7話 哨戒任務
あれから暫く経つ。
私達は、第3方面軍の基地へ着任してからは掃除や洗濯等をやらされている。
やはり学院からの徴兵部隊という事なので、人道的観点からもあまり表だって任務を任せられないと言う事らしい。
生徒の皆はあの戦闘を経験してからか、文句を言う生徒は少ない。
飛行訓練の間に基地内の掃除や洗濯を行っている状態だ。
基地の人達は案外優しい。制服をビシッと決めた軍人さんが暇なのかよく話かけてくれてる。
「ありゃ憲兵サマだぜ。俺達がイカツイ軍人さんに乱暴されない為に見張っててくれてるんだ」
いつもなら「こんな事やってやれっか」と不機嫌になってるエルヴァンが珍しく大人しい。
やっぱり戦争は人を変えるとかいうけど、本当なのかな……。
「早く空にあがりたいわ」
そういうのはシャロディさん。
「そういうな、これも任務だ」
たしなめるゴトウィン。
二人は晴れて私達留年部隊……じゃなくてスフィアゼロ部隊に編入となった!
まずスフィアゼロ部隊への変名が認められた事、そしてなぜか二人がスフィアゼロに編入されたのだ。
先生も死んじゃったので、別に咎める者も少ない為、変名はスムーズにできた。
そしてオネスト隊が二人を残して全滅してしまった為、二人は好きな部隊に行けるようになったのだが
「リーナさん。名家の私が、貴方に負けるなんてそんなの認めないわ!!」
と何故か対抗意識を燃やしてこっちへ来てしまった。
「スフィアゼロとか貴方にしては格好いい名前ね。気に入ったわ」
と、素直に褒めてくれるシャロディさん。
「これエルヴァンが決めたんだよ。ね。格好いいよね。スフィアゼロ」
「あ、あらそうなの……ふん、エルヴァンにしてはいいセンスね」
「よせやい褒めても何も出ないぜ」
そんな会話があった。
ただ一人ゴトウィンは
「リーナとエルヴァンの飛び方、一体どんな訓練をしたらできるんだ?」
と、とても不思議がっていた。
あ、ちなみにシャロディさんはスフィアゼロ03。ゴトウィンはスフィアゼロ04です。
私はスフィアゼロ01。エルヴァンはスフィアゼロ02。
読み方は『すふぃあぜろぜろわん』。絶対スフィアだけになりそう。でもいいと思う。
さて、そんなこんなで、なんと今夜は夜間の哨戒任務を与えられました!
と、言っても駐屯地の南方あたりの哨戒任務、正直敵のいない平和な空域。とりあえずそこ辺りからちょくちょく代わりをして、正規の魔導士達の負担を軽減するらしい。
<星が綺麗ね>
<ああ、まるで戦争しているのが嘘のようだ>
そんな訳で夜間飛行。シャロディさんとゴトウィンがそんなロマンティックな話をしている。
ちなみに哨戒任務は4人でやってる。他の人達も別の場所を哨戒してる。
<油断するなよお二人さん。ここは安全だが、西じゃ今も湾岸防衛隊がドンパチしてるからな。ここも敵が紛れてこないとも言い切れないんだぜ>
エルヴァンはそう言って嗜める。
あれ、それゴトウィンが言うべき台詞じゃない?
<すっかり副隊長が板についてるな。エルヴァン>
ゴトウィンがそう言ってみせる。
<ええ、生意気な感じね>
シャロディさんもそう悪意のないように言う。
<フフッ、副隊長サマだぜ俺ぁ>
エルヴァンはそう笑ってみせる。
うーん、いつものエルヴァンだ。
最近妙に副隊長風を吹きまくってるエルヴァン。戦争の熱に浮かされているのだろう。多分。
≪……付近を飛行中の魔導士に継ぐ。こちらバーウェア防空司令部。聞こえるか。4体編隊の飛行隊≫
あれ、なんか通信魔法が入った。
<はい、こちら第3方面軍の哨戒隊スフィアゼロ部隊。バーウェア防空司令部どうぞ>
少し南に行き過ぎたのかな? 戻った方がいいかな?
そう思っていたけど、どうも状況は変化してしまったようだった。
≪すまないが貴隊は我々の指揮下に入ってもらう。緊急事態だ≫
その言葉に隊の3人はびっくりする。
<指揮権の変更? そんな急に……>
ゴトウィンが焦るように言う。
<首都防衛司令部には緊急時には付近の飛行隊を強制的に引き入れる権限があるからな……で、どんな緊急事態なんだ?>
やけに詳しいエルヴァン。あれ、そう言えばエルヴァンのお父さんって軍の偉い人だっけか。だから詳しいのか、なるほど。
≪理解が速くて助かる。バーウェアへ向かって大規模な爆撃隊が向かってきているという通信がリーワース海岸防衛隊よりもたらされた。貴隊には悪いがこの爆撃隊の捕捉と迎撃を行ってもらう。これは命令だ≫
<第3方面軍司令にはそちらで説明していただけるのなら喜んで承服します>
≪ふっ。それなら任せて貰おう。こちらもすぐに迎撃隊を出す。ではスフィアゼロ隊、よろしく頼む≫
そう言って通信が終わる。
<カッコイイ声だったね。さ、スフィアゼロ隊、そういう訳だから哨戒任務は終了。バーウェア防空任務に移行。全員海岸へ向かって海へ出てね>
そう言って私は全隊に指示を飛ばす。
<やれやれ。ルーシャー島とリーワースを抜けてきやがったみたいだな>
エルヴァンはそう疲れたように言う。
<だが大規模な爆撃隊と言っていたな……これは大規模な作戦らしいな>
<腕が鳴るわ!>
そう二人が言う。
<やーでもさ、やっぱりスフィアゼロって名前いいね。ありがとうねエルヴァン>
<なに、俺も参ってた所だったんだ。もう『リピート』は沢山だってな>
うん? なんか留年に力入ってない?
<さ、隊長。行こうぜ。俺らの力を見せてやろうぜ!>
<そうだね、うん、行こう!>
そんな訳で、月夜の夜、私達は戦地へ向かう。
続く。
とりあえずの戦況図。
リアルの世界情勢の変化が、テト式の感覚を研ぎ澄ましていく…!
結構書けば書けるものなんすね。小説。