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報告92 中間テストの結果報告

【1】


「よぉ…。終わったのか?」


 水上と大塚が教室を出ると、1人の生徒が大塚に声をかけてきた。大塚は、驚いた顔で言った。


「え?大崎くん!?どうしたの?」


そこにいたのは、大崎だった。大崎は2人に言った。


「隣の空き教室で勉強してたんだよ。そしたら、偶然お前らがいたからさ。ほら、帰るぞ。」


「うん。」


大塚は、大崎にそう言って付いていった。水上は、大塚の嬉しそうな表情を見て、複雑な気持ちを抱いていた。


「大崎…。一緒に帰りたいってちゃんと言えばいいのに。」


水上は、そう呟くと2人に追いつくように早足で歩いていった。



 水上、大塚、大崎の3人で帰っている道中、大崎は水上に言った。


「お前、いつも北沢と帰ってなかったか?」


水上は、ばつが悪そうな顔をしながら言った。


「別に私が誰と帰ろうが自由でしょ!!」


「そうかい。なら良いんだけどよ。」


「それにしても、なんか久しぶりだね。この3人で帰るの。一年生の時以来だよ。」


大塚が言った。


「そうね。この3人で帰ってたわね。懐かしいかも。」


水上が言った。


「お前ら何言ってんだよ?でも、そうか…そうだったな。やっと俺は抜け出したんだな…。」


「大崎くん?」


大塚が、大崎の顔を覗き込みながら言った。その様子を見て大崎は少し焦ったように言った。


「な…なんでもねーよ。」



【2】


 次の日の放課後、今日の練習は昨日の練習とは異なり、男子は別の空き教室を使って練習することにした。空き教室に連れて行くと、上野が私に尋ねた。


「なあ、北沢。何で、男子と女子を分けたんだよ?」


「ああこれか?この方が練習しやすいからだ。今日から、しばらくの間は、男女別々に練習するぞ。全体での合唱練習は、その日の最後に2〜3回だけ行う。」


「そんな、練習回数でいいのか?」


他の男子が私に質問した。私は、淡々と答える。


「これには、いくつか理由がある。まず、少ない人数にする事で、練習効率が上がる。人数が多いと、指示を通すだけでも大変だからな。次に、女子がいない分、女子のパートにつられてしまう事がなくなる。」


「でも、最終的には女子と一緒に歌うんだよな。女子パートにつられないように練習しないとダメじゃないか?」


「いや、いきなりそれをやっても上手くいかない。慣れてきてからでいいさ。それに、女子パートのCDを流しながら練習するだけで充分だしな。」


「そうか!それなら、当日までに何とかなりそうだな!!」


「さて、まずは男子パートの音源を流しながら、練習するぞ。」


 男女を分けてからの練習は、目論みどおり比較的順調に進んだ。ただし、しばらくの間だけだろう。必ず中弛なかだるみが起こるからだ。ともかく、今後も様子を見守るとしよう。


「じゃ、俺帰るわ!」


 その日の練習が終わると、私は真っ先に学校を飛び出し、スクールに向かった。



【3】


 私は、いつものように事務室の扉を開けた。その直後、事務室のソファーに座っていた弟が私の方を向き声をかけてきた。


「兄さんお疲れ様。合唱祭の練習は、うまく行ってるの?」


「まずまずだな。それより、届いたんだろ。」


「うん。」


弟は、そう言うと封筒を掲げて私に見せてきた。私は、デスクには向かわず、反対側のソファーに腰掛けた。


「それじゃ、開けるよ。」


弟はそう言うと、封筒の中に入っていた書類をテーブルに広げた。私は、その書類に記載されている数字の羅列を食い入るように眺めた。


「うむ。平均点がかなり高いな。これは、全員の内申点がかなりアップしそうだな。」


私たちが眺めていたのは、今回の中間テストの成績一覧表だった。学校と連携している学習塾ということで、生徒全員の成績を送ってもらうことにしたのだ。どの教科も私の目論み通りに得点がアップしているようだった。


「で…成績上位者が…。…なんだと。」



 私は、驚きを隠せなかった。私が一位ではなかったのだ。その状況に弟も困惑した。


「兄さん。確認なんだけど、今回は本気を出したんだよね?」


「ああ。全教科満点取るつもりでやった。現に、5教科平均が95点を超えてるだろ?」


「じゃあこれって…。」


「ああ。とんでもない化け物が誕生したな。」


一位の欄には、大塚の名前があった。彼女は、今回のテストで社会以外が全て満点という、とんでもない点数を叩き出していた。私は、この状況に思わず身震いした。


「これは…青葉でも見たことないぞ、こんなに出来るやつ。今度から私が、彼女の授業担当しようかな?めちゃくちゃ教えたいのだが…。」


「あと数年で、兄さんの学力超えちゃうんじゃない?」


「大学入試の偏差値で私を超えるのも、1・2年あれば十分だろうな。」


私たちは、大塚のあまりの出来に興奮を禁じえなかった。その様子を感じてか、事務室に桜が入ってきた。


「あ、塾長お疲れ様です。学校のテストの結果帰ってきたんですね。私の担当している生徒はどうでしたか?」


桜は、テーブルに広げられた成績一覧表を見て私に言った。


「え?大塚さん。先生より順位上じゃないですか!?確かに勉強できる子だな、とは思いましたけど。」


「ええ。ここまで出来るようになったのは、想定外です。後は、外部の模試の結果が楽しみですね。」


「…あの、もしかしてこの子も北沢先生と同じって事あります?」


「いや、それはないと思いますよ。そんな感じはしません。あくまでも勘ですが。」


「本当ですか?それはそうと、先生に聞きたいことがあったんです。」


「ん?なんでしょうか?」



「先生は、生徒から告白されたことありますか?」



「………!」



いつも、最後まで読んでいただきありがとうございます。

感想がありましたらお待ちしております。ブックマーク、レビュー等頂けましたら嬉しいです。よろしくお願いします。

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