何か本に関係あるチカラだよ!!本を読んでる時、どんな気持ち?どんなことを考えてる??』
そうだな・・・
そりゃあ・・・・・