報告86 なぜ二学期は成績がとりやすいのか
北沢先生の補足
この話は、2020年の学校事情を基に書いたものです。また、筆者の見解なども含まれますのでご容赦ください。
【1】
私と水上が特訓を続けて10日程が経った。私たちには、合唱祭の前に取り組まなくてはならない課題があった。中間テストである。クラスの雰囲気は完全に中間テストムード一色だった。
合唱祭は、中間テストが終わってから2週間後に行われるため、生徒たちがテストにも合唱祭にも集中しやすい日程になっていた。もっとも、教員はテスト、合唱祭、成績処理を同時並行で準備をしなくてはならないのだから、地獄以外の何物でもないのだが。ここ最近の業務が過酷なのだろう。飛田の顔が、少しずつやつれてきている。私は、休み時間の時間を使って、飛田に声をかけた。
「飛田先生、大丈夫ですか?なんかやつれてますけど?」
「ああ、北沢さん。この時期は、本当に忙しくてね。しかも人員が1人欠けちゃったし。殺人日程よこんなの。」
「ですが、生徒にとっては、勉強にも行事にも集中出来るように日程組んでありますね。」
「そうなんだけどね〜。それより、うちの学年の子達は、今回のテストも取れそうかい?」
「ええ。かなり成績が取れると思いますよ。なんと言っても、調査書に関わる大事なテストですからね!!」
飛田は、ニヤニヤしながら私に言った。
「そうですか。それは助かります。ところで北沢さん!今度もテスト2位なんてことはありませんよね?」
「油断をすると負けてしまうことが、分かりましたからね。流石に2連続はありませんよ。」
「そうですか!もっとも私としては、北沢さんに負けてもらった方が面白いんですがね。」
(…………………こいつ…。)
【2】
その日の放課後、今日から合唱練習は、しばらく休み、水上に数学を教えることに専念することにした。私はいつものように、マンツーマンで面倒を見ようとしたが、その時後ろから声が聞こえる。
「よお、北沢。今日は俺たちも参加して良いか?」
私に声をかけてきたのは、上野だった。その隣には大塚も一緒にいた。
「珍しいな。いつもスクールの自習室使ってるんだろ?」
私がそう質問すると、大塚が答えた。
「千歳ちゃんがね、たまには一緒にやろうって。」
「水上?お前が呼んだのか?」
私は、水上に確認した。
「うん。気分転換になるかなって思って。(毎日、数学徹底的にやられてキツいし…。)」
水上はそう答えた。
「わかった。分からないことがあったら、俺に聞いてくれ。」
私たちは、机をくっつけて勉強を始めた。しばらく机に向かっていると、上野が突然、
「それにしても懐かしいな、この感じ。」と言った。
私は、笑いながら上野に言った。
「なんだよいきなり。」
上野は、私の言葉に答えるように言った。
「だってさ、この4人で集まるのって修学旅行以来じゃないか?最近、受験勉強やら、クラスのことやらでそれどころじゃなかったじゃないか。」
上野がそう言うと、大塚も賛同した。
「そうだよね。本当に、いろんな事があったね。」
私も、2人の言葉を聞き、少しの間だけ感情に浸った。そしてまた、我に帰り二人に言った。
「何言ってんだ。まだまだ、やるべき事は山積みだぞ。」
私がそう言うと、水上が意地悪そうな顔で私に言った。
「そうよね。北沢、塚ちゃんにテスト負けちゃったもんね〜。」
「…それ、今言うか!?競争も大事だが、やるべき事をやるだけだ。」
私たちは、そうして他愛のない会話を交えながら、机に向かって勉強するのだった。普段のこんな日常が、かけがえのないものである。…なんて、すごくありきたりな謳い文句だが、大人になってから時間を過ごすことが一度でもあっただろうか?私の頭の中で、そんなありきたりな時間が、生暖かい空気が、漂い続けるばかりだった。
しばらく時が流れ、そろそろ最終下校時刻になろうとした時だった。水上がボソッとつぶやいた。
「ところで、先生たち口を揃えて言ってたけど、今回のテストってそんなに大事なの?」
私は、その言葉に対して、まるで脊髄反射の如く言った。
「もちろんだ。受験に大きく関わる。」
「それは、私みたいに私立の一般入試だけの場合でも?」
大塚が言った。これは、一つ説明しなくてはいけない。私は、手を止め身を乗り出しながら言った。
「それじゃ、今回のテストの重要性と高校受験の仕組みについて、教えよう。」
【3】
「まずは、今回のテストが調査書(つまり、志望校に提出される内申点)に大きく関わるんだ。」
「でも、それはどのテストでも一緒だよね。」
「確かに大塚さんの言う通りだ。だが、今回と次回のテストは、成績を取らせるために、難易度が下がりやすい傾向にあるんだ。これは、公立中学校だとよくある事で、今回と次回のテストで点数を稼ぎやすいのだから、稼がせてもらおうと言うわけだな。」
「でも、内申点が大事なのって、都立だけだよな?」
「上野…。お前、先生の話をちゃんと聞いてたか?私立の推薦入試や公立併願優遇(滑り止め)受験をする際には、内申が必要になるだろ?これは、内申点の基準(例えば、5教科の評定を合計して15以上など学校によって基準が定められている。)さえ満たしていれば、ほぼ合格できる入試だ。」
「え!?そうなのか!?」
「ああ。しかもこれは、高校の先生と中学の先生がこっそり約束をしているものになるから、よっぽどの事がない限りは合格できる。」
「へー。先生たちそんな事しているんだね。」
「そして、その約束をする日は、東京都の場合、12月15日以降となっている。学校によっては、約束はこの日のみとしている学校もあるから、先生たちはこの日までに、生徒の私立学校の受験校を確定させたいんだな。だから、学校探しにずっと迷ってると、この約束が結ばれなくなるから、気を付けた方がいいぞ。時々、約束せずに爆死する奴いるしな。」
「なにそれ!怖い!!」
「さてと、次は私立の一般入試と内申点についてだ。これには、私立学校が抱えている、とある事情にも関係してくる。」
「…とある事情?」
「そう。とある事情とは、生徒の確保が難しくなったと言う事だ。」
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