15話 現代知識で無双したかった。したかったんです。
「君がスフィアゼロ隊の隊長。リーナ・アークライト……だね?」
第3方面軍防衛作戦から数日。基地内では慌ただしく作業に追われ、私達学院部隊も物資をあちらこちらに運ぶ任務を手伝わされていたが、この日は制服姿で基地司令の所へ行けと言われた。スフィアゼロの3人も連れて、とも。
そんな訳で来てみたら、基地司令の他に、いつも暇そうに私達に話しかけてくる妙に軍服が真新しい憲兵とされている人と、明らかに偉そうな、それでいて優しそうな目をしたおじいさんがいた。
偉そう。というか、多分絶対偉い。だって胸に一杯バッジ? が付いていて、軍服が明らかに今までの軍服より質がいい。御鬚もよく手入れがなされている。
あと、エルヴァンのお父さんもいた。こっちは明らかに護衛兼御付きの軍人さんだね。護衛兼御付きの軍人さん達は数人いた。
流石の私だってそんな人達が目の前にいるのだから、背筋をピンとする。
でも、なんかどこかで会ったような気がする。どこだろう?
「はい、自分はリーナ・アークライトです」
ビシリ。と敬礼を行う。
「楽にしたまえ」
おじさん軍人はそう威厳ありありで言う。
「いや、すまない。いきなり私のような偉そうな者が居たから驚いた事だろう。こちらも、少々驚いていてね……」
おじいさんは苦笑いのようなはにかむ仕草をする。
「私はデルバート・マッカロク・プロタゴー。この国の航空魔導軍の総司令官にして、現王の叔父をやっている。君たちは学院部隊なのだろう? なら動員式で私の姿を覚えている者もいるだろう……そこのパールコヴァ嬢も、よく知っているようだね」
「ま、まさかデルバート閣下が直々に来られるとは……」
なんと!あのシャロディさんが完璧に恐縮している!
そうだ、このおじいさん。動員式に居た白い軍服の人だわ。王様の横に居た人だ。
「君たちは学院部隊の、動員兵でありながら、先の首都バーウェア防空任務と先日の大規模攻勢の阻止作戦に従事し、目覚ましい活躍をしたようだね」
「は、はい。……あ、あの。駄目だったでしょうか……?」
あれ、なんか私、またやっちゃいましたか。
「駄目じゃない。むしろ大変良かった。
先の敵首都爆撃作戦はこちらの厭戦感情を濃厚にし、指揮系統に混乱を与え、そして今回の大規模攻勢で一気に首都制圧に乗り出す気だったようだ。
それを君たちは打ち砕いてくれた。礼を言う」
凛とした声で、確かにデルバート閣下はそう言った。
「いえ、当然の事をしただけです」
「そうか、当然の事か……そうか……」
その言葉に、閣下は申し訳なさそうな顔をする。すごく悲しそうな顔とも言える。
「? 何か?」
「いや、君たちのような未来ある少年少女たちを、戦争に巻き込んでしまい、大変申し訳なかったと思ってな……」
「……そんな」
うん、確かに。もっと本職の人頑張ってほしかった。
でも、急に攻め込んできて反撃する準備が整う前に北部を奪取されてしまったというのも大きく、責めるに責められない状況である。
なので、そんな……と意味ありげな言葉でやり過ごす。折角の御好意である、無下に「自分としては留年回避の為に頑張る事ができて良かったです」と言う必要もないだろう。
「なに? 留年……?」
閣下が耳を疑うような顔で見る。
やばい!!!!!!!!!!!
思わず本音を言ってしまった!!!!!!!!!!!!!!
どうしよう皆!!!!!!???
あ、駄目だわこれ。皆「それ言っちゃう?」みたいな顔してる!!!
エルヴァンに関してはもう「あーあー。言っちまったよこの馬鹿」みたいな顔だ!!!!
「え……パールコヴァ嬢。留年しそうだったの……?」
あ、閣下が素になった。そんな気がする。
「いえ、これはそのあの。話すと長くなるのですが、そのあの。とりあえず留年しそうなのはリーナ隊長とエルヴァン副隊長で、私達はあのその、部隊が壊滅したので、合流編入といいますか、あのその。はい」
「ああ……そう……」
シャロディさんの決死の説明に、納得をするデルバート閣下。パールコヴァ家のシャロディさんがまさかの留年という訳ではないので、安心した様子である。
「ん!? 留年しそうだったのかい? リーネくん、君が!?」
「え。ええ。はい」
しかし何かに気が付いた閣下からそう問い詰められる。
「何故!? 一体君ほどの能力を持つ人間が何故!?」
「え、ええと……その、あの……言いにくいのですが……テスト中、寝ていまして……0点をですね……はい……。確定の段階まで逝ってしまいまして……ははっ」
乾いた笑いしかでない。
国の空軍元帥さまに自分の留年を告げるとか、恐らく私ぐらいだと思う。
「ね、寝ていた……?」
「はい……起きてれば100点取れるのですが……どうしても…寝てしまうのです……」
「何故……? テストよりも重要な物でもあるのかい?」
「はい……夜通し、発明というか研究をしていまして……」
「なんの発明なのだい?」
「……魔法を使わずに宇宙に行く……乗り物……の動力部分……」
うん、白状するけど、実は私、ロケットエンジン作ってたんだよね……。
最初から説明すると、ぶっちゃけ意味がない。もうやりたいからやってるってだけ。
だってこの時代、もう魔法で宇宙に行けるのだ。
というか、通信魔法を任意の場所に反射する衛星ゴーレムがいくつも上がっているこの時代、魔法を使わずに宇宙へ行く乗り物を造るとか正直賢い人間がやる事じゃない。
でもやりたいじゃない? 現代知識で無双する奴。 いや、無双じゃないけど。
「魔法を使わずに宇宙へ? 可能なのかい?」
「はい……人間が溶けるレベルのヤバイ液状薬剤等を大型飛行船並みにデカいタンクに入れて、液体にした酸素をこれまた大きいタンクに入れて……推進部で混ぜると、爆発というか……いい感じに燃えるので、それを利用して宇宙まで……」
「人が溶ける液状薬剤…」
「正直……魔法による宇宙船を作った方がいいレベルでして、あのその」
等々、色々と話そうとした。
「いや、待て。その話はまた今度。大変興味深い話だった」
でも閣下はそう言って手で静止する。
「君が何かすごい発明をしているのは理解できた。……それで、失礼だが、魔力の数値はどうなんだい? 隊長ともなれば高い筈だが……」
閣下は続けてそう言う。
「低いですよ。自分。261です」
「に、261!? 何かの間違いではないのか!?」
私の言葉に閣下は驚き、御付きの軍人さん達も驚く。
「パールコヴァ嬢、失礼だが君の魔力数値は……」
「私は974です」
シャロディさん結構高い。
「じゃあ隣のゴトウィンくんは……」
「自分は1021であります」
ビシッと敬礼して宣言するゴトウィン。
「俺は561。今はどうかは知らないが」
じゃあ……と振られそうになったのを見てエルヴァンは先に言う。
「で、君は?」
御付きの軍人さんの一人を指す。
「1511です」
そんな具合に、部屋にいる全員の魔力数値を聞く有様だった。
「誰か、誰か測定器を」
閣下はそう言う。
なんとも、妙な流れになってしまった。
というか、私の運命、これから一体どうなっちゃうの……?
つづく。
宇宙へは、専用のブースターさえあれば理論上、ほとんどの飛行船で行けます。
しかし専用のブースターは大変作るのが面倒で金もかかり、飛行船も宇宙という特異な環境を生存する為に宇宙船と呼ばれる程に特化したものになり、大勢はいけない感じです。
しかもなろう世界特有の固定概念の弊害で、そのブースターを船ではなく、大量破壊魔法の魔法水晶をくっつけた棒を飛ばして相手の国に墜とすと言う発想がありません。
衛星ももっぱら通信の中継目的で使っていて、雨雲レーダーは地上からでも割と広範囲をカバーできるし、偵察も魔導士が高高度を頑張って飛べばどうにかできるからです。
という事にしてください。




