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報告81 教師の朝の行動観察

【1】


 次の日の日曜日、私はとある洋食店に来ていた。


「北沢さん。お疲れ様でした。」


私に声をかけたのは、飛田だった。私はこの日、彼に食事に誘われていたのだ。


「こちらこそ、ありがとうございました。それより、いいんですか?ご馳走になってしまって。」


「ええ。あなたには、協力してもらいましたし。結果として、北野さんを追い出すことも出来ましたから。」


飛田は、目の前に置かれたオムライスを一口食べながら言った。私は、飛田に尋ねた。


「それで、明日から、うちのクラスの運営はどうするんですか?」


飛田は、持っていたスプーンを静かに置いてから、口を開いた。


「しばらくは、私が担任の代わりをします。三者面談も私の方で対応しようと思ってます。何か意見があれば、後日言ってください。」


「わかりました。」


「それで、これからどうするんですか?」


「……?」


「これまで、あなたはクラスの生徒のために、走りっぱなしだったでしょう?そろそろ、自分の進路は決めましたか。」


「そうですね…。ひとまずは、青葉学園に進学してひっそりと見守ろうかと思っています。」


「都立高校への進学は考えていないと?」


「ええ。」


「北沢さん。どうですか?先の話にはなると思いますが、もう一度公立の先生になってみるというのは?」


「…それは、あまり考えていないですね。わかばスクール経営しちゃってますし。」


「確かにwww。公務員は、副業禁止ですからね。そうだ。北沢さん。今日は聞きたいことがあったんです。」


「何ですか?」


私がそう言った次の瞬間だった。今まで、穏やかな様子だった飛田の表情が、急に真剣なものになった。


「北沢さん、どうして北野さんに青葉学園の紹介状を書いたのですか?」


「…授業は、文句なしですからね。」


「彼女のことです。トラブルをまた起こすかもしれないですよ?」


「その可能性は、否定できませんが、それでも英語の偏差値は上がるでしょうね。まだまだ、あの学校も人材が揃っていないので、地盤を固めたいと言うのが正直なところですね。」


「…そんなに進学実績が大切ですか?」


「それが利益に繋がるのなら、悪魔だって雇いますよ。それが今の私立学校です。」


「今の…ですか…?私には、理解し難いですね。」


「ですが、競争の無い世界では、良いものは生まれません。私たちが思っている以上に難しい問題かも知れません。」


 私は、ただの世間話のつもりでそう言ったが、それにしても飛田の表情は真剣だった。私は、どうにも温度差を感じてならなかった。その証拠だろうか、私は料理を全て平らげていたのに対して、飛田は、オムライスに全く手をつけていなかった。



【2】


 次の日の朝、私はいつもよりも早く学校に向かった。ほとんどの生徒は、おおむね8時前後に登校する。一方で、今日私が校舎に入った時間は、7時を少し過ぎたあたりだった。私は、教室に荷物を置き、職員室へと向かった。


 職員室の扉を開けると、ほとんど先生が出勤していた。教師の朝は早い。学校にもよるが、8時15分までに出勤するのが一般的だ。しかし、仕事の多さや部活動の朝練習指導などの理由で、6時台に出勤する者も少なくはないのだ。私は、その風景を眺めて、もはや懐かしさすら感じていた。さて、物思いに耽るのはこれくらいにしておこう。私は、飛田の元に行き声をかけた。


「おはようございます。」


「おはよう。どうしましたか?」


「はい。そろそろ来る頃なので、伝えておこうと思いまして。」


「来るとは?」



「失礼します。」



別の生徒が、職員室に入ってきた。私は、その生徒を見て飛田に言った。


「おや…。もう来たみたいですよ。」


「ま…まさか!」


飛田は、その生徒を見て驚きを隠せない様子だった。



【3】


 8時20分、朝の会が始まる5分前の時刻、私は一人の生徒を連れて教室に入った。その生徒を見て、クラスの生徒たちがざわついた。大塚が私たちに近づき言った。


「大崎くん…?学校に来たんだね。」


私が教室に連れてきた生徒は大崎だった。大崎と初めて出会ってから、4ヶ月が経っていた。本当に長かった。大崎は大塚に言った。


「大塚…久しぶりだな。」


 いつもと違う朝は、まだまだ続いた。間も無くして、朝の会が始まる時間となった。生徒たちは、自分の座席に着席し待機していた。


 間も無くして、教室に入ってきたのは、北野ではなく飛田だった。飛田は、簡単な連絡をした後に言った。


「最後に、大変急ではありますが、北野先生は別の学校に移ることになりました。今日からは、私が担任の先生の代わりをしますので、よろしくお願いしますよ。」



 飛田が、去った後に上野、水上、大塚が私の元に寄ってきた。


「北沢…やっと終わったんだな。」


上野が言った。


「何言ってんだ。これからが始まりだ。それに、受験勉強で忙しくなるのは、これからだぞ。」


「それを言うなよ〜。」



 だが、私はすっかり忘れていた。私には、まだ乗り切らなくてはいけない試練がある事を…。


それに気づいたのは、その日の学活の授業だった。



いつも、最後まで読んでいただきありがとうございます。

感想がありましたらお待ちしております。ブックマーク、レビュー等頂けましたら嬉しいです。よろしくお願いします。

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