表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/135

報告77 人間関係が引き起こす不毛な連鎖について

【1】


 神田と話し終わり、自分の座席に戻ると上野が私に声をかけてきた。


「北沢!お前、何考えてるんだよ!!今まで神田に何をされたのか忘れたのか?」


「いいじゃないか。もう、やらないって約束してくれたし。」


「だからって、あんなやつほっとけば良いのに。」


「…なあ、上野。みんなを責めるつもりは、これっぽっちもない、神田自身にも悪いところは沢山ある。でもさ、あいつがあそこまでタチの悪い人間になってしまったのは、俺たちにも原因があるんじゃないか?もっとも、良い悪いは別だけどな。俺は、許すことにしたし、放置する事もしない。上野に英語を教えたときと同じようにな。」


「……北沢が良いって言うなら、良いけどよ。まったく、お前はすごいよ。」



【2】


 その日の放課後、私は神田をスクールに案内した。彼は今まで、スクールの授業に参加したことは一度もなかった。それは、北野がこのスクールをさんざん否定していた事が1番の原因なのだろう。彼の授業が終わった後、私は神田に話しかけた。


「どうだった?はじめての補習授業は?」


神田は、疲れた顔で言った。


「いや、めちゃめちゃキツイ…。みんな、毎日こんな授業受けてるのかよ!」


「どうやら、集中力がなかなか持続しないようだな。今度、そのことについても説明する必要がありそうだな。ああ、そうだ。朝教えてくれたアイテムの話さ。やっと手に入れたよ。ありがとうな!」


神田は、少し呆れた顔で私に言った。


「学校出てすぐにゲームかよ。優等生ってそう言うのしないと思ってたけど、そんな事ないんだな。」


本当は、大崎に話を合わせるために始めたスマホゲームなのだが、まあいいだろう。私は、彼に続けて言った。


「みんな、同じ人間だからな。みんな大して変わらないさ。だから、今、勉強で悩んでたってそんな差は、あっという間に埋まるさ。(中学校ならなおさらな。)」


神田は、私の言葉を聞いて、少しうつむきながら言った。


「みんな同じ…あいつらも…。」


神田はそう呟くと、勢いよく外に飛び出していった。



「あいつどうしたの?」


水上が、私の後ろからヒョコっと顔を出して、私に言った。


「さあな。何考えてんだろうな?今から帰るのか?」


「うん…そうなんだけどさ。」


水上は、そのままこちらを見ている。その目線は、まるで、某ゲームで有名な「仲間になりたそうにこちらを見ている」のそれだった。今日は、特に業務も残っていないしいいだろう。私は、水上に言った。


「じゃ、一緒に帰るか?」


私が言った瞬間、彼女の顔が明るくなった…いや、もう光とか出てるんじゃないだろうか?



【3】


 暗い夜道の中、私と水上はいつもの通学路を通って一緒に家に帰っていた。私は、何となく水上の顔色を伺った。はじめて会った時は、仏頂面で言い方のきつい子だったが、一緒に過ごしてその印象は、かなり変わっていた。それは、私自身の感じ方だけの問題ではなく、実際彼女自身も変わったのだと思う。ちょっと可愛らしいと不覚にも思ってしまうことがあるくらいだ。私が、そんな失礼な考え事をしていると、水上が私に向かって言った。


「ねえ、北沢?今日は神田と仲良くしてたみたいだけど、何を企んでるの?」


「水上も気にしてたのか?…水上は、あいつの事をどう思ってるんだ?」


「私は嫌いだよ。」


「うわ。また、ずいぶんとはっきり言うじゃん。」


「私ね。北沢が来る前は、部活で一番強かったんだけど、一年生の時は、一番じゃなかったんだよ。」


「……大崎か?」


「うん。大崎、すごく強かった。あいつに絶対勝ちたい!そう思って練習頑張った。…でも、ある日、大崎が学校に来なくなった。神田が、大崎に嫌がらせをしてたのは、私も知ってた。でも、北野先生にそれを言っても何もしてくれなかった!!それに今度は…。」


水上は、心配そうな顔で私に向かって言った。


「北沢!あんたは、本当にこのままでいいの!?神田に、大崎と同じ目に遭わされて!どうして許せるの!?私は…わたしは、許せないよ…。いやだよ…。」


水上は、そのまま俯いてしまった。私は、足を止めて彼女に言った。


「みんな、散々あいつに振り回されたんだな。」


私がそう言うと、水上は、何も言わずに頷いた。私は続けて言った。


「ただ、ここで仕返しでもしたら。みんなで神田のことを無視したら、邪魔者扱いしたら。いつまでも、状況は変わらないだろうな。もちろん、それを責めれるほど、俺も人間できちゃいない。でも、ここでその不毛な連鎖は止められる。そして、決着をつけてみせる。」


「何でそこまでするの?」


「俺の性格…わかってるだろ?」



「もう…本当にお節介なやつだよ。北沢は。」



水上は、顔を上げ微かに微笑んだ。その直後だった。水上が近くの公園に向かって指をさして言った。


「北沢!あれって。」


その先には、神田の姿があった。彼は、慌てて様子で、公園の中に入っていった。確かこの時間帯は、大崎が………。



        ……まさか!!!


「水上!!神田を追うぞ!!」


私は、水上を連れて、神田を追いかけた。



……いやな予感がする。





いつも、最後まで読んでいただきありがとうございます。

感想がありましたらお待ちしております。ブックマーク、レビュー、評価等、頂けましたら嬉しいです。よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ