20話 ハンプールの鐘は鳴る。
我々スフィアゼロ隊は地上のクヴァ―ラ隊と共に北上して敵防衛陣を突破し、敵司令部への攻撃を目論んでいた。
その目論見は
<このバトルキャットすごいよ!!ファントムファルコンより速ーい!!>
というリーナ隊長の呑気な台詞とは裏腹の苛烈な攻撃により順調に進んでいった。
通常のヘルファイアランスや地上攻撃魔法を行い、迅速に敵の対岸防衛陣を破壊していく。
ゴーレムが多い堅固な陣をあっという間に壊滅させていくリーナ隊長。
相変わらず凄い。
だが俺達も負けずと攻撃を行い、どうにか手柄を全てリーナ隊長に取られないように努めた。
俺とシャロディ以外の05から09のスフィアゼロ隊もそれなりの戦果を挙げている。
<よし。通信施設っぽい所をやった!こいつで状況を把握されずに済む!>
エルヴァンは部隊の施設を破壊してそう言う。
<大分壊滅できたんじゃないのか?>
俺はそう言って周辺を見回す。
先ほどまで確かにゴーレムの多い強固な防衛陣であったが、今では見る影もない戦場跡である。
<もう壊滅させたのか!? 凄いなスフィアゼロ隊!お前達の支援を受けれてよかった!>
地上部隊の通信が聞こえる。
<よし、じゃあトリア隊の支援に行くか?>
<そうだね。早い所片付けて終わらせよう!>
エルヴァンとリーナはそう言いあう。
<調子に乗るなよスフィアゼロ隊。油断してると敵の対空攻撃で落とされるぞ>
<スワロウ隊!学院部隊の連中に負けるなよ!地上部隊を支援してハンプールを開放するんだ!!>
何故か随伴する事になった一人部隊のクロウ隊と8人部隊のスワロウ隊の面々がそう言いあって攻撃を行う。
クロウ01は口は悪いが、それは概ね『我々が学院部隊だから』という理由が第一らしい。なんだかんだ言って助言を行い、手を貸してくれている。
スワロウ隊もクロウ01と違って全面的に肯定的で、隊員も隊長の言葉に励まされて攻撃を行う。
なんだかんだ言って、気が付くとトリア隊、クヴァ―ラ隊の進行方向の部隊を概ね撃破してしまっていた。
そう、強固な防衛陣を敷き、対空ゴーレムも幾らか存在していたのに、もう撃破してしまった。
副隊長のエルヴァンがリーナに指示を飛ばし、リーナがそれに応じて地上部隊を攻撃する。
時折、敵の航空魔導士の襲撃があるが、ことごとくリーナが撃破している。
<スフィアゼロ隊、こちらクヴァ―ラ隊。前方に河川と敵司令部を発見、攻撃を準備するので、その前にそちらが攻撃をして混乱させていてくれ>
先ほどの地上部隊クヴァ―ラ隊が地上支援を要請している。
<よし!じゃあ皆、敵司令部に攻撃しにいくよー!>
いつもの調子の声でリーナ隊長はそう言う。
<慌てるなよ。地面ギリギリで飛べば敵索敵には引っかかりにくい。できるならやった方がいい>
クロウ01がそう言ってみせる。
<よし、じゃあ超低高度、というかほぼ土の上を走るみたいに低く飛んでね>
そう言ってリーナは超低空の最高速度で敵司令部を爆撃を行う。
本当に地面スレスレの最高速度。
あんな芸当、俺にはできないかもしれない。
敵司令部はサイレンも鳴っていない状態であったが、そこにファイアランスというヘル系の攻撃魔法をおこない火柱が2つあがり敵司令部自体に緊張と衝撃が走ったのを感じる。
<よしっリーナが始めやがったな!!>
<私達も続くわよ!>
エルヴァンの後にシャロディが言う。
シャロディとエルヴァンはウマが合わないと思っていたが、最近は妙に仲がいいような気がする。
そもそも、最近のエルヴァンが何やら妙だ。
……主にリーナへの世話を焼く姿が最近多い。今までもそれとなく世話を焼いていたが、最近はそれが躊躇だ。それでいてさりげない。
それに前は全ての現象に噛みつくような印象だったが最近は肯定的に物事を受け入れるようになっている。前はそれこそ急に雨が降るものなら「雨なんか降りやがって!」と悪態をつくような奴が「ま、雨雲にだって都合はあるさ」と言うような具合である。
我々が基地を一通り攻撃し終わった時、既に基地からかなりの量の対空攻撃が放たれる。
しかしリーナは落ち着いた様子で、それらの対空要員らを丁寧に攻撃していく。
その様子はまるで一種のゴーレムか何かように、無機質的に、だがある種の慈悲であるかのようであった。
<法撃用意が整った!60秒後に法撃を行う!座標を言うから巻き込まれないようにしろ!>
そうこうしていると地上のクヴァ―ラ隊が法撃を行うようだ。
<スフィアゼロ隊、一旦攻撃を止めて上空に避難。私が攻撃を引き付ける>
リーナの指示が来る。
<スフィアゼロ01。何を言っている? この期に及んで引き付ける必要なんか……>
<クロウ01。気にしないでくれ。ただの趣味みたいなもんさ>
<趣味?>
クロウ01は不思議そうな声で尋ねる。
誰だってワザと撃たれるような真似をして、趣味のようなものだと聞かされたらそんな声も出す。
<帰ったらウチのセンコーに聞くといい。スフィアゼロ……いや、留年隊がどんな経緯で結成されたかをな……。リーナはただセンコーの言う事を馬鹿正直に聞いてるだけなのさ。最初からな>
<留年隊結成の、本当の意味?>
俺はエルヴァンの言葉に疑問を抱き、聞き返す。
<8、7、6、5……………てえーーー!!!>
だが、返答を聞く前に法撃が始まる。
えぐれる大地と立ち上るキノコ雲。高火力の魔法が命中したのだ。
今の攻撃で基地の3分の1が消し飛ぶ形となる。
<おー。派手だな!>
エルヴァンが話を逸らすように言う。
<まてエルヴァン、まだ話が……>
俺は言う。
<スフィアゼロ隊!畳みかけるよ!ついてきて!>
だがそれはリーナによって阻まれる。
<どうやらおしゃべりしている暇はなさそうだ。行くぞ04>
<私も留年隊結成の真実が気になるわね。後で聞かせて頂戴02!>
<ああ、生きてたらな!>
かくして俺達は敵司令部攻撃を続けた。
幾度となく攻撃を重ね、ついに敵の反撃が完全に止まり、粗方基地の原型がなくなり、クヴァ―ラ隊も法撃をやめて突撃を行うようになった頃。
≪今、ドゥア隊がハンプール市内へ入ったとの連絡が入った!市内での抵抗はほぼ皆無だ!市民達も歓迎している!敵の司令部も壊滅状態だ!我々の勝ちだ!≫
味方司令部からの通信が入る。その声は興奮と歓喜に満ちていた。
耳を澄ますと、ハンプール市の方から鐘の音が聞こえてくる。
ハンプール市中央の一角にある搭にある大きな鐘であろうか。確かハンプール市はそれが観光の名所になっていたはずだ。
<って事は作戦大成功?>
リーナはきょとんとした声で言う。
≪ああ!スフィアゼロ隊よくやってくれた!貴隊がいなければ解放は無理だっただろう!≫
<司令部。あまり学院隊を褒めないでくれ。調子に乗る>
≪クロウ01も良くやってくれた。今日ぐらいはお前も喜んだらどうだ≫
<ふん……まぁいいさ。それよりもスフィアゼロ01。今度あんなことをするなよ。身を挺して攻撃を受けるなんて、正気の沙汰じゃないぞ>
<ああ、あれは流石にどうかと思ったぞ、スフィアゼロ01>
クロウ01とスワロウ01が口をそろえて言う。
確かに、言われてみれば隊長自ら敵の攻撃に晒されるなんて聞いた事がない。
そう思案していた時、ふいに通信が入る。
<こちらクヴァ―ラ隊!北から何か来るぞ!うわ>
そんな通信が入った瞬間、クヴァ―ラ隊がいる所が爆ぜた。
<ファイアランス!?一体どこからだ!>
俺は叫ぶように言う。
≪高速で接近する敵魔導士隊複数! これは……シリウス隊!!≫
味方の司令部からの通信が入るのと、シリウス隊が高速で接近し、戦闘となるのはほぼ同時であった。
鐘の音が鳴り響くハンプール市郊外の空で、激戦が行われようとしていた。
つづく




