19話 鉄作戦の破綻。そして
「フェッルム作戦の破綻。それが今回の敵反攻作戦の原因、か……」
ハンプール市外に存在するファーナー帝国軍の司令所において老齢の総司令官はそう小さくつぶやく。
眼前には部下たちが慌ただしくモニターを見て通信用魔法水晶で指示を飛ばしたり状況把握に努めている。
「やはり先の攻勢は無理があったようです」
側に控える補佐官がそう囁くように言う。
「確かに、敵首都爆撃に失敗した時点でフェッルム作戦を終了し、新たな作戦を立案すべきであった。
だが、功を焦る陸軍の強い要望で第3作戦を強行せざるを得なかった。これは私の責任だ……」
「攻勢に失敗した陸軍に責任があると思われます」
補佐官の囁きに、総司令官はフルフルと頭を振る。
「陸軍がどう、制空軍がどうなどと言うのは愚行だ。全ての責任は総司令官である私のみにあるのだよ」
「しかしそれでは司令官の身が……」
「私の身など元より帝国と神に捧げている。それに、その為の総司令官職だ? 違うのかね?」
ギロリと補佐官を睨みつける。
うっ。となる補佐官であったが、すぐにそれも終わる。
「Gポイント防衛陣に敵部隊が渡河を開始したとの事です!」
通信手がそう叫ぶ。
「よし。Gポイントの部隊はA-3ポイントに引いてA-2部隊、Bー1、2部隊とで袋叩きにしろ」
「了解!」
総司令官の命に、通信手はそう言って指示を飛ばす。
「まさか三角州中央部分の拠点を先に取ろうとするとは……」
「うむ。敵は何を考えている……?」
「いずれにせよ、時間を稼いでいればロブリックよりシリウス隊が到着します。それまで耐えましょう」
「うむ……それはそうだが……」
そう二人が話し合う最中、新たな情報が舞い込む。
「B-2部隊との通信途絶!!」
「D部隊とも通信ができてません!!」
その報告は、確実に場の空気を一変させた。
「制空魔導士にBポイントとDポイント地点がどうなってるか問い合わせろ!それと並行して敵の襲撃に備えろ!直衛部隊をすぐに上がらせろ!!」
総司令官が叫ぶ。
「まさか!D部隊はゴーレム隊ですよ!防衛陣も完成しています!抜かれるなんて事は」
「そのまさかが起こるのが戦場なのだよ新人補佐官!!!」
そう怒鳴った時、索敵手が悲鳴のような声をあげた。
「て、敵影!距離1000……え、速っ!?500! 接触今!!!」
その叫びが響くのと、爆音と破壊的な振動が襲ったのはほぼ同時であった。
「敵襲!!!」
誰かが言う。
鳴り響くサイレン。木霊する悲鳴。
老将は直ぐにその場に伏せ、衝撃に耐えた。
「な、何故発見が遅れたんだ!?」
補佐官が遅れて伏せながら叫ぶ。
「制空魔導士は、地表ギリギリを高速で飛べば発見が遅れる事があるのだよ。そんな事も分からずに私の補佐官に就いたのかねっ?」
「自分は憲兵上がりであります!」
「ゴマ磨り兵の間違いじゃないのかね? まぁいい!対空戦闘はじめ!!!」
そう立ち上がり、指揮を始める総司令官。
外では対空用に調整されたハイ・サンダーアローの魔法水晶がはめ込まれた固定式杖で攻撃を行う者や、ヘル・ファイアーランスの魔法水晶がはめ込まれている固定式杖で攻撃する者が奮闘していた。
「デーストルークだ!デーストルークが出たぞ!!」
攻撃を行う兵士がそう叫ぶ。
<デーストルーク!? あのローブの化け物が!?>
<くそっ!ありったけの魔法を叩き込め!>
対空部隊の面々の通信はそのような内容の会話で満たされていた。
<だ、駄目だ!後続のデーストルークの仲間に……!>
爆音と共に通信が途絶する。
<畜生!ここを叩かれたら防衛網が崩壊するぞ!!>
<D部隊が迅速に下がって防衛する筈じゃなかったのか!>
<D部隊は全滅させられたんだ!敵によって迅速に!>
<一体どこのどいつがやった!?>
<上空のデーストルークによって殺られたんだよ馬鹿ッ!!!>
などと、通信で叫び合う基地防空隊の面々。
≪こちら副司令。これより総司令官は脱出なされる。これにより当基地はハンプール市内へ移動し、徹底抗戦を行う。防空隊は可能な限り時間を稼げ≫
そんな中、上層通信が流れてくる。
<おい!これって!>
<あの副司令!そんなに市街戦がやりてぇのか!!>
<無駄口を叩くな!それより攻撃が……>
その瞬間、基地の地面が爆ぜた。
否、えぐれた。のだ。
<法撃!? もうそんな近くに敵が来たのか!?>
<制空部隊はどうしてるんだ!?早く敵を追っ払え!!>
<ちくしょう!あともう少し耐えればシリウス隊が来てくれるってのに!>
敵制空魔導士の強襲、その制空魔導士の正体の判明、そして法撃による基地への攻撃により、ハンプール方面司令部は壊滅に向かっていた。
つづく。




